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クロスゲート~このきに願いを~  作者: NAo
第1章 世界樹の乙女
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アーリア4

 受付嬢に案内され、豪華な造りの部屋に招かれる。

 その部屋には見覚えがあり、イベントが起きた時などに特別開放される部屋と同じ部屋だと推測できる。

 その部屋で待っていると、ドアが開きそこから先ほどの受付嬢といかにも強そうな出で立ちの男が緊張した表情で入ってくる。マキはそんな男の姿に見覚えがあり記憶の中から思い出そうとする。


(確かあの人……アーリアのイベントの時に大抵出てくるNPCだったよな。確か名前はラント・ナスタチウム)


 愛国心に厚く、国の危機には先導きって戦う貴族出の元冒険者。

 ゲームだった頃に設定的に強いのかと思っていたけど、初心者用お助けNPCだったと覚えている。

 マキ達の実力だとこの人は来てくれず、クエストの説明と報酬の時しか会わないから非公式の呼び名がかねづるだったと思い出す。


「待たせてすまない。俺は冒険者ギルドアーリア支部支部長でアーリア騎士団第2騎団団長のラント・ナスタチウムだ。実力ある冒険者よ、良くぞアーリアまで来てくれた」

「ぶっ!」


 マキはイベントの時の登場文とまったく同じ事を言っているラントに思わず噴いてしまい、応接室の机に突っ伏し笑いを堪えている。

 ラントとしてはいきなりの事で何がおきたのかも理解できず、困惑した表情で自分の後ろについている受付嬢と顔を合わせている。


「し、失礼……昔、毎回登場するたびにまったく同じセリフを言っている奴を思い出してしまって」


 というかその張本人が目の前にいる。

 なんとか呼吸を整え、目の前で苦笑いしているラントと向き合う。改めて見てみると腰には武器を携えており、いかにも警戒している雰囲気なのが感じ取れる。

 そんなラントの警戒を解くために立ち上がり届かないところに自分の刀を置き、あらためて座りなおす。

 マキの行動に驚いていたラントであったが、その意図に気付き自分も同じように武器を後ろの嬢に預ける。


「これから話すというのに、武器は不要だったな。それで入国許可だったかな? 今君がもって来てくれた記憶石は鑑定を行い調べている、それの結果が出るまで君には少し質問をさせていただきたいのだが?」


 ラントは敵意のないことを察して、少し安心した心境で話しているのか、ゲームのイベントの時より砕けた言葉で話している。マキとしても畏まられるよりましだと思い、気にせず相づちをしている。


「まず、君はこの街に何の用で来られたのか聞いてもいいか?」

「そもそもは、俺はその情報の()アダムの護衛ということで共にいるのだが、あいつらとの暮らしている家がないせいもあって、野宿暮らしなんだよ。そのままではいけないと思いこの街に住む職人にお仕事をしてもらいたいと思って来たんだ」

「なるほど……この国には買い物に来たというのは嘘ではないようだな。君達はどちらに住んでいるんだ? こちらとしても君達の素性が全然把握しきれていなくて、対応に困っている所なんだ」

「俺達はこの国とユグラドシェルの間にある世界樹(ユグラドシェル)大森林に転生してしまった存在でな。今はそこに棲んでいる状態だ」

「あの危険な森にか? 熟練の冒険者が居なければ生きて帰って来れないと言われている不可侵の森だぜ?」

「それでも問題なく暮らしている。森の安全なスポットにいるのかも知れないがな」


 ラントは一度会話を切り、考え込んでしまう。

 無理もないだろう。あの森の魔物は弱い奴だとレベル1だが、強いのになるとそこらのイベントボスより強いのがたまに出現する。そのせいであそこに棲んでいる人なんて居ないと思われていたんだろう。


「もし本当なら……今のアーリアを……足掛かり……かも知れない」


 ラントはしばらく考えをまとめていたのか、ぶつぶつ呟いていたがおもむろにこちらを見て、笑ってみせる。


「わかりました。そういう事でしたらこちらとしても危険がないと判断してそちらの連れのアダムさんの入国を許可しようと思います」

「本当か!? ありがとうこちらとしても助かる」

「ただし、条件として」


 後ろに居る嬢に何かを指示を出すと嬢は外に出て行き、ラントはにこやかに笑ってみせる。

 嬢が戻ってくると、書類を入国許可証を持っており、その書類をマキの前に置く。


「君には、ギルドに入ってもらいたい。その方がこちらとしても君達に依頼とか支援が容易にできるしね」


 元々ギルドに所属してたマキとしては、今更感があったのだがギルドに入った事による利点を思い出し、素直にラントの条件を呑む。



 ――――



 マキが出て行った後、マキが書いた書類を見てほくそ笑むラントに先ほどから後ろに居た嬢はあきれた様子でラントから書類を奪ってしまう。


「ラント様……あの者を利用するつもりですか?」

「ああ。あれほどの冒険者利用しない手はないよ。うまく行けばアーリアと主都との距離がぐっと縮まるかも知れない」


 アーリアを想う男は、マキとの出会いは運命だと確信し上機嫌に仕事に戻ることにした。

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