11.地球3
起き上がり、まっすぐ、皇帝を睨んでいた。
「決めるのはシンカ本人だ。お前にも選択肢をやろう。」
低く笑いながら話す皇帝を、気に入らない様子で、レクトは横目で睨む。
再び、ベッドに寝転ぶ。
「このまま、一生追われ続けるのも、得策ではあるまい?」
「・・選択肢とは、何だ。」
「太陽帝国皇帝に忠誠を誓うか、死を選ぶか、だ。」
あきれたように口をゆがめると、レクトはいやみな笑いを浮かべた。
「ばかなことを。」
「お前は後継者にはなれん。だが、我に似ている。」
「吐き気がするぜ。」
「気付かないか?」
レクトは寝返りを打ち、皇帝に背を向けた。
「我が、お前の母親を殺したように、お前もシンカの母親を殺したではないか。」
「一緒にするな。」
微動だにしないレクトの表情は見えない。
それでも、皇帝は声に笑みを含み、楽しそうだ。
「血は争えん。シンカもさぞ、お前を憎んでいるのだろう。」
くくく、と低く笑う。
「・・あいつは違う。」
ぽつりと言ったレクトの声が、皇帝に聞こえたかどうか。
「レクト、忘れるな。お前に与えられた選択肢は、皇帝に協力し、太陽帝国の政治を行うこと。断るのならば、抹殺。
お前はお前の選択肢をどうするのか、シンカを捕らえるまでに考えておくことだな。」
すその長い黒い衣装を翻し、背の高い男は去っていく。
レクトは、脱出することを決めた。シンカがとらわれてしまう前に。カッツェが、選ぶだろう選択肢で、一番安全なのは、俺が自分で脱出することだ。
カッツェが人質などという罠にはまるわけはないが、シンカがそれに従ったかは、分からない。
どちらにしろ、期限が切られた。
なにが、選択肢だ。
レクトの独房を出たところで、リトード五世を帝国軍元帥、メイソンが迎えた。
白髪の丈高い軍人を、皇帝は押しのけるように歩き続ける。
「陛下。なぜ、お認めになられませんか!」
「うるさい。私に意見するな。」
黒い衣装を翻す皇帝に、メイソンは食い下がる。
「待望の聖血者ではありませんか!」
「メイソン、我はお前に許可したか?あれにリングをつけるなど、何を勝手にやっておるのか!」
「しかし、陛下。」
「それとも、お前は勝手に後継者を立て、我を亡き者にしようとでもたくらんでいるのか。」
「いえ、そんな。」
早足で歩き続ける皇帝の後ろから、メイソン元帥はついていく。