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クロスゲート~このきに願いを~  作者: NAo
第1章 世界樹の乙女
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手加減を知らない男

 フレデリックに連れられてきたのは、兵士達が訓練に使うような鍛錬場で壁にかけられている模造剣をマキに渡してくる。


「振ってみろ」


 武器の系統的にソードのような形で、振るってみると風を切る音が聞こえる。しかし、素振りは完全に野球のフルスイングで武器を使っている振り方ではない大振りになっている。


「そんな振り方では、魔物には当たっても人には当たらない。特にお前が持っている武器だともっと最小な動きで切ることが出来るし何より不恰好すぎる」

「そんな事言われても、そもそもこんな武器を持ったこと事態ないし、竹刀のように軽くないんだよ」


 学校に行っていた時に、剣道の授業があったが真面目に取り組まなかったせいかあの時教えられて構え方なんかも覚えだせない。マキはもう一度今度はゲームで見るような振り方で振ってみるが、いまいち剣の軌道が少しぶれている。

 それを見て、フレデリックは別の小さめな武器を選んで持ってくる。


「いまのお前さんには、あの武器よりこっちの方が良いのかもしれないな」


 フレデリックに渡された物は刀に比べるとかなり小さく、刃が半分もないダガーで、先ほどの剣に比べると振りやすくなる。


「まずお前は、刃物に慣れるとこからだ。それで、俺に斬りかかって来い」

「ちょっと待て、そんなことしたらお前が死ぬだろ?」

「なめるなよ、こちとら頑健持ちの体力特化だ、お前の今の攻撃力では傷がついても切り傷くらいだ」


 フレデリックは自分の武器である大槌を持ってマキと対峙する。躊躇うマキに槌での大振りの一撃が放たれ、大慌てで攻撃を避ける。


「お前ふざけんな! 当たったらどうするんだ!?」

「これぐらいで死なない事はさきほどステータスを見て確認済みだ。さあ来いマキよ、お前の決意はその程度か?」


 マキは手にある得物を持って、フレデリックに接近する。速さもあって懐に入る事が出来るがフレデリックの大槌の小突きを受け、マキは後方に吹き飛ぶ。

 咳き込みながらも立ち上がろうと視線を上げると、振り下ろすような構えのまま落ちてくる大槌に慌てて回避を取る。元いた地点に振り下ろされた大槌の衝撃はこちらまで伝わってきて、その一撃の強さにマキは当たったらやばいと直感して、再び距離をとる。


「逃げてばかりでは、攻撃は当たらないぞ! もっと己が何が出来るかを把握してそれにあった動きをして見せよ!」


 大槌を持ち上げ、こちらに走ってくる相手にマキは意識を集中する。武器に囚われてばかりではあの歴戦の戦士には勝てない。マキは自分が瞬時に詰められる距離を保ちながら、フレデリックをどう攻略するかを考える。


(むやみに突っ込んでも、武器を振る前にカウンターを受けてしまう。もっと早く……もっと手軽に動いて攻撃するとしたら……)


 マキは意を決したのか、フレデリックの周りを速さに任せて動きまわる。

 何か仕掛けてくるとフレデリックは身構えどこからでも攻撃に対処できるようにマキの動きを警戒する。


「ただ走り回るだけなら、素人でも出来るぞ。さっさと仕掛けて来い!」

「なら……そうさせてもらう!!!」


 マキの突進がフレデリックに迫っていく。そのスピードは撃ち放たれた弾丸の如く速く、並みの実力者では対応できないだろう。しかし、目の前にいるのは並ではない実力者のフレデリックであり、マキの突進に合わせて大槌で防御の体制をみせる。

 意識を集中したマキには世界の動きがゆっくりと見えるようになりフレデリックの動きに合わせてに大槌にダガーを引っ掛けるように掛け、そのスピードに乗って遠心力をきかせ相手の背後にまわる。そのまま遠心力に振り落とされるように頭上に放り出され、武器の持たない手で拳を作り落下の威力と共にフレデリックを殴る。


「グゥッ!?」

「あ、あたった……!?」


 受けたダメージが大きかったのかフレデリックはその場に膝をつき、殴られた箇所を確認する。

 マキとしてもフレデリックの様態が気になりいそいそと近づいて行く。


「大丈夫かおっさん!?」

「誰がおっさんだ!」


 マキの心配をよそに平気そうな態度で立ち上がり怒鳴り散らす。

 フレデリックがマキの事を観察して一頻り頷いた後、マキの頭をくしゃくしゃと撫でて笑いだす。


「お前、素人なりに動けるじゃねぇか。今の感覚を良く覚えておけ、それが戦いの時お前さんの武器になる」

「……わかった。訓練してくれてありがとな」

「何言ってる?」


 フレデリックは自分の懐から瓶をを取り出して中身を一気に呷りつける。

 飲み干した後、一息つくと自分の大槌を持ち上げて構える。マキはフレデリックの行動に理解できずうろたえている中、当の本人は大槌をこちらに向け盛大に笑う。


「訓練はまだまだこれからだ、短時間で貴様をたたき上げてやるから感謝しろ?」

「ちょっと待て……俺さっきのでちょっと疲れたんだが?」

「心配するな、気のせいだ」

「なんで人の疲れをお前が答えてんだ……って馬鹿!!? 大槌振り回すな!!!」


 愉快に笑うフレデリックと必死らこいて避けるマキの戦いはアダム達が入ってくるまで続いた。

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