スライムの墓場
ウィリアムに案内されて森の拓けた地形にに辿り着く。
マキはなにか飛び出してこないかと警戒で刀に手を添え、アダムはスライム姿のラムを抱っこしてマキの後ろをついていく。
ラムは緊張した雰囲気で辺りを見渡してどこか落ち着かない様子だ。
辺りを見渡して見ると所々になにかと争った痕跡が残っており、まだ埋葬が終わっていないスライムの残骸をかき集めて埋葬する兵士のような木人があちらこちらで姿が見える。
兵士達はウィリアムが通ると一応に敬礼をしてまた作業に戻る。
「ずいぶんと、多くの兵士がここにいるな?」
「当然だ。スライムとはいえ亡骸をあのまましてたら邪霊に憑かれかねないからな。土の精霊の加護をもって安らかに自然に還す必要がある」
スライムを埋めた所に新鮮な葉がついた枝で作られた墓標が奥に進めば進むほどどんどん増えていく。それらを横目に眺めながら前を歩くウィリアムについていく。
「あの葉が全て枯れ落ちた時、その下で眠る者は自然に還ったと言う事だ。もっとも……全ての亡骸にはなにかに喰われた痕跡があってほとんど残ってないのだかな」
「喰われた?」
「ああ……ここにいたスライムはなにかに喰われたかのように小さくなっていてな、スライムを喰う魔物がいるのかとそちらも探索中だ」
ウィリアムの話を聞いてアダムは抱っこしているラムを強く抱き、辺りを見渡す。自らの能力で蘇らせる事ができたらとはがゆいのだろう。
そんなアダムと違ってラムは亡骸が転がっているのを見るとそれを凝視して、しばらく見た後落胆した雰囲気で、またきょろきょろと探しものを再開する。
「どうしたんだラム?」
「……なんでもない」
ラムは悲しげな雰囲気でそう告げてそっぽ向いてしまう。
きっとここがラムの産まれたところなんだろう。アダムもラムの雰囲気を察したのか、ラムを撫でて慰めようとする。
「べつにかなしいわけじゃないんだ。らむはおいだされたからこのさとにあいしゅうをかんじたりしない。でも……」
「ラム、ここにはラムの家族がいたんだね」
「うん……おとうさんはらむがうまれたときになのりでなかったからわかんないけど、おかあさんはいつもらむにやさしかった。いつもラムをなにもわるくないんだよってなでてくれたんだ」
きっとラムが探しているのはその母親なんだろう。まだ生きてるかもしれないと希望を抱いて探している。
だけどこの荒れ具合では生存者がいるとは思えずアダムはなにも言えずにいる。
「ほんとに生存者はいなかったのか?」
「はっきり言ってしまうとわからないんだ。スライムの亡骸の数も少ないし、それが喰われて減ったのかどこかに逃げたのかは俺達も今調べているところなんだ」
「それじゃ、他のスライムが生きてる可能性があるかもしれないってことですか?」
「ああ、今里ではスライムの生き残りを捜索中だ。もしかしたら生き残りが見つかっているかもな」
「ウィリアム、俺達を里につれていってはくれないか?」
ウィリアムはひとしきり悩んだ後、マキ達の要望に頷き、
「里では、まだ自由に行動させることはできないがそれでも良いなら案内する」




