一人と一匹と一プレイヤーの出会い
春の陽気な陽を浴びた風がそよそよと吹く森の中。大きな木の根がある広場にも心地よい風が流れてくる。
木々の葉揺れの音が心地よく、和風の装束を着たコバルトブルーの髪の少年がひとつの木の下でぐっすり熟睡してしまっている。
危険な存在の気配も感じられない森の中、野生の動物も所々で穏やかな状態でその身を休ませたり、生えてる草を食べていたりしている。
そんな中、新緑のような綺麗な髪を結わえている葉でできた衣装を纏う少女と綺麗な水色一色の丸っこい形をしたスライムが興味深そうに眠っている少年を眺めている。少女はおっかなびっくり少年に触れてみようとすると少年が身動ぎをして驚いて伸ばしていた手を引っ込める。
「あだむ?これなに?」
スライムは興味深そうに少年の体を突いて遊んでいる。
スライムが突くと少年はくすぐったそうな声を出すが起きる気配も無く熟睡している。
時折少年は少しの反応を示すが以前心地よさそうに眠り込んでいる。スライムの行動を止めようとアダムと呼ばれた少女がスライムの突いてる手に触れる。
「ちょっとまってね……人間みたいだね。名前はマキ・シルバーウッド、レベルは……83!? ちょっとこの人めっちゃ強いよ!? ラム、ここは逃げよう!?」
少女はラムと呼んだスライムを引っ張って離れようと触手のような形の部分を掴もうとするがアダムの手からするりとスライムは滑ってしまう。
「にげなくてへいき、このままいきのねとめる」
「だめ~!!! そんな物騒な事しないの!!!」
触手が鋭利な槍のような形に変わりマキの喉元に狙いを定める。そんなラムの行動にアダムは驚いて触手を退かそうと触手を掴む。しかし、触手はヌルヌルとアダムの手を逃れ、体制を崩したアダムの肘がマキの腹部に吸い込まれるように接近し、その腹部を力強く強打する。
「ぐふぅ!?」
「あ……」
腹部を強打された衝撃で頭が上がってしまい喉元に構えられてたラムの鋭利に尖った触手に突き刺さる。
マキの首元からは血が溢れ、マキはそのまま苦悶に満ちた表情で倒れ、力尽きたように体が脱力してピクピクとした動きしかしなくなる。
―――アダムのレベルが5上がった。
―――ラムのレベルが8上がった。
そんな知らせにラムはのんびりした口調で喜び、アダムは自分とラムが仕出かしたことに顔面蒼白になっている。
あわあわ言っているアダムを見つめながらラムはピッと指のような部分を作り出し、
「あだむがころした~」
「えぇ!? これ僕のせい!? 僕のせいなの!!? 最初の構えてたのはラムだったよ!?」
アダムの糾弾にラムは素知らぬ表情でマキの喉元の触手を引き抜く。引き抜いた瞬間声にならない音と共に空けられた喉元から血がドバドバ溢れだし、マキの最後が刻一刻と迫っていく。
「って、こんな問答してる場合じゃなかった!!! “癒しの光……我が神に祈りをささげる。祈りをもって我がもとに集いてかの者を癒せ”〈エンシェントキュア〉」
アダムのまわりに集まった光はマキの怪我に収束していき、怪我などなかったかのようにきれいに治っていく。苦痛に歪んだ表情は消え、安らかな顔に戻る。
光が全てマキの体に消えた後、アダムは小さく息を吐く。
「これで大丈夫……」
マキは苦しむような様子も無く、安らかな息を立てて気絶している。そんな少年にアダムはなぜこんな所にと不思議そうに首を傾げながら前髪を梳いて顔を眺める。
「この人、どこから来たのかな?」