第六話 拷問と魔物と
……は?なんで……だよ?わかるのか?偽物だってこと……
「アラン……いや偽物、あなたは誰?」
「わたしたち全員偽物だってわかってたのよ」
「……わたしたちの魔法があれば無言で意思を伝えることも簡単」
「偽物はお兄ちゃんでもぶっ飛ばす」
こいつら、かなり鋭いな。ってかディアナさーんばれてますよー助けてくださいよー!
『ゴメンね、初めてだから、ミスっちゃった。てへっ』
『なんか聞こえたし!?ってか頭の中なら干渉できるのかよ!』
『いいえ、今回はたまたま覗いてただけよ。あと、忙しいからもう行くわね』
くっそ、あてにならねぇ。あの駄女神絶対に後で一発かましてやる
……さて、どうしたものか。まだしらばっくれるか。とりあえず、まだ正体は、ばらしたらダメな気がする。
「いや、なんでそうなるんだよ。俺が偽物なわけないだろ?俺は、アランだ」
「いいや、残念だけど、もし本当に記憶を失ってるだけだったら、そこで自分がアランだと主張するメリットがないわ。まぁ、本能的にそう思ってるのかも知れないけど、アランを為ってないといけない訳があるはずよ。」
うう、もう逃げ場もななくなって来ているし、リーナの目がどんどん厳しくなっていく。しらばっくれるのはやめた方がいいのか。言葉だけのはずなのにものすごい圧力がある。
仕方ないよな、話してみて死ぬならそこまでだ、惜しいけど別の異世界に行こう。
「……みんな騙して悪かった。」
かぁーらぁーのぉー
「……アランを奪って本当にすみませんでしたあああぁぁぁ!!悪気はなかったんだあああぁぁぁ!!」
決まれえええぇぇぇ!!渾身の土下座!!
「へー、やっぱりそうだったんだ。それは後で聞くとして、あんたは結局何者なの?」
決まんなかったよ。やべぇよ。殺気がプンプンただよってるよ。
「お、俺は……」
「……わたし、もう我慢できない」
「わたしも」
「ちょっ、お前ら、やめっ、あーーーー」
◇ ◇ ◇ ◇
……目が覚めたら両手両足が拘束されていた。まるで牢獄のようなところで……
……どうやら、生かされてたらしい。死んでもまぁいいかーぐらいには思ってたけど、生き残ったなら最後までやる。そう決めていた。
「目が覚めたようね。さっきは早まっちゃったけど、今度はいろいろ聞かせてもらおうかしら」
まだ、視界が完全に戻ってないが、目の前に居るのは……リーナか?
「ごめん、視界がまだおぼつかないんだ。リーナなのか?」
「ええ、リーナで合ってるわ。それより、あなたは何者なの?」
そ、そうだ、確か俺は……質問を受けてて、そして……それから……拘束されたのか?両手に着いてるものをみて確信する。拘束されているのだと。
疲れたし、スキルもらえればいいし、正直に話して早く解放してもらおう。下手したら死ぬかも知れないが。
もちろん死ぬのは怖いが、今、目の前にいる女性とは思えない威圧感を放ってるリーナの方がよっぽど怖い。
「俺は……伊佐木……イサキフミヤ」
「フミヤ……ね。で、名前はいいけどどこから来たの?誰の指示でこんなことをやってたの?」
「どこからって言われると、東の島国からって言うしかないね。誰の指示って言われると……神?様?かな?」
「なんで最後が疑問形かわかんないけど、そう……神様ね。わかったわ。次は、目的を教えてもらおうかしら。」
段々と顔が怖く成っていく、うう、いじめないでくれー。
それにしても不自然だ、なんで深く聞いてこない?
「も、目的……か、信じてもらえるかわかんないけど、アランのスキルを貰いに来たって言ったら信じる?」
「……アランのスキルね、成る程この大陸トップの魔法が狙い?」
「は?、アランってそんなすごい奴だったの!?」
アランスゲーな、なんかこう、隕石ドカーンとかもできるんだろうか。その割にはリーナを鑑定できなかったけどな。
「そんなことも知らないのね。はぁ、あなたの目的が、全くわからないわ」
「そういわれてもだな……詳しく言うと頭おかしい認定されちまうからからな」
「そう……ならいいわ」
やけにあっさりとしているな。俺の答えに対してあまり深く突っ込んで来ないし目的は不明。しかも質問ももう止まってしまった。
「う~ん、もういいわ、ミニモ出てきなさい」
ミニモって、確か、妹の方だった気がする。流石に、着替えて来ているが、何故ここにいるんだ?
「……リーナさん、フミヤは、嘘は付いてない」
「やっぱりそうなのね、じ、じゃあ神様云々の話も本当だったの?」
「……うん嘘は付いてないけどちょっと誤魔化してた」
「やっぱりそうなのね」
「あのー、説明していただけると助かるんですが……」
「……わたし、嘘ついてる人がわかる。フミヤからはほとんど感じられなかった」
は?卑怯だろぉ?そんなの強すぎるだろ。
「っと言うわけで、試させていただきましたー!!本当ならここで、全部嘘をついたフミヤに、鉄拳制裁を喰らわすとこだったんだけどなー残念ながら嘘は付いてないかーいろいろ……誤魔化してるみたいだけど」
「鉄拳とかやめてね!?」
あぶねぇ、少しでも引っ掛かってたら危なかったってわけか、変な質問が飛んで来なくて助かったぜ。まぁ、誤魔化したのはばれたがまぁそこは妥協点だな。
「とりあえず……」
そう言って話を進めようとした瞬間。物凄い騒音が聞こえた。
「グガアアアアアアァァァァァァ」
「ちっ、魔物ね、今来るとは……撃退するわ。ほら、行くわよ」
「えっちょっ」
そのまま、リーナに引きずられながら外へ出る。なんて力の強い女の子なんだ。これが、レベル差ってやつか?ステータスはアラン+俺のはずだが。
外に出るや否や、目の前に魔物が見えた。体躯は俺の身長を悠に越えていて、金色の毛が逆立っている狼のような生物だ。どこか神秘的なものすら感じるとても美しい魔物だった。
「で、でけぇ」
「そんなことより倒すわよ!」
「……《ニブルシャープ》」
おいおい、いきなり魔法かよ。
空中に何本もの鋭い氷の刃が作り出され、それが一斉に魔物に放たれる。太陽の光を反射させた氷の刃は美しく輝いていた。
「ガガグウオオオォォ」
作り出された氷の刃と金色の毛がぶつかる。
貫通すると思われていた氷の刃は硬化した毛に、あっさりと弾かれてしまった。辺りに散らばる氷の欠片も、また輝いていた。
……初めて見た魔法はとてもとても美しかった。
「……こいつ攻撃魔法が効かないみたい」
「っく、それなら、アラン!!光魔法で目を眩ませて!!」
「って言われてもできねぇよ!?」
「あっ、もうっ役立たずなんだから!」
タッタッタッと音が聞こえたと同時に目の前に二つの輝きが放たれる。
「っっっ!!」
「ガギイイイイイイイィ」
目が、目がああああああ!!……?と俺が目を庇うのと同時に、魔物が咆哮をあげている。
目が、みえない……って見えてる?どうやら自然に魔法が発動して、光をカットしたようだ。何となくだが、感覚でわかる。
「やっほー!おっまたせー」
「ふふふ、久しぶりの戦闘ね」
どうやら全員集まったようだ。
メンバーは美少女4人と役立たず1人。




