相部屋はやっぱりダメだろ?
食事を終え、ラントに頼んでこの宿の手配をしてもらう。
部屋の数についてマキだけ別の部屋にしようとしたらアダムに猛反対されてしまい、結局一つの部屋で一晩過ごす事になってしまう。
居心地が悪いマキは部屋に備え付けられている椅子に座ってふてくされている。
部屋の扉が音を立て開き、先に湯気が出てくる。その後に部屋を使っていた人物のアダムがラムを連れて戻ってくる。
アダムの髪は少し濡れていて、少し残った水気をホテルに備え付けられている高級そうなタオルで拭いている。
今日買った服の中には軽装なものもあり今はそれに着替えており、薄着であるせいか上気した肌が見えマキは目のやり場に困り外の風景を見るべく体ごと窓のある壁の方を向く。
「お風呂、お先にいただきました」
「あ、ああ……」
「この世界に来て初めてのお風呂でしたのでちょっとはしゃいじゃいました。ラムの体から泡が出るようになった時は少し慌ててしまって……」
「せっけんっていうのおいしくない」
後ろで賑やかに話すアダム達にマキは気が気ではなかった。アダムが少し動くたびに香る石鹸の香りがしてきて今の体になって一層感じとれる様になってしまっており、距離を空けているにも拘らず感じてしまう。
女性との経験のない正樹としての人格が、今の状況に対応しきれず少し混乱を起こしている。
「マキ? 外ばかり見てないで少しこちらでお話しませんか?」
チラッとアダムの方を見ると、ベットに座っているアダムが自分の横のスペースをポンポンとたたいている。
純情な少年である正樹にはその隣に座ることを考えただけで体が硬直して動けなくなる。
このままでは、まずいと思ったマキはその場を立ち上がるとそそくさとアダム達の横を通り過ぎ、
「俺も風呂入ってくる。アダムたちも疲れただろう? 先に休んでても良いからな!?」
お風呂場に逃げ込み扉を閉めると、扉に背を預けその場に座りこみ盛大なため息を吐く。
少しは一緒生活していたからと、了解してしまった過去の自分をぶん殴りたくてしょうがないと思いながら、マキは自分が着ている服を脱ごうとして脱ぎ方がわからずまた一つため息を吐く。
「少しは俺が男である事を自覚してほしいものなんだが……」
服を脱ぐのに悪戦苦闘して、ようやくお風呂に入る頃にお風呂場に漂う香りでアダムの香りを思い出して更に悶々とするマキであった。
――――
マキがお風呂場に逃げ込んだ後、マキが出てこないことを確認してアダムはタオルで顔を隠すようにして声にならない声を出して悶絶する。
(森の時は全然平気だったのに同じ部屋ってだけでなんでこんなに緊張するの!?)
気にしてないように見せながらもマキのどぎまぎした反応にいやでも意識してしまい、顔が熱くなる感覚に見舞われる。
そして、部屋を見渡すとそこにあるベットはかなり大き目のベットが一つのみであり、それを改めて認識した瞬間ベットに寝転がってばたばたする。
「あだむ、どうした? ちょうしわるいならさきにねるか?」
「う、ううん! 平気だよ!?」
ラムはアダムの顔を覗き込み、心配そうに触れてくる。ラムのひんやりとした体に熱が下がり少しは冷静になれた。
アダムとしてはベットが一つしかないとしてもマキを他で寝かせるのも悪いと思っているし自分が床で寝る事を考えたが、マキが絶対許してくれないだろう事が想像できる。
そうなると残された選択はこれしかない……。
「ラム、今日は疲れたでしょ? 先にベットに入りましょうか?」
ラムを真ん中にして両端で眠る。これなら変な事されることもないだろう。
(って、マキ君は寝込むを襲うなんてことしないしきっとそういう事するのにも……)
そこまで考えたところでまた顔が熱くなりラムの体に顔をうずめる。ひんやりとした体に熱を下げながらアダムはこれからの事に悶々としていた。




