表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼い星  作者: らんらら
29/74

5.この国の現実3

ミンクは、この褐色の肌の少女に、なんともいえない可愛らしさを感じていた。

言葉遣いや動作は荒っぽいが、素直な表情がくるくる入れ替わる、大きな黒い瞳に、吸い寄せられるようだ。

「あたしはね、この山のもう少し向こうに行った、ほら、あっちの草原。そこの村に住んでるんだ。」

よくよく見ると、小さく家らしき影が見える。

「ガガンは一人でここまで来たの?」

「ううん。違うよ。グラン・スーと一緒」

「グラン・スー?お友達?」

たずねると、黒髪の少女は、瞳をくりくりさせて、あたりを見回す。

「ううん。お母さんのお母さん」

「お母さんの、お母さん?」

ミンクは繰り返す。そんなの聞いたことない。

「途中までそばにいたんだけど、どっかいっちゃったみたい」

「お母さんの、お母さん」

ミンクはまだ、こだわっている。


「ねえ、それより、どうしてミンクは白い髪なの?赤い眼をしてるの?」

「え、うんと、私……」

どうしよう。言ってもいいのかな?

「ガガン!そんなところで何をしているのじゃ!」

突然、しゃがれた怒鳴り声が聞こえた。

振り向くと、麻で織られた衣装をつけた、黒髪の老婆が立っている。腰には小さな籠を下げ右手に杖を持っている。

「グラン・スー」

駆け寄る少女。

シキとシンカが、いつのまにかミンクの左右を固めている。

少女は、老婆に何やら叱られている。老婆は一通り小言を並べ終えると、少女には見向きもせず、こちらに向かってきた。

「すみませんな。旅のかた。あの子が何かご迷惑をおかけしませんでしたか」

見合わせるシキとミンク。

「いえ、別に。たまたま、ウサギを焼いていたところに通りかかって、お腹がすいているというので、誘ってしまいました。

こちらこそ、すみませんでした。ご心配をおかけしてしまって」

ミンクが丁寧に話す。


老婆は、しげしげとミンクの姿を眺める。

目がよくないのか、細めたり、見開いたりしている。

「あの、俺たち・・」

言いかけたシンカをさえぎって、老婆が大声をあげた。

「誰か、来ておくれ!怪しい奴じゃ!悪神スーラの使いじゃ!」

慌てて、逃げ出そうとする老婆。ガガンを引っ張って、村のほうに逃げていく。

「何?」

あっけにとられるシンカとミンクに、シキが説明する。

「・・多分、あの村ではユンイラを忌み嫌っているんだ。

だから、ユンイラの神、スーラを悪神と呼ぶ。きっと、そういう民族なんだよ。

昔からの言い伝えか何かで、ユンイラの中毒になったものが、ちょうど今のミンクのような白い髪、赤い瞳だったって知ってるんだ」


「・・・失礼ね」

私を見て逃げたってこと?ガガンは綺麗だって言ってくれたのに。変なの。

ミンクは頬をぷくっと膨らませた。

「お出迎えだ。どうする、シンカ」

シキが、周りを遠巻きに囲んでいる村人に気付く。

「うーん。鍋、欲しいんだ」

「とっつかまるぞ」

「話して分かってもらえないかな」

ミンクが言う。

だって、別に私は悪者じゃないし。それに、ミンクはグラン・スーの存在が気になった。

「じゃ、行こう」

シンカがミンクの言いなりになって、三人の行動が決定した。

「俺は暴れるぞ?」

シキが非難がましく言う。

「いざとなったら俺だってやるよ。けど、鍋もらうまでは我慢しようよ」

シンカがなだめる。

三人は、村人におとなしくついて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ