予想と違う
篝火をいくつも設置して、明るさを確保された元スライムの集落にマキとウィリアム、そして木人の兵士が10名。
兵士達は各々連携を取ってグールを倒していく用に編成されており、マキとウィリアムは兵士がピンチに陥った時まで各自撃破していく遊撃部隊になっている。
ゲームの時のスライムグールはレベル30だったが、今のこの世界の状態から見て弱体化されているだろうと予想ができる。兵士達が全員レベル10台だったとしてもレイドを組んで挑めば倒せる強さだろう。
ウィリアムはみんなをカバーしながら戦う事を野営地での会議でも告げていた事からも一人でスライムグールを倒せる強さなのだろう。
「お前らは基本スライムグールを相手にしろ。マキもおなじで基本はそっちだ」
「ウィリアム、その言い方だと他にも何か来るような感じに聞こえるのだが?」
「ああ……夜の森で騒ぐんだ。食い物求めて彷徨っている化け物が近寄ってくるだろうよ」
辺りには、篝火に誘われたのか大きな蛾のような虫型のモンスター、ヘビーモスが飛んでおりウィリアムは矢でモンスターの急所を射ぬきモンスターはそのまま落ちて自分の重さで潰れて動かなくなる。
「ああ言うのも寄ってくるから俺は基本そっちの相手、マキもできればそっちも手伝って欲しい」
「それは、グールの相手をするより大変そうだ」
今の森で一番で会いたくないのはゲームの時からプレイヤーキラーと言われているエルダーアルラウネやカーストレント、それとアンデットアサシングールだろう。どれもゲーム時でレベル60を超えておりアサシンに関してはレベル75と対策もなしで戦いたくないモンスターである。
「エルダーアルラウネやカーストレントとか出たらどうするんだ?」
「そんな昔話に出てくる伝説の化け物出てくるわけないだろ」
「えっ?」
ウィリアムの言葉に回りの兵士も同意するように相づちをうつ。
ウィリアムの言葉にマキは驚いた表情を見せて、今まで調べることもしなかったひとつの事が頭を過ぎる。
(今って、俺がゲームしていた時とは時代が違うってことなのか?)
マキがゲームしていた時は、ゲーム上の年代は150年。もし、今の時代がこれよりもずっと後なのだとしたら。
「ウィリアム……き」
「どうやら、動き出したようだな」
ウィリアムの言葉に火の光が届かない闇の中を見てみると、そこにはなにかが蠢いているのが見える。
何かを引きずるような音と共に近づいてくるその姿を見てマキは驚きの声が出そうになる。
昼間見たスライムの遺体は損傷はあった。だが、今見えているそれはその損傷がなにかによって補われて元通りのスライムの形になっている。
しかし、その色は澱んだドブのような色をしておりスライムのコアがあった所からはおぞましい色をした球体らしき物が動きに合わせて蠢いている。
「各自、戦闘態勢! 連携を忘れるな」
『了解!!!』
兵士達はスライムグールがこちらに近づいてくるのを十分に待ち近接の者の攻撃範囲に入ったところで一気に全員でグールを攻撃し始める。全員で袋叩きにしている様は兵士としてはどうなのかと思うところではあるが、命がかかっている事もあるから気にしない事にする。
グールは応戦するかのように兵士の一人に飛びかかろうとするが、そのまま武器で叩き落とされておぞましい球体を貫かれ、しばらく痙攣のような暴れ方をした後に動きを止める。
「あれをグールが全滅するまで続けるわけか」
「そうだ、人間であるお前達には卑怯に見えるかもしれないが、こちらはお前達の言う調練と言うものをしていないのでな、基本は全員で全力攻撃しかできない」
「卑怯とは言わないよ。命だってかかっているんだし、被害はできるだけ出さない勝ち方をするのは当たり前だろ? それよりも……こっちもきたぞ」
腰に差してある刀を抜き、暗い頭上を見つめるとそこから蠢くなにかが近寄ってくる。
姿は見えていないけど、くねくね動きながら近づいてくるそれが蛇である事がわかり、夜に出てくる蛇型のモンスターを思い出す。
「あれは確か、デッドスリープだったか?」
あの蛇に噛まれたら眠りと猛毒のバットステータスを受けてしまい、回復することも出来ずに死んでしまうことからそんな名前がついていた気がする。あれもレベルは低いが40台でここの人達からしたら十分な脅威になる存在だ。
「デッドスリープ? そんなモンスターとうの昔に絶滅危惧種扱いで魔物使いが飼育用に飼っている数匹しかいないぞ」
「えっ?」
よくよく見ると出てきたのは、ビックファングと言うレベル18の蛇型のモンスターでただ口が大きく獲物を噛み砕くことに発達した顎を持っているだけの無毒なモンスターだった。
マキは降りてきたビックファングを一刀の元に真っ二つにして、そのやるせなさで唖然としている。
この後も、出てくるモンスターはマキの予想よりも壮大に下方修正された物しか出て来なくて別の意味で盛大なため息が出てしまうマキであった。
モンスター詳細
ヘビーモス
蛾のモンスター。身体1m羽含めて2.5mの大きな蛾。
りんぷんには麻痺の効能があり、動けなくなった冒険者にとまる
何よりも脅威はその重さである見た目に反して重さは1tあり、とまられた冒険者はその重さに潰れてしまうほどである。レベルは13
エルダーアルラウネ
かつて世界樹の森で長年生き続けて育ったアルラウネはそれまで受けてきた阻害による恨みから森にいる生き物を襲い始める。戦闘において強力な蔦での攻撃は鋼をも貫き、魔術においても秀でており上級魔術によって立ち向かった冒険者を亡き者にしている。
エルダーアルラウネが討伐されるまでに多くの被害が出ており一層アルラウネへの迫害が強まった背景の一端を担っている。レベルは68
カーストレント
毎日のように呪詛の念を送られ続けた木が突然変異でなった存在。
ありとあらゆる呪いを使うことが出来、気がついたら呪われて命を落とす冒険者が後を立たなかった。
この木が切り倒されるまでに「忘れ呪道具事件」と呼ばれるクエストが存在していた事もゲームWikiでは語り草に告げられている。レベルは60
アンデットアサシングール
屍を殺し続けた暗殺者の屍
自らを殺すことが出来ずに葬ってくれる者をもとめて冒険者に襲いかかるがあまりの強さに誰も敵わずに葬ってしまう。
ゲームで彼が倒すクエスト「屍アサシン事件」は最高難易度に指定されており彼が討伐されるまでクエスト期間の夜の外出は禁止されていた。レベルは75(条件によっては90)
スライムグール
スライムの屍。コアの変わりにあるおぞましい球体は取り付いた霊の穢れである。
穢れが強いものだと更に上の存在となるが本編では出てこなかった。レベルはゲームの時とは違って19
デットスリープ
強力な睡眠作用のある毒と神経毒を持つ蛇
この蛇に噛まれるとそのまま死んだように眠ってしまい神経毒の苦しみもなく穏やかに逝ける。
今は魔物使いが安楽死用に飼っているもの意外の飼育は禁止されており、見つかったら極刑に処される。
レベルは43だったが飼育されているのはレベリングされてなくて現段階で5まで落ちている。
ビックファング
大きな口を持つ蛇
毒はないが鋭い牙はあり、相手を噛み砕きながら咀嚼する
食べ物は良く噛んで食べるためか消化が早いのでいつでも獲物を求めて彷徨っている。
レベルは18




