4.いくつかの友情3
「この辺、古いな」
シンカは松明を持つミンクの後から、シキを半分引きずるようにして進む。
「おっさん、重いな。な、まだ歩けないの?」
「そうよ、もうユンイラの香り、しないのに」
ミンクも二人の横に来て、灯りでシキの顔を照らした。
「うるさい、お前らと違って、俺は繊細なんだ!」
「ありえない〜」
「可愛いくせに口は悪いな、ミンク。シンカも俺はそんなに体重かけてないだろうが!」
「随分元気じゃないか、シキ」
「ああ?そうか?」
また、ずんとシンカの肩に体重をかけてくる。
「お、重い、シキわざとやってるだろ…」
「気のせいだ、ほら、行き止まりだぜ、どうするんだよ」
三人の前には、灰色の岩が立ちふさがっていた。
背後から、兵の気配がする。
「どうって…」
ミンクは、松明で天井や壁を確認する。
「この辺、やけに壁が平らだな」
シンカは途中でこぼこの岩肌の洞窟のようだったことを思い出した。今いるここは、少し違う。地下牢と同じように、人の手が加わった平らな壁。
「さて、どうするんだ?」
シキはシンカに体重をかけたまま、にやにやしている。
「……風は、そこから吹いてくるよ」
シンカが指差した場所には、壁があるだけだ。
「ね、早くしないと、追いつかれちゃうよ」
「そうだよなぁ」
シキはやけにのんびりしている。
シンカは、肩に手を回したまま寄りかかるシキに、肘うちをかました。
「いて!」
「さっきからさ!シキ!人に頼ってばかりでなんだよ!軍人だろ?なんか知ってるんだろ!離れろよ!」
少し息を切らして、シンカは男を突き飛ばした。
そのまま壁に寄りかかる。
自分より大きな男を背負うように歩くのは、なかなか体力がいるのだろう。
「おいおい、せっかく助けに来た友人をその扱いか?」
「逆になってるだろ!」
シキは髪を一振りして、伸びをした。
しゃんと立って、まるで昼寝したあとのようだ。
「わざとだ、やっぱり」
ミンクもシンカの傍らで、目を丸くしてシキを見ていた。
シキは二人をちらりと見て、笑った。
「いや、お前がどんな奴かと思ってさ。手伝ってほしいか?」
「はあ?」
シンカの呆れた声にシキは益々楽しそうに笑った。
「助けてほしいかって聞いているんだ」
唖然として言葉を失うシンカの脇で、ミンクが松明をシキに突き出した。
ニヤニヤしたまま松明を受け取ると、シキはもう一度言った。
「助けてほしいか?」
「な、なんか、むかつくけど……助けてほしい」
シンカが睨むと、シキはにっこりと笑った。
「よし。だいたいな、お前、人が真剣に助けに来たのに可愛げないんだよ、平気そうな振りしやがって」
「何だよそれ!」
鼻歌でも歌いだしそうな調子で、シキは一人壁際に立った。
突き当たりの壁の一角。ちょうど、シンカが風が吹いてくるといった場所だ。
一番下のひときわ小さな石が削れたように凹んでいる。
そこを蹴った。




