目覚めたら知らない場所
深い闇の中……一筋の光が見える。
その光は弱くだけど、沈んでいた意識を引っ張り上げてくれるようにどんどん強くなっていく。
強くなる光に恐怖を感じることもなくそれどころかその光に触れたいと言う感覚が沸々と沸いてくる。
感覚に任せ手を伸ばす、光は一層強くなり闇を祓い、意識が浮上していく。
「んっ……ここは?」
目を明けるとそこは見知らぬ森の木漏れ日の中、草の絨毯に横になっていた。
少し目を動かしてあたりを見渡すも他に何もないただの森の葉と枝に覆われた天上しか見えず、体を起こして見ることにした。
「よいしょ……うおっ!?」
いつも体を起こす感覚で起き上がろうとしたら勢いあまって、顔から地面に突っ伏すしてしまうところだった。
どうやら、体がいつもより軽く感じられ、軽い動作だけでも余力が出てしまうらしい。
自分の体をまじまじと見つめると、学校の制服ではなく少し和風ファンタジーのゲームキャラクターの装備みたいなのを着こなしている事に気がつく。腰には刀も差してあり、実際に触れて見ると感触に違和感なくこれが自分の物なのだと自覚できた。
「なんで俺、こんな格好しているんだ? それにここは、どこなんだ?」
今の状況を確認すべく、あたりを見渡していく。木々の奥には木漏れ日が射し込み暗いと言う印象はなく、また危険な気配も感じられず危険な状態に置かれていないことがわかり、少しばかり安堵する。寝ていた場所から少し離れた所には少し大きめな空間ができており、そこだけが葉の屋根がなく空を見上げることができる。そこから見える空にはお日様が真上に見えることから正午辺りであることがわかる。
これからどうするか悩んでいると、空腹にお腹が鳴る。
「……おなか空いたな。どっかに食べられる物ないかな?」
辺りを見渡して見ると、少し離れた所に赤い実のなってる木があることに気がつく。形からしてリンゴの木に見えるが同じ物なのかわからずに少し躊躇ってしまう。そうしてる間にも、おなかは早く食べ物よこせと言わんばかりに自己主張をしている。
空腹に負けて恐る恐るその木に近づいていき、実をひとつ木からもいでみる。実を手に取って見ると、みずみずしそうな実で思わず喉が鳴ってしまう。
「自然になってる実だし……一個くらい良いよな?」
取った実を服でごしごしと拭いて、一口齧って見る。甘酸っぱい甘みに空腹にやられた意識が一口二口と実を口に運んばせていく。
実を食べ終わった後、満腹には程遠いが食事ができたと言う幸福感に一息つく。見知らぬ所にやってきてしまった不安があったがこうやって食べ物にありつけることができて、少しばかりの満足感に満たされる。
この場所なら食料にも困らないとマキは思い、改めて回りを見渡すと危険がないと判断できた。
「しばらくはここを活動拠点にす……」
今まで気付かなかったこちらを見つめる視線に気付き、マキは身を強張らせ視線の感じる茂みのほうに意識を向ける。自分がなぜ気配を感じされるのかもわからないが、その気配からは殺意はなく、ただ好奇心のほうが強く感じされた。片方は完全に敵意であるが。
(なんだよいきなり……俺なにもしてねーぞ)
隠れているつもりなのかわからないが、茂みからは物音がしており時折ヒソヒソと話し声も聞こえてくる。
「あいつ……ここにいつくつもりだ。やっぱりたおす!」
「ラム少し落ち着いて……あの人からは危険な感じはしないよ。それに正面から挑んでもきっと返り討ちになっちゃうよ」
どうやらマキについて揉めているらしく実力的に無理だと思っている少女の声が、もう一方の無機質な声(スピーカーから出てる様な音)を宥めている状態らしい。マキとしても今の何もわかっていない状況で誰彼構わず襲い掛かるサイコパスではないので、少女たちに声を掛けるべく少女たちに近づく為に歩き出そうとした時。
「っ!!! ちかづくな!!!」
茂みから声とともに液体の触手が飛んでくる。
咄嗟に飛んできた触手の動きにマキは慌てて飛び退くように転がり避ける。敵意が殺意に変わり、茂みから出てきたものは粘膜状の液体みたいな材質の人型の存在だった。言うなればRPGの最初に出てくるスライムを無理矢理人にしたものである。
「おまえなにものだ!? ここはあだむとらむのなわばりだぞ!!?」
スライムは警戒心むきだしにしてこちらに刃状態の触手を構えている。いきなり出てきたスライムに対応できずに地面を後退ろうとするが、地面に足がすべりその場でじたばたすることしかできない。
(なんだよこれ!? どうしてこんなのがここにいるんだ!!?)
現実にいるはずのない存在に恐怖しかなく、このまま殺されるのかと思うと体が竦んで動けなくなってしまう。
「ラム待って、いきなり襲い掛かっちゃだめだよ!!!」
茂みからもう一人の少女が出てきて、スライムとマキの間に割ってはいる。スライムは少女の姿に触手をしまうが警戒心を解かずマキを睨みつけている。
「あだむ、こいついまならやれる」
「やめなさい、あの人も困っているでしょうが」
少女はスライムを撫でるとされるがまま目を細め少女に寄り添うようにしている。若干形成していた体が崩れスライムに頭が生えているようになってしまっている。




