木の精の里はまだ遠い
森を探索する準備に数日費やし、マキ達は木の精の住む区域、森の更なる奥へと歩いていく。
歩いている所は道などなく、獣や森の魔族が通ったであろう獣道で勾配も激しく慣れない足取りで進んでいく。マキもアダムも慣れない道に悪戦苦闘してる中、ラムはスライムの姿でゆうゆうとした足取りで進んでいき、マキ達がはぐれてないかを時折確認している。
「まきもあだむもおそい」
「こんな道とも呼べないところ歩かされているんだ、しかたないだろ。アダムは大丈夫か?」
「う、うん……ごめんね、僕の体力が少ないせいで」
ここまでの道筋でアダムでは通れない道や切り立った崖なども存在しており、そのたびに遠回りになってしまい、ラムから聞いてた情報から割り出した到着予定を大きくずれてしまっている。
「アダム……やっぱり俺の背に乗るか? その方が早いだろうが」
「無理! マキに乗ったら早いけど、あんな人間ジェットコースターもう乗りたくない!」
最初、アダムとラムを背に乗せて運ぼうと思ったのだが、アダム達とマキの速さの差がありすぎて、ラムは振り落とされそうになりアダムはその速さに酔ってしまったのである。その介抱でマキに乗って走った距離の分の時間も浪費してしまった。
「それじゃがんばらなくちゃな、もし体力の限界ならおぶって歩いてやるから」
「うん、ありがとう」
しかし、このままでは里に着く前に夜になってしまう事をマキは懸念している。野宿の準備もしておらず、食料も日帰りを予定していたので、そこまでもってきていない。あればある分ラムが食べてしまうので食料の持ち運びに制限したのがあだになってしまった。
「とりあえず、今日は野宿かな? このままだと、ラムの空腹を満足させる分がない」
「らむはそんなにたべないよ」
「この前、捕獲したビックピックを一人で食べた奴が何言っている? あれ、結構でかかったから数日持つ持つと思っていたんだぞ」
食料の為に、捕らえた全長5mの猪を食べられるように加工してもらおうとラムに手伝ってもらっていたところ、目を離した隙に全部たべられてしまったのだ。しかも、ラムは悪びれず満足の一言で済ましやがった。
「あれはおいしかった。まきまたつかまえて」
「あ~……また居たらな」
「ふふっ……そうやってしてると親子みたいですね?」
アダムの言葉にマキは納得の声を出す。さながら駄々をこねる子供にめんどくさそうに約束する父親のような感じなのだろう。
「それなら、アダムはラムのお母さんだな」
「いえ、そこはお姉さんで、僕にとってラムは世話の焼ける妹ですから」
「むにゅ?」
アダムに撫でられ気持ちよさそうにしているラムを見てるマキは、やっぱり親子にしか見えないと思ったが口にしないほうがいいだろうと思って森の中で食べられそうな物を探しに歩き出そうとする。
「マキ、食料探すのでしたら手伝います」
「大丈夫だ。お前は薪を集めて火をおこしておいてくれ」
今いるところはアーリア側のような弱い存在だけではなく、そこそこ強いものも存在しておりアダム達を連れて歩いていたら今のマキには護れるかわからない。
先ほどの周りでは、ラムも警戒していなかったことからも危険な存在はいない。ならば、あそこでじっとしてもらったほうが安全だという判断である。
「ラムがしびれを切らす前にさっさとなんか捕まえないとな」




