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蒼い星  作者: らんらら
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11.地球7

「シキ、伏せろ!」


シンカの声と同時に白光が空を薙いだ。寸前で避けたシキの髪がいく筋か、はらりと床に散った。

「あぶねぇ」

「やはりな。皇帝、シンカを後継者とするのではないのか?」

レクトが壮絶な笑みを浮かべている。取引だのと持ちかけるふりをしながら、結局は自分に都合のいいようにするのだ。周囲や元帥が何をどう言っても聞くような皇帝ではない。

シンカを救おうとリュードに潜入しあの街を破壊した、レクトの行動は間違ってはいなかった。


皇帝は嬉しそうに笑った。

「くく、後継者など、馬鹿なことを。こんな子供に何をさせるというのか」


「何だよ、後継者って」

シンカが睨みつける。

「それに子供っていうな」


それがカッツェが言っていた、皇帝やレクトが隠していた目的なのか?


シンカは皇帝の後姿と、レクトの表情を見比べていた。


皇帝は凶器を仕込んだ指をゆっくりとセイ・リンに向けた。


「危ない!」

シンカが叫んだときには、赤毛の女性は肩を押さえて倒れかかる。あの防御服も肩は保護できない。皇帝はそれを知っているのか。


レクトの銃から報復のレーザーが放たれるが。皇帝の額にきっちり命中したそれは空しく弾かれ、シンカの腕をかすった。皇帝は平気なのだ、レクトも二発目を躊躇するしかない。


ジンロの銃もシキの間隙をついた剣も、すべて歯が立たないようだ。シキが皇帝に突き飛ばされ壁に打ち付けられて頭を押さえた。

「シキ!」

一人、皇帝の背後にいるシンカは隙を突いて短剣を皇帝の背に突き立てた。厚い黒いマントの布越しに感じるそれは、人間ではない。硬く短剣は一ミリも食い込まず、ぞっとするような甲高い音を立てた。シンカにつかみかかる黒い腕をかわして、四人に合流しようと駆け出した。

レーザーが足先を弾く瞬間に飛びのこうとし、シンカは反動で実験台に腰をぶつけた。

「いて」

「シンカ!後ろ!」


セイの声で振り返る。

肩をつかまれそうになる。腕をひねるようにして振り払うのと、シキが斬り付けるのと同時だ。

痛む足を引きずりながら、レクトの横に駆け寄った。

「大丈夫か」

「そっちこそ、大丈夫なのか?心配したんだ」

まじめに話すシンカにレクトは目を丸くし、それから「は」と呆れた息を吐き出した。

「バカが、俺を心配するなど百年早い」

「はあ!?」

「痴話げんかしてる場合じゃないっすよ」

冷静なジンロの低い声にシンカは複雑な顔を、改めて皇帝に向けた。

皆と合流できたことがシンカを安堵させていた。



「状況は変わらんぞ。シンカ。お前が拒めば、四人は死ぬだけだ」

「なんだよ、それ!」

返事もせずに皇帝のレーザーがジンロの胸を撃つ。ジンロは構えるまもなく、衝撃で数歩下がった。支えようとしたレクトにも、容赦なくレーザーの光が注がれる。


「やめろ!」

「お前にかかっているのだぞ?お前さえ言うことを聞けば、四人は生きられるのだ。考えてみるがいい、このまま全員を殺し、最後にお前を捕らえることも出来る。せめてもの慈悲だぞ、シンカ。こちらに来るのだ」


シンカの肩をシキが押さえる。

「わかってるんだろうな、シンカ。俺はお前のために来たんだ。お前が一緒でなきゃ、死んでも帰らん」

「シキ……」

「このままお前を置いて帰ったって、ミンクに殺されるぞ」

そう言ってシキはウインクしてみせる。


「そうよ、シンカ」

セイ・リンも笑う。

白い光が赤毛の女性に向けられる。

シンカとシキがそれに気付いたのは同時だった。

「セイ!」

シキはセイ・リンを庇い、二人そろって身を投げ出した。

「シキ!」

シンカが駆け寄る。

シキは腹部を押さえていた。耐熱服も、腹部は弱い。じくじくと血の流れ出すそれにシンカはぞくと震えた。苦しげに息をつくシキはうめくことも出来ずにいる。

このままでは。


「シンカ、一人ずつ、殺していくぞ」

追い討ちをかけるような皇帝に「黙れ!」とレクトが飛び掛る。腕をつかむと、人間離れしたその機械の男を全体重をかけて引き倒した。露になった皇帝の首に短剣をつきたてようとする。そこは接続部。弱点ではないかと思われた。


が、剣はむなしい音を立てて弾かれた。機械の腕は尋常でない力でレクトを突き飛ばす。ジンロが入れ替わるように蹴りを入れる。皇帝はそれを受け止めると、横にひねりながら起き上がり、勢いで転がるジンロをさらに蹴ろうとする。


レクトの上段蹴りが皇帝の首を狙う。ぐらりともしない。二回目の蹴りが腹に入ったが、平然として皇帝はレクトの両肩をつかみ、床に投げつけた。

 

「シキ!」

「シキ!しっかりしろよ!」シンカの叫び声にもシキの反応は鈍い。


セイ・リンが大きな瞳に光るものをたたえている。シキの日に焼けた腕が伸び、セイ・リンの赤毛に触れた。

「なんで、庇うの!貴方の目的はシンカを護ることでしょう?」

「…シンカなら、分かってくれるさ…一人の女を守るってのも、いい」


セイ・リンがシキの名を呼ぶ声を聞きながら、シンカは短剣で手首を切った。

シキの腹部の出血を押さえようとしていたセイ・リンをそっと引き離すと、シンカは自分の血を含ませた布を傷口に押し当てた。

効くかは分からない。

シンカは塞がりかけた傷口をさらに切り裂き、布の上から血を滴らせる。震えるほどの痛みも、失うことを思えば気にならなかった。

あの時のミンクと同じ。失うわけには行かない。

大切な友達だ。


「シンカ…?何、してる」

シキのかすれる声。かすかに青ざめた頬に赤みが差した。

「俺は、どうせ長くない、お前も知っていただろ」

「違うよ!リュードを出れば、ちゃんと治療すれば治るって、言ってただろ!」

「…お前に会えて、最後にさ、俺らしく生きられたと、思うぜ…」

「だから、死なせないってば!」

シンカは血にまみれた手で涙をぬぐった。

「ユンイラは、嫌いかもしれないけどさ。俺、シキを死なせるわけには行かないんだ」

シンカは穏やかに笑っていた。


その笑顔は、いつか見たことがある。

シキは思い出した。カンカラの遺跡で、遠くを見ながらいつか空を飛ぶ乗り物に乗ってみたいと話した時。思いつめ、何かを考えている瞳。


セイ・リンも思い出していた。ステーションのコロニーで、レクトから逃げ出すことを決めたとき。真実より、自分の意志を選んだときの。笑顔だ。

「おい!シンカ!」

シキが、止めようと手をのばす。

それは届かない。

「だめよ!シンカ!」

セイ・リンの声も聞き流し、シンカは立ち上がる。蒼い瞳でまっすぐ、太陽帝国皇帝リトード五世を見つめた。


「シンカ!だめだ!」

レクトが叫んだ。その瞬間に皇帝に突き飛ばされ壁にしたたか背中を打つ。

「レクトさん!」

ジンロが背後にレクトをかばう。


レクトは、思い出していた。あのロスタネスの哀しげな微笑を。それを浮かべる、シンカの表情を。


「なんだか分からないけど。要求をのむよ。好きにすればいい」

シンカの言葉に皇帝は動きを止めた。

そう、始めから、覚悟してきていた。

ミンクのために、ガンスに血清を作ってくれるよう頼んである。戦場で幾人も男たちを送り出してきた軍医のガンスは、黙ってシンカの頼みを聞いてくれた。もし帰れなかったら、ごめんって言っておいてくれるはずだ。


「いいだろう」

皇帝はジンロの足を撃ち動きを止めると、シンカに来いと促した。

 

シンカは皆の声を聞きながら、皇帝の手の届く距離まで近づいた。

「ユウリ!」

皇帝の呼ぶ声でレクトたちの背後から小柄な女性が恐る恐る入ってきた。先ほどから隣で様子をうかがっていたのだろう。

「シンカに薬を」

 

ユウリが周囲の視線におびえながらも細い金属の筒をシンカの腕に押し当てた。


ちくりとする。あのデイラの研究所で、セイ・リンが使った薬と同じだろうとシンカには予想できた。

あれ、好きじゃなかったな。

めまいと共にぐらりと視界が揺れる。

「皇帝、シンカに選ばせるといった、あれはなんだったのだ」

レクトの声のようだ。

選択?

身体はますますけだるくなり、シンカは立っていられないほど気分が悪くなっていた。悪寒に手が震えた。

「あれか。我の一部となるか、帝国を治めるか」

「我の、一部?」

シンカが、かろうじて声に出した。


「そうだ。お前は我を倒せなかった。我を凌駕できれば考えないでもなかったが。力ないものは死に値する。お前は我の一部として永遠の命を我に与えるのだ!」

「!」

「永遠の命?くだらねえ。」

顔色の良くなったシキが血の混じったつばを一つ吐くと、セイ・リンに支えられながら上半身を起した。

シンカは暗くなる視界にシキの様子すら理解できていなかった。思考はしっかりしているのに、どうにも体が自由にならない。耳を塞ぐ耳鳴りやこみ上げる吐き気と悪寒、震える手足。ついに立っていられなくなって膝をついた。そのまま、くたりとうずくまる。それでも意識の片隅で皇帝の声を聞いていた。

「我は、こやつの素晴らしい体が欲しい」


なに言ってる?


「こやつの細胞は老いないのだ。寿命二百歳のセダ星人でも、十五歳を過ぎれば細胞の老化が始まる。シンカは、今だ生まれたての赤子のような細胞を維持しているのだ。恐るべき治癒能力もその理由の一つ。その永遠の生命力をもった臓器は我に相応しい。移植され、永遠に我とともに生きるのだ」


「勝手なこと言うな!」

レクトが叫んでいる。


吐き気がする。移植?

何を…?俺を?



「我がここまで生きてきたのも、レクト、お前のような我の血を引く若者の臓器があったからこそ」

「やはり、お前が殺していたのか!」

「お前の兄弟は、今、我とともに生きている。ここに」

そう言って、皇帝は機械の体を示した。


「お前は殺すにはいささか惜しくてな。だから、お前の血を引くシンカを作らせた。ユンイラの成分で、まさかこんなに理想的な生き物になるとは思わなかったが」

「そのために、ユンイラを研究したのか?シンカを」

レクトが怒りを押し殺し、低い声でたずねる。

「そうだ。馬鹿なやつらは我が宇宙制服を企むなどと勘違いしたようだがな。この宇宙で我の力が及ばないところなどないではないか。すでに支配されていると言うのに、下らぬことよ」

「貴様!」

座り込むシンカを引っ張り上げ、手術台に乗せようとする皇帝に、レクトが飛び掛った。


「シンカ!」

皇帝の手を払いのけ、レクトは力ないシンカを抱きとめた。

かすかにシンカの意識にそれが分かる。


父さん。


つぶやいたのは声になっているのか。


「レクト、そなたの選択は決まったのか?」

「誰が、お前などに協力するか!」

「ふん。死を選ぶか」

皇帝の手が、シンカを守ろうとするレクトの背に当てられた。

白い一閃が男の背を突き抜け、シンカの目の前を走った。


なんだ?


肩を抱く温かい腕が、ふとなくなった。


床に座り込んでいるシンカの前に、レクトの意識を失った顔があった。

「?」

レクト?


心臓がどくり、と大きく鳴った。


とう、さん?


血液はゆっくりと男の下に広がっていく。


まさか…。

鼓動が大きく脈打ち、何も聞こえない。

聞こえないが、シンカは叫んでいた。

嫌だ、レクト、死んだら嫌だ。


閉じられた男は、動かない。

栗色の髪がかかる背に、レーザーの跡。

血の匂いが広がる。視界がぼやける。


「レ・・クト!」

あふれる涙を感じる。


ずっと、探していた、父さんなのに。

違うかもしれないけれど。


父さんだと、信じると決めた。



ぐいと腕を引く皇帝に、シンカは蒼い瞳を向けた。強い力に引きずられ、レクトから引き離される。

 

「太陽帝国皇帝は永遠なのだ!貴様らごときが何をしても無駄だ!」

「父さん」

引きずられながら、シンカの声が震える。

 

「レクトさん!」

足を引きずって、駆け寄るジンロ。レクトを抱き起こす。

「!シンカが」

セイ・リンが寒さを感じて、シンカを見つめた。

うつろな蒼い瞳は何も見ていない。

それは覚えがある光景。

シンカの体の周りの空気が歪み始めた。


「なんだ?これは、……」

皇帝が異変に気付いた。シンカの手から、熱が奪われていく。

凍っていく。

厚い黒いマントの生地に空気中の水分が凍りつき、白い霜となってちりばめられた。それは沁みのようなものから次第に広がり、見ているうちに皇帝の腕全体を白く染めた。

「は、はなせ!」

もがいたとたん、機械の腕はミシと嫌な音を響かせ、パシンと砕ける音がする。

限界まで温度の下がったそれは、ガラスのように脆い。


「くそ…やめろ、シンカ」 

皇帝は唸るが、既に肩まで凍った手は動かせない。


「おい、シンカはどうしたんだ!なんだ、この寒さは」

シキが背を這う寒気に、身を縮める。

「力が暴走したのよ!研究室の爆破のときも、同じだったわ!」

セイ・リンが叫ぶ。その息は白く急速に凍っていく。

「力…?」

シキはシンカを見つめていた。人間とは違うと聞かされても実感はなかった。今それを見せ付けるようなシンカの様子はシキには切ない。

「彼の力のおかげで私も救われたわ。あの後、まるで小さい子供みたいに熱を出すの、看病するの大変だったんだから」

セイ・リンのそれはシキを慰めているようにも聞こえた。



ジンロは片足を引きずりながら、レクトの体をシンカから引き離した。

「う、…ジンロ」

「レクトさん。良かったっす。急所は外れてますが、肺を傷つけてる可能性があるっす。止血もしなきゃならないですし、動かないでください」

恐ろしいほどの冷気で、レクトの唇は紫色に変わっていた。

「シンカは?」


ジンロが、白く光るシンカを見つめる。

レクトもその視線の先を追った。

皇帝は、すでに首まで固まっている。

シンカの体は熱で白く光り、周りの空気のゆがみが、まるでオーラを見せるように煌く。


呪う言葉を吐き続けながら皇帝は少しずつ動きを止めていく。

すでに頬まで冷気の白に染まっている。

「おのれ、シンカ!キサマ……ユルサン…」

皇帝の声が途絶えた。

脳を包んでいたカプセルが硬質な音を響かせて凍結した。


シンカが白く発熱する手を添えた。身体に蓄えた熱い塊をすべてそこに、その一点に吐き出すように。シンカは目を閉じた。


急激な温度変化に、それは砕け散った。青い液体は美しい宝石のように青くきらめきながら飛び散る。


シンカはそのまま、眠るように倒れた。

 

レクトは「シンカを」とジンロに指先で合図した。

吐く息が白い。

うなずいて、レクトをそっと横たえさせると、ジンロは少年に近づき恐る恐る触れてみる。

熱で火照っているようだが、熱を吸い取られる感じはない。

そっと、抱き上げる。

 

足元で割れた破片がかすかに音を立てる。横たわった黒い服装の機械は、グロテスクな姿を晒していた。


「殺しちまいましたね」

ジンロがぽつりと言った。


セイ・リンがシンカの高熱を発する額を押さえる。

シキはユンイラが効いたのか、シンカの様子を見ようと這ってくる。

「どうなるのかしら。太陽帝国は」

セイ・リンの言葉にジンロが笑った。

「皇帝一人いなくたって動いていくっすよ。みんな一人一人自分の考えで生きているんだ」

 

「そうね」

セイ・リンが首を振って息をついた。

「さて、どうやってここから脱出するかっすね」

ジンロが室内を見回す。まともに歩けるものはいない。絶望的だ。

 

 

ドアが開き、四人は一斉に振り向いた。

帝国軍を後ろにつれ、メイソン元帥が前に進み出た。

身構える三人。レクトは、青い顔で、横たわったまま老人を見る。

「メイソン元帥」

レクトは横たわったまま、小さくため息をついた。


計ったようなタイミングに、この皇帝の親衛隊を勤める元帥が何を期待していたのかを悟った。レクトの口元には皮肉な笑みが乗る。待っていたのだろう、新たな後継者が、皇帝を倒すのを。


元帥は背後の兵士に武器を収めるように示した。

白衣の医師だろうか、数人駆け込んでくるとレクトやシキの治療に当たる。

メイソン元帥は改めて、ジンロに抱きかかえられている少年の前で膝をついた。


「なんすか?」

ジンロの眉にしわが寄る。


「新たな皇帝として、彼には太陽帝国を支えてもらわねばならん」

「だから、それは」

言いかけたシキが、判断を仰ぐようにレクトを見つめた。


レクトは医師の治療を受けながら、片手を挙げた。止めておけということか。


「どうするかはシンカに決めさせるさ。もう、リトード五世はいないんだ」

「しかし」

シキがシンカを見つめる。目を開けたものの、シンカはまだ呆然としているようだ。

「シンカ、分かるか?」シキの声に、シンカは数回瞬きをする。


「あ?ええと。俺、わけがわかんない、よ」

「皇帝がどう判断なされようと、我らは貴方を後継者として認めています。貴方は皇帝になるべくして育てられた。リトード五世陛下の亡き後、貴方が帝位を継ぐのが本来というもの」


話の内容をやっと理解し、シンカは眉をひそめた。シンカは、ジンロとセイ・リンに支えられて立ち上がった。

「あの、分からないんだ。俺は皇帝を殺したんだよ?あなたたちだって、受け入れられないだろ?おかしいよ」


く、とかすかに向こうでレクトが笑った気配。

シンカはそちらをちらりと見て、首をかしげる。


メイソンはシンカの正面で膝をついて見上げると、微笑んだ。


「私たちは皇帝に仕えているわけではありません。帝国のためにおります。よりよい未来を築けるのならば、本来、皇帝は誰でもいいのですよ。ただ、聖血者の資格は必要です。あなただけなのです。今、皇帝になれるのは。あなたはそうなるために育てられているのです。辺境の惑星にしてはたくさんの事を教えられてきたのではありませんか?そして、期待以上だと報告を受けています。申し分ありませんよ。あなたの腕のリング、それは帝位を継ぐものの証です。もう、外すことはできないのですよ。そして、今、あなたがこの話を受け入れてくださらなければ、太陽帝国は混乱し、たくさんの戦争がおこるでしょう」


リング、カッツェが言っていた、これがそれなのか。シンカは左手で右の腕にはまった金属のそれをなでた。

今は、シンカの体温のためか温かく感じた。


「いつの間にリングなんか。あきれますよ、元帥」

レクトの口調には揶揄が含まれる。

「我々には、帝国を守る義務がある。前皇帝がなんとおっしゃられようと、帝位を継ぐものを保護するのは当然のこと。もちろん、レクト。シンカが帝位を継ぐのであれば、お前も皇帝に忠誠を尽くすのであろう?」

元帥がにやりと笑う。


皇帝の動きを見守りながら、元帥が手を回していたのだろう。レクトはかなわねぇな、と小さくつぶやいた。

 

「あの」

シンカが周りを見回す。


シキも、セイ・リンも少年の顔を見つめた。

メイソンは期待に満ちた目で微笑む。


答えを待っていた。


「俺のお父さんって、皇帝だったの?」

 

静まり返る室内で、一人だけ吹き出した。

苦しげに傷口を押さえて、レクトは横たわったまま言った。

「ばか、お前の父親は俺だ」


笑い続けるレクトに、シキも笑う。

セイ・リンも、ジンロですらにやりとした。


「なんだよ、笑うなよっ!」

少年は頬を赤くする。

それが重要なのだ、シンカには。そして、レクトの答えが笑顔を作らせる。



ちょうど、ブールプールの夜が明けた。

ガラスの壁面一杯に、金色に照らされた町並みが輝いた。


最上階のこの部屋にも金色の朝日が差し込む。

少年の髪も朝日を浴びてゆらめく。


嬉しそうに微笑むシンカの瞳の蒼は、地球の蒼を思わせた。

                 




ここまで読んでくださってありがとうございます!

この作品は「面白いRPGをやりたい〜」という私が思いつくままに書いたシナリオでした。

小説になるなんて考えてもいなかったのですが。

描き終えて、自己満足じゃ淋しいと、投稿してみました。


生まれて初めて小説を書いて、完結させて。その楽しさは言葉に表せないほどでした。


以来、物語を書くことが趣味になって、今現在は、「蒼い星」の続編3編、その他の長編ファンタジー3編、現代ものいくつかなど。

ずっと書き続けています。


一人でも多くの人に、読んでいただきたい。楽しんでいただきたい。

それが、私の願いです。


楽しんでいただけましたか?


感想、評価など、いただけると嬉しいです♪


2008.8.10  筆者拝

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