自己紹介しよう
「はじめまして、僕はアダムと言います。こっちの子はラムって言うの。あなたの名前は?」
こちらに手を差し伸ばす新緑のような色の髪の少女アダムのはにかんだ笑顔に危険はないと判断してマキはその手を握り立ち上がる。
「えっと……俺は津留崎正樹。舞塚高校の学生だ」
「つるさきまさきまいつかこうこう? なんだそれ、ずいぶんながいなまえだな」
「津留崎正樹が名前だよ」
「ならそういえ!」
ラムは頬を膨らませた様にスライムボディの全身を膨れ上がり、その隣でアダムは驚いた表情でマキのことを凝視している。
「アダムさん? どうかなさいましたか」
「えっ!? ううん、なんでもないよ。正樹君か~良い名前だね~」
戸惑った表情をしているアダムに少し疑問を抱く正樹だったが気のせいだろうと改めて二人を観察する。
少女であるアダムは見ため的に年は正樹とほとんど変わらない容姿で、華奢な体つきに一人称が僕と言うこともあり最初は年下の男の子かとも思っていたのだが、微かに見える女性らしい凹凸に正樹は慌ててそこから視線を逸らし風景のほうを見る。
アダムが着ている服は服と呼べないような大きな葉を細い蔓で服のように仕立ててあるだけで覗き込めばそのまま隠してある部分が見えてしまうような危なさがある。
(健康的な男子高校生には目の毒すぎる)
「まさき、あだむによくじょうしたのか? こどもつくるのか?」
「ちょ、ラム!」
マキの不信の行動に警告紛いに発せられた一言にアダムは慌てふためきながらラムの口を塞ぐ。
突然の発言に振り向いた正樹であったが咄嗟に動いたせいでアダムの服が少しずれており、その姿を見た瞬間、脊髄反射で首を反対側に向ける。
魔物であるスライムには自然の摂理としての繁殖的な問い掛けとそのためにアダムを襲う的なものであっても日本と言う人間的社会で過ごしていた正樹にとってはとんでもない爆弾発言に顔が熱くなっていくが自覚できた。
アダムの方もラムの言葉に顔を赤くしながらラムの口を手で塞ぎ続ける。
「ごめんなさいね!? この子まだそう言うの疎いから! 後でちゃんと言い聞かせるから!!!」
「そうだよね! 自然的には種の存続は必要不可欠だもんね!」
二人してラムの一言に混乱して言う必要のないことを口走ってしまっている状態になってしまう。
二人が落ち着きを取り戻すまで、場を濁すような笑いが続き、その間もラムはそんな二人にハテナを浮かべたままながめていた。