アーリア3
ギルドへと続く繁華街を歩いていくと、そこには他に比べると数段大きな砦のような建物がそびえ立ちその出入り口には冒険者のような姿の人々が出入りしている。
何人かの冒険者を見てみるといくつもの修羅場を潜り抜けた強者やまだ駆け出しのように冒険に少しの期待を抱く若者といった様々な風貌をいている。
「ギルドの外側初めて見たな……」
ゲーム中は商業エリアからギルドの中に直接移動してたから、見る事ができなかった事もありまじまじとみてしまう。そんな姿が周りからはおのぼりにしか見えずこそこそと話し声が聞こえてくる。
「あんなキョロキョロしてあいつどんだけの田舎から来たんだよ?」
「やめてやれよ、ああいう初心者だって夢を抱いてここに来ているんだから」
そんなやりとりを横目にギルド内部に入り、記憶の中の風景と今の見えてる風景を照らし合わせる。
中には違いがなくゲームの時と変わらない状態に少し安心感を持つことができ、記憶を頼りにギルド受付のカウンターへと歩いていく。受付にはメイド服を身に纏っている機人の少女が無表情で冒険者の対応をしている。順番待ちなのだろう列が出来ておりマキもその列に並んで順番を待つ。
「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「国からギルドに来てる役人に会いたいのだが……会えるだろうか?」
「はい、どのようなご用件でしょうか? こちらで承ります」
「あー……連れが国に入るのに、役人の許可をもらわなければいけないと言うことらしいのだが凝りらでも大丈夫か?」
「はい、入国許可はどちらからでも申請して許可がおりれば問題ございません」
「なら良かった、それじゃおねがいしたいのだが?」
「かしこまりました……では」
この後、いくつかの事務的やりとりを行った後、マキ自身のステータスを記憶石で調べられ、アダムの情報記憶石を渡し、マキ自身のステータスを記憶石で調べられると受付嬢は少し驚いた表情を浮かべた後、しばらくお待ちをと告げ、奥の部屋へと入って行ってしまう。このまま受付で棒立ちしてるわけにも行かないと思い、近くの壁に寄りかかり、待つことにした。
―――――
「んん゛ーっ……ギルドだからもっとアクティブな仕事だと思っていたのに、何だこの書類の山は」
前任者の解任されて、次の後釜に決まってしまった青年は目の前に積まれている書類に愚痴をぼやきながら体の凝りを解している。
この地アーリアは、王国からある意味一番近くある意味一番遠い土地になるためか、独自的自治を行っている反面こういった雑務もしなければ行けない状態である。
前任者はそんな雑務に追われ、気を病み今は故郷で療養していると聞く。
「もう少しこちらにも人を送ってもらえないだろうかね……」
再三にわたる人員増加の要請も辺境まで渡れる実力不足を理由に断られてしまっているのが現状である。
男としても、この状況をどうにかしなければこちらが参ってしまうとわかっているのだろう、頭をガシガシと掻きながら再び書類に向きなおる。
―――コンコン
ドアをノックされる音にまた追加の書類かとうんざりしながら、返事をする。
入ってきた受付嬢は書類を持っておらず、その手にはギルドにいる冒険者なら大抵知っている記憶石が見えている。
「ラント様、冒険者から国への入国許可の申請が来ております。いかがいたしましょうか?」
「あー……ちょっと見せてもらっていい?」
受付嬢から受け取った記憶石の情報を開示し、その情報を吟味する。
所々不明瞭になっているが戦闘能力も低く、この程度ならこの国の見張りでも対処できる。
「これぐらいの能力ならわからなくても、問題ないはずだがなぜ入国の許可がおりないんだ?」
「この石を持ってきたものが問題でして」
そう言いながら隠し持っていた記憶石をラントに渡し、情報を開示する。
情報を見て行くにつれ、ラントの表情は強張り深刻な表情で物思いに耽る。情報にはマキの名が記されておりその記憶石がマキを調べたものである事は明白である。
「このレベルが本物だとしたら……この国の総力を上げても良くて痛み分け、最悪な場合国が潰れる。なぜこいつを通した?」
「どうやら敵対的意思はなく、ただ買い物の為に立ち寄っただけと言う事らしいのです」
「ふむ……」
しばらく考え込んだ後、ラントは椅子から立ち上がり身を整える。
緊張した面持ちで自らの愛剣を腰に下げる。平和的解決ができない時のための準備ではあるができれば使わないことを願っている。
「その男に会おう。すまないが応接室に案内してくれ」