騒がしい朝
「あだむ~、まき~、あさだよ~」
まだ肌寒い朝、朝日の届かない森の中ラムの呼び声に目を覚まし布団代わりに羽織っていた外套が起き上がった事によりすべり落ちる。隣には気持ちよさそうに寝息をたてながら、丸まるように眠るアダムの姿があり、出発にはまだ早い事もありそのまま起こさずに眠らせておく事にした。
「相変わらず早いなラム」
「とうぜんだ、けものやまものがえさをもとめておきだすからあさははやいのだ。それにいくらおまえがつよくてもねおきをおそわれたらひとたまりもないだろ?」
ラムはスライムの姿でそっぽを向き、まだ起きていないアダムの隣に近づきその寝顔を見ながら生やした触手でアダムの頭を撫でる。くすぐったそうに寝返りをうつアダムの姿にプルプル震えるラムは笑っているのかと後ろから観察しながら撫でてみようと手を伸ばす。
「なにをしている?」
マキが撫でようとしたのを察知して、生やした触手でマキの手を払いのけアダムを挟んで反対側に逃げる。
マキがラムを撫でる事ができたのは寝てる時しかなく、起きている時は警戒されてしまい、いまだにマキに懐かないでいる。
「まったくゆだんもすきもあったもんじゃない」
「まだ俺のことが怖いか?」
「まきからはなにかつよいこわさがあって……どうしてもけいかいしちゃうの」
「そっか……」
マキとラムのレベル差を本能的に察知してしまって警戒してしまうのだろう。ラムが慣れてくれるまではこのままなのかなって半分諦めかけている。
「そんなことよりきょうのごはんはなに~?」
「朝は昨日の残り物だけどお昼には木の精の里に着きたいな……ってどうして視線をそらす?」
ラムが視線をそらした瞬間嫌な予感がして、昨日作っておいたスープの入った鍋の蓋を取る。そこには昨日作っておいたスープ入っておらず空っぽになっている。マキはおそるおそる後ろを振り向くとラムはアダムの眠っているお布団代わりの外套にもぐりこみ何事もなかったかのように眠りにつこうとする。
「おいコラ待て。お前この鍋の中身はどうした?」
「……ごちそうさまでした」
そのまま眠りにつこうとアダムの胸元に寄るとアダムはラムを抱き枕代わりに抱きしめ、マキが手出しできなようにする。
そんな二人の姿を見て、マキは盛大なため息を吐いて、ずんずんと近づいて外套をめくり取りラムをアダムから引き剥がそうとする。
「お前、このまま寝れると思うなよ!!! さっさと食料探しに行くぞ!?」
「やー!!! らむはあだむとゆっくりするの!!!」
「誰が許すかそんな事!!!」
アダムの胸元に引っ付くラムを引き剥がそうとしていて、アダムの服が少しめくれ肌が露出していく。
肌寒さと騒がしさからアダムの目がゆっくりと開かれていく中、アダムに馬乗りになって、ラム(胸元)に手を伸ばしている状態のマキと目が合う。アダムは唖然とした状態でマキを見つめ、自分の胸元が肌寒いことを察して、今起きている事を勘違いの方向で理解する。
「ま……マキ……?」
「落ち着けアダム……。お前は今盛大に勘違いをしている。とりあえずちょっと話を……」
マキの言葉が終わる前に、悲鳴と共に放たれた平手を顔に受けてしまい、クリティカルだったせいかマキは吹っ飛ばされる。アダムの服を持ったラムを持ったまま……。
ラムもマキと一緒に吹き飛び、ラムが掴んでいたアダムの服も一緒に吹き飛ぶ。アダムの二度目の悲鳴と共にマキはクリティカルの平手を数回受け続けた。
――アダムのレベルが上がった。




