第八話 二人組の目論見
投稿遅れて申し訳ありませんでした
「また魔物が現れたぞ!にげろ、にげろー!!」
魔物の咆哮が聞こえてからほんの数分も経たないうちに村は大混乱を引き起こしていた。
我先にと魔物のいる方向とは逆の方へ村人たちが逃げ回っていた。……たった四人の少女と一人の少年を置き去りにして。
村人たちが逃げ回ってる中俺は友人と、魔物と戦ってるところが良く見える屋根の上から魔物との戦いを眺めていた。
「みんな情けないよな、キャーキャー言いながら逃げてさ」
「俺たちもたいして変わらないだろ?見てるだけなんだからさ」
「まあ、そうかもな。俺たちも強い方だとは思うがあいつらには敵わんしな」
「そうだな、悔しいが仕方ないだろう」
「魔物の方も強いな、何て言う名前だ?」
「ちょっと待ってろ…………ら、トゥい、ラトゥイだな」
「相変わらずスゲーなお前の視力。……口の動きから読んだんだろう?」
「ご名答。あいつらが喋っててくれてなかったら解らなかったよ」
「それにしてもスゲー連携だよなぁ」
少女たちが素晴らしいコンビネーションアタックを決めて魔物を攻撃している間一人の男は、ただ立ち尽くしているだけだった。
「今日は男は動かないんだな」
「ああ、そうみたいだ。たしか世界最強の魔法を使えるんだっけ?」
「なのに今日は一歩も動かないなんてな」
「少女たちの訓練とか?」
「そうかもなでも……いつもはたまにカバーとかに入っているけど今日はそれすらしないぜ。ほら、またダメージ喰らった」
次の瞬間轟音が鳴り響くとともに一軒の民家が崩れ落ちた。
「おいおい大丈夫かよ。まだ動かないのか男は?」
「お、やっと動いたぜ」
「ってあれ?闇魔法特有の構えじゃ……」
俺の予想は見事的中した。闇魔法は例えあの一家であっても見逃せない。普通の村人だったら見逃すかも知れないが俺にも見逃せない理由があるのだ。
「黒魔法は禁忌魔法じゃなかったか?しかも今のは《ダークネスゾーン》だよな?」
「ああ、そうだ禁忌魔法は使用を禁じられているはず、使用しただけで重罪だ……まさかあいつが黒魔法使いだったとはな」
「俺も予想外だ。だが、俺たちは仕事を優先しなければならないみたいだな……頼りにしてるぜ相棒」
「ああ、俺たちもやっと組織の仕事ができるわけか……」
「そういうことは迂闊に人前で言うなよ、もしかしたら俺が偽者かも知れねぇだろ?」
「そうだな。よし、ちょっくら仕事しますかね」
そう言うと俺はおもむろに立ち上がり、彼……アラン・ルーカスに向かって疾風の如く走り寄った。
そうして俺は目の前にいるかつての友人であるアランの手を取った。
……死んではいないが意識はないようだ。よし、このまま逮捕するか。
「アラン・ルーカス!!禁忌魔法使用の罪で逮捕する!!」
誰にも聞こえていないだろうが、あの台詞を言わないとやりとげた感じがしないから言わせてもらう。
「おい!!速く戻ってこい!!もう転送陣は用意できているぞ」
「オーケーオーケー」
再び、疾風の如く駆け出した。そのとき……
「待ちなさい!!アランをどこに連れてくの!!」
「おっと、たしかあんたは……リーナ・ルークスだっけかすまんなこれは仕事なんだ」
「そんな……何でアランを……」
「あんたも魔法使いならわかるだろ?今のあいつから別の気配が漂ってるのが」
「そうだけど、でも……でもっ!!」
「残念ながら君たちが俺らに歯向かうことはできないよ」
おれは懐から王都の騎士団員の証を取り出し、彼女に見せつけた。
「王により、黒魔法使いを見つけ次第逮捕するように命じられている、アラン・ルーカスは黒魔法を使ったため、逮捕しなければならない」
「何で、何でよ!アランを返してよ!!」
リーナは涙を流しながら嗚咽とともにただひたすら返してと叫ぶことしかできなかった。
「では、これにて撤収する」
アランを抱えたまま物凄い勢いで地面を蹴り出した。
後ろの方ではまだ、泣き叫ぶ声が聞こえている。
◇ ◇ ◇ ◇
しばらくすると、洞窟にたどりついた。
この洞窟は入り口がツタで隠れるようになっている秘密基地みたいな感じの洞窟だ。元々は魔物の巣であるこの洞窟は入ってまずちょっとした玄関ぐらいのスペースがあり、通路の先に4つほどの部屋がある。
俺はその中のひとつである簡易的な監獄の中にアランを寝かせた。
そのあと同じ洞窟内の別の部屋のこれまた簡易的な椅子にまたがり味気のない地下水を汲んできて、それを飲みながら二人で気楽におしゃべりを始めた。
「いやー危なかったなー」
「ほんとだよ!なんで騎士団とか嘘ついたんだよ!俺が咄嗟に《威圧》を発動させたから良かったものの、もしばれたら俺たちはあの子らに負けてたぞ!!それに、あの騎士団員の証は……どこから盗ってきた?」
「べ、別に盗ってきてないし!?ちょーっと借りてるだけだし!?」
「あーはいはい、そう言うことにしときますよ」
「よしよし、ばらしたら俺が死ぬからやめろよなとりあえずアランが起きるまでは自由時間だから、適当にやってろ」
「ういうい、じゃっ解散!」
相棒はそう言うとさっさとこの薄暗い洞窟を出ていってしまった。こういう時間が俺は一番苦手だ。一人でいるのが嫌でで常に誰かと喋っていたい性だからだ。
「アランをおこしに行きますか」
誰もいないが言葉に出してみる。無論返事は返って来ないが監獄の方からがさがさと音が聞こえた。もう起きたのかと思いながら、のんびりと監獄の方に向かっていると……
「くそっ、どこだ!!」
ーーそこにアランはいなかった。ーー