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スキル集め始めました  作者: 桜音羽瑠
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第七話 連携と恐怖と

「やあっ!」

「はあっ!」

「グルアァァァ!!」


目の前で繰り広げられている戦いを俺は呆然と、ただ見ていることしか出来ない。

 ミニモとアイリスが魔法を繰り出すと、負けじと魔物(ラトゥイと言うらしい)がブレスで相殺し、ラトゥイがその体の毛を飛ばすメルモが盾、リーナが魔法でガードする。


「【ホワイトフレア】!!」


 白く輝く業火が、リーナの詠唱によって持っている短い杖から扇状に放たれる。範囲は狭いようだが、確実に一本ずつ、ラトゥイの毛を燃やしていってる。なんといってもその炎、白く輝くほうせきのような輝きは、この戦場においてもダイヤモンド輝いている。


「【ソウルバーン】!!」


 ホワイトフレアの残り火を媒体にラトゥイを中心に大規模の爆発を起こしたのはアイリス。


「……【マッドホール】」


 爆発で削れた土を巧みに操り、これまたラトゥイを中心に落とし穴を作ったのはミニモ。


「ガルアァァァ」


 ラトゥイが落とし穴を這い上がって来るまでの間は各自全力で攻撃を行っていたが不意にラトゥイが勢い良く起き上がり、こちらに突進してきた。


「【ファランクス】!!」


 ラトゥイの突進を一人で止めたのは大きな盾と少しの魔法を使ったメルモ。


「今よ!!」

「……動きは止める」

「いっけえぇぇアタックだー!!」


 恐るべし連携を見せつけ攻めも、守りもリーナたちの方が、1枚上手の様だが、時たま、隙を見せることがあり、ラトゥイがその隙を突いて大きなダメージを与えているので結局、押されぎみになっている。


「お姉ちゃん、このままじゃ負けるよ!」

「わかってる、……ミニモ次で決めるわよ」


 ミニモとアイリスが、長い魔法の詠唱に入ったその時。


「ガルアァァァ……ああ……アブぉゲリュ……グハァ……」


 不可解なな泣き声を上げたラトゥイが血を吐き出した。それと同時に、今までは黒だったラトゥイの目は急に赤色になっていた。

 動きが急に俊敏になった。今まで単調にブレス攻撃と体毛たいもう飛ばしを繰り返していたラトゥイが、二つを同時に繰り出した。


 ……その時、ラトゥイのそばから飛び出した怪しい黒い影を俺は見逃さなかったが、追いかける勇気もなかった。


「何があったの!?とにかく、防ぎきれない!逃げて!」


 みんなが、それぞれ魔法を使いながら後方へ退避する。狭い町の外れでの、この戦闘は……恐らく全ての住民の命が掛かってる。

 そう思った理由は単純明快。、暫く時間が経ったのに援軍の一人も来やしないからだ。恐らく、リーナたちが最高戦力なのだろう。

 暫く攻撃を避け続けていると、再びブレスと体毛たいもう飛ばしの同時攻撃を仕掛けてきた。攻撃を防ぐために全員で魔法の盾を構えていた所に大きな音が響きわたった。



「ドドドドドドド」



 ……響いたのは魔法と盾の防壁に攻撃が当たる音ではなく、民家が倒れる音だった。

 戦闘の途中からキシキシと音をたてていた民家は、辺り一面に響きわたる轟音をあげながら倒れた。民家は、リーナたちに悲鳴をあげる隙も与えず、みんなを下敷きにする。



「嘘……だろ?」



 倒れた民家は、二階建ての木造だった。今までの戦闘で、土台メチャクチャになって倒れてしまったようだ。

 みんなを助けようと瓦礫をどかそうとするが、木造のはずなのに、とても重い木で、非力な力じゃとても持ち上げることはできない。



「グルアァァァ!!」



 うおおおお!!本格的にヤバいいいい!!考えろー、考えろー、俺!!何かいい方法、この状況を打開できる方法はー!!……



 …………ん?そうだ!!あれだ!!あれにかけるしかない。不確定要素が多すぎるが、ここは精一杯足掻くことにしよう!!あんなに頑張ってみんなが戦ってたのに、男が下がってては示しがつかない。

 という理由で自分を納得させ、切り札の準備をした。



 ……彼、イサキフミヤは正義感の強い男であった。困ってる人がいたら放っておけない。だが素直になれず、もったいない生き方をしていた。自分が親切だということを認めようとしない。それ故に、今この状況でも、正当な理由を探した。

 最初から助けることは彼の頭のなかでは決まっていた。だが動けなかった。怖かった。大きな魔物を前にして、一歩も動くことができなかった。それが悔しかった。情けなかった。



 ……もう行ける俺も戦える!!……だがまずは、あいつの力が必要だ。

『頼むー気付けー!!この思いよ、天に届けー!!』

 ラブコメみたいな掛け声で必死に懇願する。



『呼んだ?』

『ああ呼んだ。おいディアナ、《ダークネスゾーン》てどんな魔法だ?』

『相手を闇で包み人間の五感を失わせつつ闇に葬る魔法よ……最も、闇に葬るには、物凄い魔力が必要だから、ほとんど使われないし、そもそも黒魔法なんて使ったら非難されるわよ』

『非難とかはどうでもいいから俺はやるぜってかそれくらい教えろよな!!……でもありがとな』

『ふみちゃんがきかなかったからよ……今回も運がよかったわね』

 ここまでの会話をするのに一秒もかからなかったらしい。集中力の賜物だろうか。

 内心ディアナは常に見張っているのではないかという疑問を覚えたが今はそれも後回しだ。



「いくぜっ!!ダークネスゾーン!!」



 思い付きで放った呪文は大きな魔物の体を包み込む闇となり、魔物を包んだまま、球状の形になり小さくなっていく。



「うおォォらァぁぁぁ!!いっけぇぇぇ!!」



 黒魔法《ダークネスゾーン》相手の五感を奪い、本来はその間に対象を見方に斬ってもらう使い方をするが、高い魔力をもってすれば、記憶や、魂そのものを奪うことができる、禁止黒魔法の一つ。

 これをもって、黒魔術士ドルンは大勢の人の記憶を奪った。



『うっはぁ、なんかごっそ、りもってか、れた気がす、る……ぜ』



 無事にラトゥイを消滅させた俺はそこに倒れて込んでしまった。

 がさがさと音がする。声が聞こえる。だが動くことはできない。



「ぉー……」

「……にぃ……」



 誰かの声が聞こえた気がした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 目が覚めたそこは暗くてじめじめしてる、狭くてとても冷たい所だった。

 






「途中のナレーションっぽいやつ何だったんだろう」

『私よ』

「やっぱりね、ってかあのナレーション恥ずかしいだろうが」

『ええ、わざとよ』

「お前ほんっと性格悪いな!!」

『てへっ』

「もう突っ込むのやめるわ」

『ええ~!?』


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