アーリアでのお買い物
マキは地図を片手に洋服店を探しでめぼしをつけて歩いていく。そんなマキの後ろをアダムは外套を深く被り、翻らないように胸元を押さえてついてくる。
人通りがだんだん女性の多くなっていく中、目的の洋服店にたどり着く。
「着いたぞ。まずはアダム達の採寸して服を選んでもらうからな」
「マキが選んでくれるんじゃないんですか?」
「あのな、まずは着れる服選らばきゃ、今日一日外套のした見せられない痴女だぞ?」
マキの言葉に理解したのか、アダムは顔を赤くしてラムを引き連れて店の中に入っていってしまう。
お店の中に入るといろいろなタイプの洋服がお店の至るところに飾られており、アダムはそれらのいう服をまじまじと見つめている。
「いらっしゃいませお客様、本日はどのようなものをお探しで?」
「あの、えーっと……」
「こいつらに今着れる服といくつかと、選んだ服の仕立て直しを頼みたい」
アダムが戸惑う横でマキは手馴れた感じで店員に頼み、そのままアダムは採寸の為に奥に連れてかれてしまう。
しばらくするとくすぐったそうな声が聞こえてきて、前に部活の女子達に連れてかれた買い物を思い出す。
あの時はどれが似合うかという質問攻めに遭い、その日はどっと疲れたことだ。
ふと気がつくとマキの隣ではスライム状態のラムが先ほどもらったお菓子を食べながら至福の時を味わっている。
「ラムは採寸しなくて良いのか?」
「ひつようない、ふくなんてきてたらスライムになれないもん」
「そっか……お前街にいる間はずっとスライムでいろよ? 人型になったらお前全裸なんだから」
「おまえのめいれいなんてうけない。らむのますたーはあだむだけなんだから」
後でアダムにラムのことを頼もうと思いながらアダムが帰ってくるのを待っている。
しばらくすると、アダムの採寸が終わり、着れる服を用意してもらったのかボロ葉布ではない普通の服でアダムが帰ってくる。清楚なワンピースを身にまとい、いかにもどこぞのお嬢様と言った感じの雰囲気を醸し出している。
そんなアダムにマキは見惚れているのか、何も言わずにアダムを見つめている。
「お客さまにはドレスのようなものが良いと思ったのですが、断られてしまったので清楚系のワンピースなので合わせていただきました。いかがでしょうか?」
「ああ……すごく、似合ってる」
「えと……ありがとうございます」
アダムの方も素直に褒められたことから照れてしまい、落ち着かない感じできょろきょろと辺りを見渡している。
「あの……この服結構お高いようなのですがよろしいのでしょうか?」
「ん? あ~……うん、問題ないよ。これくらいなら痛手にならないし、他にも選んできなよ?」
「でしたら、マキ君が選んでください。僕はこういうの疎いので」
「えっ!?」
マキが普段来ている服はほとんどがおしゃれより機能性を重視しており、今来ている服だってデザインセンスがないと部員の女子達が選んでくれたものの中で機能が良いのを選んだだけに過ぎないのである。
このゲームの機能性に優れるのだとやたら厳つい物か目のやりどころに困るような物しかないのが現状である。
今アダムが着ている服だって、おしゃれな物であるが機能的には弱くそこらで売ってる皮鎧より弱い。
「えーっと……俺が選んだら、おしゃれとはほど遠い物になっちまうぞ。それでもいいのか?」
「はい、もともと森では動きやすいものの方が良いかなって思ってましたし、なにより僕にはこういうのはどうもなれないみたいで」
スカートの裾を摘みながら笑うアダムに、マキはムッとした表情で服の飾られた棚に近づき一つ一つ見ていく。どうしたのかと心配そうに見ているアダムに選んだものを持っていき、アダムに渡す。
綺麗に色付けされたライトグリーンのドレスに戸惑いを隠せずマキとドレスを交互に見る。
「あの、これって」
「お前に似合うと思ったから選んだんだ。なれないとは思うけど、俺なりにお前に似合うと思うんだ。アダム、着てくれるかな?」
どぎまぎした状態でどうしたら良いのかわからずに、アダムはうろたえた感じの返事をしながら、受け取ったドレスを大切そうに抱きしめた。