アーリアに入りましょう
ギルドで入国許可証をもらい急いで門の兵舎に戻ると、そこではいろんな兵士からお菓子をもらい口いっぱいに頬張っているラムに出迎えられた。
「何やってんだ、ラム?」
「ふぁ、おふぁえり~」
「のみこんでから喋れ」
ラムは口に頬張ったお菓子を飲み込み、そのまま奥の方へとトコトコ歩いて行ってしまう。
マキもそれに続いて歩いていくと、そこではアダムが傷ついた兵士達の治療を行い、兵士達から感謝の言葉を告げられている。アダムはそんな兵士達に遠慮ながらに当然のことをしたと口にしている。
「あだむ~、まきかえってきた~」
「えっ?」
ラムの言葉にこちらに振り向き、マキを見つけると気まずそうに笑って兵士に頭を下げてこちらにやってくる。
「おかえりなさい、どうでしたか?」
「ああっ、許可は取れたぞ。所で何をしていたんだ」
「えーっと、ここの兵士さん達が訓練なんかで怪我したり体を痛めているって聞いて、軽いのなら私も治せますし、待っている間に少しでも好印象であった方が良いかなって」
アダムの言い訳は取って付けたようなものだろうと想像できる。純粋に怪我した人たちが心配で少しでも良いから治したいと思ってしまったんだろう。少ない付き合いながらアダムについて知ったマキの印象はそんな感じなのである。
「それで、治療の方はもう良いのか? なんなら終わるまで待っているけど」
「えーっと……ここの人の治療事態はもう終わっているのですが。噂を聞きつけた他の兵舎の兵士さんが治療してもらおうとここに来ておりまして、もう終わりが見えなくてどうしたものかと悩んでいたところなんです」
「そっか……」
しかたないことだろう。アダムの治癒は高ランクのスキルで形成されており、その中の威力を抑えた物でも治癒とまだ見えていない才能のコンボで失った部分すら再生させてしまう。
アダムの英知で見せてもらった時、この才能には驚きしかなかった。
――――神聖
神のなせる奇跡を体現させる。
その心が清らかである限り、加護を与え軌跡を与える。
上限により神に至る。
「それじゃ行くか。こちとら急いで許可証もらってきたからはらペコだ」
「……これたべる?」
「ラム。それどこからだした?」
「らむのからだから」
元の食べ物のまま形成されているビスケットだが、ねっとりとラムの粘液らしきものが付着しており明らかに食べてはいけないものという感じがしている。
ラムも要らないと察したのか、また体の中に収納……というより食べてしまう。
「とりあえず服かな?そのままの格好じゃ街を出歩くにも駄目だろうからな」
「僕としても、このままの姿で街を出歩く度胸はないです」
兵士達にお礼を言った後、許可証を持ってアーリアの街の中に入る。
日はもう正午を過ぎており、街では早くも今日の宿を決めようと足早に歩く冒険者が見える。
「わぁ~~~……すごい、です」
「アーリアは良くも悪くも広いからな、はぐれないように手でも繋ぐか?」
冗談半分で手を差し出すと、照れて顔が少し赤くなるアダムはマキの来ている服の裾を摘み、気まずそうにうつむく。
そんなアダムのしぐさにキョトンとしていると、目が合いアダムは照れた感じにはにかむ。アダムの笑顔にマキも照れてしまいそっぽを向きながらアダムのしたいようにさせている。
「……行くか?」
「……うん」




