ラントの依頼、マキ達のその後
「すまなかったね、昨日はお疲れさま」
「あの、大丈夫ですか?」
「あんなのいつものことだから平気だよ」
そう言いながら笑うラントにアダムは心配そうに回復するかどうか悩んでいるみたいだけどイサミに問題ないですと言いくるめられて諦めてマキの隣に座る。
「ところでなんだけど、君達はこの後どうするか決めているのかい?」
「とりあえず、昨日買えなかった服の調達と大森林で住める家の依頼をして、出来るだけ早く元いた場所に戻るつもりだ」
「この街に住むという手もあるよ? 今回の件で君達には褒賞もあるだろうし」
「そうだな……それでもいいのかも。アダム達は……」
「それじゃだめだ!!!」
マキ達の話にラムが声を荒げて制止させる。ラムの変化に驚くマキたちであったがアダムはラムを落ち着かせるように撫でて意を決したようにマキ達を見る。
「ここで生活できるなら僕もしたいです。でも、僕にはそれができないんです」
彼女が手をかざすと目の前に文章が浮き出てくる。
――――世界樹の加護
世界樹の恩恵をその身に授かる存在
世界樹が存在する限りその身のマナは尽きる事はない
世界樹から一定時間離れるとその身を絶望で焼き焦がされる
「……なんで黙っていた?」
「ごめんなさい。嬉しかったんです、街に来られたことや誰かに必要とされたことが」
「……そっか」
あの森でずっと、誰とも関わらず過ごしていた少女にはこの街は何もかも新鮮でそれゆえに心配させたくないと言えなかったのだろう。
「ラントすまない、俺達はやっぱりあの森で生活出来るようにしようと思う」
「わかりました。それではこちらからも皆さんの生活に援助という形で支援したいと思います。その代わりと言ってはなんですが」
ラントはマキに一枚の洋紙を渡してくる。その文章がこの世界の言葉であったのだが身体の方が覚えていたのだろう問題なく読める。
開拓者求む
世界樹大森林に村を興す冒険者を募集しております。
アーリアとユグラドシェルを繋ぐ歴史の体現者になりませんか?
報酬はその村の代表者としての権利。ギルドからの支援も行わせていただきます。
洋紙には依頼書となっており、しかし長年放置されていたのだろう、洋紙事態ボロボロになっていて持っているところから形が崩れている。
「君達の住む場所に村なんて造りませんか? こちらとしては支援も惜しみませんので、好きに造って頂いて構いません」
「そうは言ってもだな……ん?」
マキは昔の部室で世界樹の乙女の成功報酬について思い出した。確か成功の暁にはそこには、依頼達成者用の村が登場するようになっていた事を。
もしかしたらこの依頼もまたマキがこの世界に来た事と関係あるのかもしれない。
「その村ってどんな奴でも受け入れていいのか? 例えば魔族とかでも?」
「人間に害を及ぼさないものなら問題ないよ」
「それならラムも住めるし、あの森に住んでる理知的な魔族も住めるかな」
昔やっていたクエストには多くの魔物も一緒に住んでおり、その中にはスライムやオーク、樹の精なども一緒に生活していた。
この先マキが見てきたあのクエストと同じように進んで行くとしたら、人だけが暮らす街ではいけない。もしかしたらの予防線に魔物も一緒に住めるようにしなければ。
「それじゃ決まったことだし、職人とかの依頼はラントたちに任せて良いか?」
「それは構わないが、マキ達はその間何を?」
「まずは、あの森の先住種族に挨拶と森への村の開拓の許可をもらいに行かないといけないかな?」
「そんなの事後承諾でいいのではないか?」
「馬鹿か貴様は。そんなことしてみろ、樹の精の軍勢とアーリアは全面戦争になりかねないぞ。こっちの小僧達の方がそのほうに理解しているらしいな」
マキの覚えているWikiの中にあの森のことも載っており、設定ではあの森は全て樹の精の管理する領域であり人間はあの森を通るのに樹の精の女王に通行することを大昔に許可してもらった事があの森の大まかな話だったはず。つまり人の住む村を作るならあの森の主である女王に出会わなければ行けないだろう。
マキ達が樹の精の説得をする事となりラント達との今後の開拓の話をまとめあげ、マキ達はギルドを後にするのであった。
「フレデリック……」
「わかってるよ、俺も準備できたらあいつらを追う。おれ自身あいつらが気にいったしな」
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