アーリア1
「見えてきたぞ、あれがアーリアだ」
砦のような壁に覆われ、中の概要を伺うことができず、出入り口らしい跳ね橋には商人や冒険者風の旅人が出入りしており門番らしき兵士が忙しそうに検問を行っている。
アダムとラムはそんな大きな城壁を眺め、唖然としている。
「大きい街だね」
「まあな、樹幻界には大きく11の都市が存在していて、その中でもアーリアは初心者から上級者まで冒険者が集うから日に日に拡大を続けているんだ」
ゲームの時はその中の商業エリアと斡旋所位しか歩くことができず、そこまで大きい街だと思うことはなかったことを思いだし、仲間と歩いた町並みを思い出す。
いつか、あの仲間たちと合流できる日をと、そう願いながら検問をしている列に並びおとなしく待つ。
「これはなにをやっている?」
「町に危険なものが入らないように確かめているんだよ」
アダムの腕の中でおとなしくしているラムと会話しながら待っていると、マキ達の順番がまわってくる。
兵士達はマキに手に持っている石をかざして何かを確認すると少し驚いた素振りを見せ、恐々しく会釈をしてその後ろのアダムとアダムが抱いているラムを見つめ訝しげにマキの方を見る。
「あ、あの、冒険者様……あまり奴隷の放し飼いは感心しません。そ、それに低レベルだからって魔物まで町に入れるなんて」
「奴隷?」
後ろを振り返って兵士達が言っている意味を理解する。アダムのみすぼらしい姿にどうやら奴隷と勘違いしているみたいだ。
「そいつの姿はここに来る前にモンスターフォレストに襲われて、服が破けてしまったからで、新しい服を新調するためにこの街に来たんだ。そいつは奴隷じゃないし、そのスライムはそいつのテイムだから安心しろ」
不機嫌そうに応えると、兵士達はすまなそうに頭を下げ、アダム達にも石をかざす。何かを確認しようとして、兵士達は訝しげにアダムを見つめる。
「あの、失礼ですがあなたのステータスが確認出来ない部分がありますので入門させる事ができません」
「僕のステータスおかしなところありましたか?」
「そいつが誰かに危害を加えないから問題ないはずだと思うが」
「し、しかし、いくつかのスキルが閲覧負荷になってしまっており、それが確認できるまで街に入れる訳には行かないのです。これは狡猾な魔物がこの街に入らないための処置であり規則です、どうかご理解の事お願いいたします」
このままだと、アダムとラムが外で待ちぼうけになってしまって目的の半分も果たせない。
どうしたら入れるのか考えていたらアダムは兵士達に歩み寄り手をかざす。
「僕自身を英知で調べた情報で良ければ提示いたします。よろしければ通していただけませんでしょうか?」
「そちらから提示されてもな……。こういった事態になると我らは通すわけには行かないとしか言えないのだ。もし通りたければ、もっと上の……そうですね、国の政に携わっている誰かに問い合わせてください」
兵士達は、列の整理があるのでマキ達から離れ自らの業務に戻っていく。
このままでは、アダムたちが入れない事は明白でありこのまま佇んでいるわけにも行かず一度作戦会議の為にその場から離れる。
「どうしますか?」
「俺だけで入ってもあまり意味がない。できればお前らも一緒に入れてやりたいのだが……」
「あいつらたおしてなかにはいる」
「んなことしたら国中の冒険者に討伐されるだろうが」
「なら、先ほど兵士さん達が言っていたとおりにこの国の偉い人に頼みこみますか?」
どっちみちこのままでは、入れないので国の上の人に尋ねるしかないと言う結論に行き当たり、改めて兵士達の所に戻って行く。
兵士達もマキ達に気付き、兵士の一人に検問を任せ先ほど話していた兵士がこちらにやってくる。
「お決まりになられましたか?」
「ああ、とりあえず俺だけ入って国の偉い奴に入国の許可をもらいに行く事にするよ」
「そうですか、でしたら」
兵士は先ほどから使っていた石を一つマキに渡す。何なのか訝しげにその石を見つめていると突如石から文字が浮かんでくる。
「その石は情報記憶石と言いまして、これで調べたもののステータスや情報を記憶できる優れものなんです。このような事態の時に皆さんにお渡ししています」
「つまりこの石を持って行けば、アダム達も入れるようになるんだな?」
「はい、しかし大抵の場合は怪しいから入国を拒否されるって場合がほとんどなんですけどね」
兵士においっとツッコミを入れながらアダムに石をかざし、アダムのステータスを記憶させる。
名前:アダム 年齢:???
性別:女 種族:???
Lv.10
STR(攻撃力):0100
CON(生命力):0178
INT(知 力):0289
POW(精神力):0312
DEX(器用さ):0191
AGI(素早さ):0102
LUK(幸 運):5000
才能
英知Lv.3
治癒Lv.2
???Lv.5
???Lv.3
系譜Lv.1
???
???
記憶の終わって文字が石に吸い込まれた後、ポーチにしまいこみアダムの頭をポンポンと撫でる。
「それじゃ行ってくる」
「はい、僕達はここでのんびりお待ちしております」
「兵士の兄ちゃん、悪いけどこいつらを検問の小屋で待たせてはもらえないか?」
「そのぐらいなら平気です、戻ったら私に声をおかけください」
「いってらっしゃい」
マキはアダム達を残し一人門をくぐる。
この世界にやってきてはじめての街。アダム達と見てみたかったと少し残念そうに笑って歩いていく。