アーリア2
アダム達と別れ、アーリアに入ったマキは今まで見ることができなかった街並みを見て感銘な声を洩らす。ゲームの時と違って見えていなかった風景が目の前に広がっている。
「これが本当のアーリア……」
人々の行き交う中央道路には荷馬車が走り、その道路を挟んだ路地では多くの人が露店を開き客寄せをしている。所々からは食べ物の良い匂いが漂い、長旅に空いている胃にダイレクトに響いてくる。
「……腹ごしらえと行きたいけど、先にアダム達の事を片付けないとな」
この街で執政者と言うと、領主館の方に行けばいいのだろうけどそのまま行っても会ってくれるとは限らない。
この国で冒険者に仕事を斡旋している場所……つまりギルドにも国から何らかの肩書きの人がいるだろうとこちらに目処を立て探すこともした。そのための行動として……。
近くにある露天に近づき、品揃えを見ながら店主を見てみる。
お客を威圧しないやわらかな笑顔で接客してくれる店主に軽く会釈をしながら髪飾りを一つ買い、売り上げに貢献した所で話を切り出す。
「まいどあり~」
「店主よ、俺はこの街に久しぶりに来て土地勘がなくてね。冒険者として冒険者ギルドに一度顔を出しておきたいのだが、何も知らずに歩いていたら迷子になってしまいそうで……すまないがギルドまでの道を教えてはくれないだろうか?」
「ほ~そのついでに買ってくれたって訳だな。その髪飾りは女性物だからな。これからデートなのかとも思っていたんだが」
そう言いながら笑う店主に、かわいた愛想笑いをしながら頬を掻くマキに店主は露天の台座の下から洋紙取り出し渡してくる。
「この国でかいからな、街の地図なんかも商売としてやっているんだ。たぶんここらの露天で地図を求めれば大抵売ってくれるぞ」
「街の地図って……無用心ですね。他の国から攻められたりしたらどうするんですか?」
「はっはっはっ……この近隣化け物だらけで街中にも化け物冒険者だらけの国、どこが攻めるって言うんだ」
そういえば、霊刻界で国と国の戦争イベントがあって、参加した冒険者によって攻めて来た国が一方的な蹂躙されて降伏和平をしたっていう情けない話が確かあったなと記憶の片隅から思い出す。
それ以降運営もそう言うイベントを催すことがなくなった。たぶんあまりにも一方的過ぎてどっちが攻めているのかわからない状態になったのが原因だろう。
そう考えると国と国の戦争イベントっていうのはもう起きないんだろう。
「ところでお客さん、地図一枚10コルだが買うかい?」
「ええ、もちろん買わせてももらいます」
「まいどあり、また何かほしいものがあったら声かけてくれよ」
店主から地図を買い取り、その場を後にし、近場の路地で地図を確認して見る。
地図にはゲームの時になかった住宅街や領主館、他にもいろいろな場所が存在しておりそれら一つ一つ確認してるだけで時間がかかってしまうことが容易に想像できた。
今目指すべきギルドの場所を確認し、地図を片手に歩きだす。
外で待ってるアダム達の為にも一刻も早く入国許可の許しをもらわなければ。