戦場へと~ラムと一緒~
夜になりウィリアム達と共にスライムの墓場、いくつかの篝火を用意してる中、
「ラム、あまり動き回るんじゃないぞ?」
「わかってる、らむはまきのことたのまれたんだから」
ラムがここにいるのは、昼間の状態を思ってアダムがラムにお目付けとしてついて行くように頼んだからである。
マキも心配ないと返答したのだが、聞いてもらえず無理やりラムを付けられたのである。
そんなラムもなにかを探すように辺りをキョロキョロと動き回るからマキとしては余計に心配で動きづらくなっている。
「おいマキ。あれは大丈夫なのか?」
「モンスターが出たら俺の近くにいる事はアダムにも言われているし、ああやって動き回っているって事は危険がないってことだろう」
ラムの危機察知はマキよりも鋭く、この森を行進する中で何度も助けられたものだ。
アダムに出会うまでこの森で一人で生きてこれたのも常に周りへの警戒をしていたからであろう。
「まき、なんかわるいのがくらいとこでういている」
「モンスターか?」
「ううん、たぶんわるいれい。からだがほしくてとりつくためにあつまってきてるんだとおもう」
「ラムどこら辺に居るかだいたいの目星利くか?」
「それならだいじょうぶ、あそこのあたりとあそこのあたりだよ」
ラムが指差したほうを注意深く観察すると、闇にまぎれて浮かんでいる澱んだ人魂のようなもの見える。
マキは刀を抜き、刀身に集中する。
「凍星」
いつの間にか使えるようになっていた技に意識を集中させて、刀に霊気を纏わせる。
無事に技が使えた事に安堵した後、刀を構えラムが指差したほうに全力で突進する。その速さに誰も反応できず悪霊のいる手前で刀を振るう、その衝撃で刀に纏われていた霊気が衝撃波となって悪霊をかき消すかのように吹き飛ばす。
「やっぱり、ゲームの時と同じで属性付加のようだな」
なんで使えるのかとか疑問が残るマキではあるけど、技が使える事を知った時は感激して、大河を使ってしまい野営地のテントを一つダメにしてしまったのはまた別の話。
白昼夢を見ていたのか、おぼろげながらも意識を向けると自分がなにかに敗れて、時扉を使った事は思い出せる。だが、前回のようにその時の出来事は思い出せない。
そして……前回のようにマキになる前の……つまり俺が俺であった時の記憶思い出せる範囲で探って見ても、名前を失った時のような、その部分だけ思い出せないと言うものはなかった。
アダムにも、時扉の能力の説明を出してもらったが、
――時扉
試練を達した者のみ開ける時空を渡る扉。
時を開ける時、使用者は代償に自らの記憶を奉げ、過去、未来、別時間を渡れる。代償の支払は時を渡り終えた時となる。
使用者の精神に負荷がかかっている時、使用開始した時間から渡った時間分の時間の記憶をそのまま消費する。
この説明を見てる限り、俺は渡っている時になにかの不安で精神がやられてて、そのせいでなにも思い出せないということなのだろう。
しかし、その時間の中で使えた技は体が覚えていて、記憶を失っても扱えると言うことなのだろう。
俺自身がどのような敗れ方をしたのか、それは思い出せない。もしかしたら、アダムやラムに何かあったのかもしれない。そう思うと前回どんな会話をして、どんな行動をしたのか思い出せない事が歯痒く感じる。
「まき、どうしたの?」
一人黙り込んで悩んでいるとラムが心配そうに心配そうにマキの頬に手を当てて、じっと顔を見つめる。
ひんやりとした感触に考え込んでいた頭が冷えて少しすっきりとする。
「なんでもないよ、ありがとなラム」
「らむはまきをみてるようにいわれたから、これぐらいとうぜんなのだ」
自慢げな顔で笑うラムに元気をもらい、マキは近づいてくるモンスターの気配に対処できるように構える。
「マキ、ラム……そろそろ着始めるぞ。油断するなよ」
弓を構え、遠くの暗闇に矢を放つウィリアムにマキは頷き、その刀を持つ手に力が篭もる。
これから、スライムグールの討伐が始まる。
遅れてしまいすみません。
言い訳はしません。モンハンが楽しかったんです




