争い去りて~アーリアの朝~
襲撃から一夜明けて、アーリアで起きた騒動も収まり始めている。ラントやイサミは事後処理で街に潜伏している賊がいないかの捜索を行い、フレデリックは逃げていった賊を追撃すべく数人の部下を連れて賊の集合場所に飛び出していった。
マキ達は初めての人との戦闘に疲れてその日は宿にて、すぐに眠り込んでしまう。宿の支配人が昨夜の礼にと、今朝の朝食はすごい豪華なものになっている。
朝食をたのしんでいると、イサミがこちらに向かって歩いてくるのが見えアダムが手を振って向かいいれる。
「おはようございます、マキ様」
「イサミさん、お疲れさまです。お仕事、終わりました?」
「はい、先ほど賊が逃走できる範囲の家屋は全て調べ終わり問題ないと判断されました。ラント様も先ほど仮眠を取るべくギルドにお帰りになられました」
姿勢を崩さず話すイサミに、この人は疲れてないのだろうかと疑問を抱いたがイサミ本人は素知らぬ顔で平然としていた。
「それでいさみはなにしにきたんだ?」
「そうでした。マキ様達にラント様がお礼をしたいととのことで、恐縮ですがご足労ねがいませんでしょうか?」
「それについては問題ないぞ、こっちもどうなったのか知っておきたいと思っていたし」
イサミはマキの言葉を受けて90度にお辞儀をして、マキたちが朝食を食べ終わるのを姿勢を正して待っている。
「あの、席空いてますし座ります?」
「ご心配なく、後12時間の活動が可能ですので」
結局、食べ終わるまでその姿勢で待たれたこともあって、ラム以外急いで食べるのであった。
――――
ギルドに到着すると、フレデリックがロビーの長椅子で眠り込んでるのが見える。来ている鎧には所々血がついており、帰ってきてからすぐさま眠りについた感じらしい。
「フレデリック様、こんなとこで寝てますと他の冒険者の迷惑で起きて下さい」
イサミに揺すられるが反応がなく、素のまま器用にその場で寝返りをうつ。イサミはしばらくをそれを観察して、おもむろに手をフレデリックにかざす。
「電導制御解除……『スタンボルト』」
「びゃあああああああ!!!?」
イサミの手のひらが警棒のような形に変わり、それでフレデリックに触れた瞬間電撃にうたれてかのように感電する。しばらくして、電撃を止めるとフレデリックは長椅子から転げ落ち、少し痺れでピクピクしている。
「嬢ちゃん、その起こし方はやめろって言っただろうが……」
「あなた様には容赦をするなとラント様からのご命令ですので」
しばらくフレデリックは不機嫌そうにイサミを見つめているが長いため息をついた後立ち上がり、マキたちがいる事に気がつく。
「おまえさん達か、昨日はお疲れさんだったな。アダムの嬢ちゃんも部下達が感謝してたぞ」
「いえ、僕としてもお役に立てたなら嬉しい限りです」
「そっかそっか。それにマキも一人で強い奴とやりあったらしいじゃねぇかたいしたもんだよ」
「それでも、賊の頭には逃げられちまったんだがな」
「あの実力者なら俺もラントも手こずるだろうしそんな謙遜するな」
フレデリックは笑いながらマキの背中をばんばんと叩き喜びを表している。叩かれてるマキは上機嫌に喜んでいるフレデリックに仕方ないなと思いながら叩かれてるのを耐える。
「それで、あの後成果はあったか?」
「それについてはラントも交えて話すつもりだ。おまえさん達もくるだろ?」
フレデリックの言葉にマキたちも頷き、イサミの案内のよって応接室に向かう。
中に入ると誰もおらず、しばらく待つように伝えたイサミが出て行った後、しばらくしてギルドの上の階からラントの悲鳴のような声がギルド全体に響き渡ったのであった。




