第四話 転生と面接と
「弱みを握った俺は、普段の数倍ウザイぜ(キリッ)」って言ってやった。
「じゃ、じゃあ転生の前に最終確認するわね」
俺に弱味を握られた瞬間におとなしくなる。神の威厳なんてあってないもんなんじゃないかと思っていたら長い説明を聞くことになった。長すぎる内容を大まかに分けると8つあった。
・救う異世界は5つ。
・5つの世界を1、2、3……と、順番に行くことになる。
・次の世界に行く条件は死ぬか一週間経つか。
・その、次に行く時に1つだけ持ってくスキルを選ぶ。
・借りる体の元々の記憶はなくなる。
・ステータスは借りる体+自分のステータスになる。
・1つの世界に行ってる時は他の世界の時は止まる。
・体を借りる人の意識はパラレルワールドに飛ばされる。
と、大体こんな感じだった。なんか知らないことが混ざってる説明の仕事しろ。だが、やはり最終目標は魔王討伐みたいだ。すべての世界に魔王がいるのか?なんか途中から飽きそうだな。
「オーケー、大体わかった。……いいとこ飛ばせよな」
「それはふみちゃんの運次第だけどね」
やはりうまくはいかないか……と言いたいところだが、俺の運は普通の人よりは高いらしい。少しの可能性に掛けよう。
「じゃあいくわね。えーい!!」
「飛ばすときも「えーい」かよ!!!」
ぎゅるりんぎゅるりんきゅいーん
やる気のない効果音を聴いたのを最後に少し意識が途切れる。
◇ ◇ ◇ ◇
もう何度目だろうか、この深い眠りから覚めるような感覚は(デジャヴ)うん。
今ならわかる。これは7回目の転生。2回目の転生で1回来た世界。牢屋にいてそのまま処刑された時だ。なんか縁起が悪いな。っとそろそろ視界が戻って……
「ねぇあんた、なにボーッとしてるの?」
「ああ、悪い。ちょっとボーッとしててな」
俺の目の前には人が座っている。それに向かい合って俺も座っている。今までに一回もなかったパターンだ。しかも女の子。そしてなんと言っても……可愛い。美女だ。綺麗に整った顔立ちで紅に輝く髪と目そして……スタイルよし。これぞ異世界って感じだ。神様ありがとう……ってディアナだったな、今回ばかりは感謝する。
辺りは面接という割には現代っぽくなく、いかにも中世風のそこそこ値段の高そうなものがインテリアにあるだけ。窓の外から見える景色で判断する限り、2階にいるみたいだ。ものを見るだけでいい会社だというのがわかる。
「仮にも面接中なんだからシャキッとしなさいよね。アラン」
……
…………
…………………
「ねぇ?聴いてんの?」
「は、はい!?」
どうやら俺の名前はアランらしい。面接がどうとか言ってたが、俺まだ働けませんよ?っていうか面接官にしては馴れ馴れしい。
「お、おうごめんまたボーッとしてた」
「もうっ、大丈夫なの?……うんと、一応面接だし名前からね」
「あ、アランです」
「んじゃ、年齢と出身は?」
不味い。わかんねぇ。どうしよ…………あ!
俺はこっそり《鑑定》を掛けた。年齢はわかった16だ。けど……出身なんて載ってねーよ。それくらいわかれよぉ。……ちなみに前の女の子には『鑑定』はかかんなかった。俺より強いのか、はぁ。
「16歳です。出身は……えーと、そのー、わかんない……です」
「はぁ?わかんないってどういうことよ?忘れたの?私たちが育ったここの地名をっていうかさっきからおかしいけど……もしかしてこれもあの黒魔術士の事件の影響なの!?」
聞き捨てならないことが聞こえてきましたよ!?黒魔術士の事件ってたぶんヤバめのやつだろ。黒魔術士ってだけでもヤバいのにそれが事件を起こすとか……うん、絶対にヤバい。
「なぁ、その黒魔術士の事件ってなんなの?」
「ええっ!そんなことまで忘れたの?……でもあの事件の被害者ならわかんないか」
「一人で納得しないで説明してくれません?」
「わかったわ。あの事件は、ある山の外れにすんでいた黒魔術士が自分の魔力を底上げする魔法に失敗して、その魔術士のスペシャルスキルの《ブレインジャック》が暴走して広範囲にわたって記憶喪失者が出ているっていう事件よ」
なんて都合のいい事件なんだ。これで俺の意識が宿る前の記憶がないのもなんもおかしくないということになるのか。そして、思ったよりかは、ましな事件だった。こう、世界が潰される的なやつだと思ってた。
それにしても今回はうまく行き過ぎている気がする。
「ちなみにそのあと、黒魔術士が処刑されてからも被害は続いてるらしいわ」
ん?待てよ?処刑ってまさかなんか身に覚えがあるんだがそうなんだろうか、いや、違っててほしい。二回目に入った体ってもしかして……いや違う。うん。違うそう信じることにする。
「もしかして、その黒魔術士の得意魔法って【ダークネスゾーン】だったりする?」
「ええ、そうよ。【ブレインジャック】も実質、【ダークネスゾーン】の派生技だしねってなんでわかるの?」
はいっ前に俺が体借りたやつで入ったやつで確定!
とまではいかないけど結構確率増えたな。
「まぁそれはどうでもいいわ。記憶がなくなったんなら面接どころじゃないわね。とりあえず家に帰りましょうか?」
「ちょっと待って家に帰るって、言っても君の家と俺の家って違うとこなんじゃないの?」
「なにいってんのよ。あ、記憶ないんだっけ、ほら、あそこよ、あの2つ並んでる家。右が私で、左がアランね。っていうか私の名前まで忘れたの?私の名前はリーナよ。ほら、覚えた?」
自分の知ってる人の記憶がなくなったっていうのにやけにあっさりしている。それにこいつの反応からするに、小さい頃からなかがよかった気がする。
俺だったら幼なじみの記憶が消えると凄い動揺すると思う。だって思い出が消える訳だろ?それはなんか悲しいし、嫌だ。
「お、おう覚えた。よろしくなリーナ」
「うんっ、わかったなら早く行くよ!」
俺とリーナは勢いよく面接室から飛び出した。なんか忙しい子だな。これからが大変そうだ。
「そう言えばなんで黒魔術士から【ダークネスゾーン】のスキルもらったんだ?他にもいろいろなスキルがはあったずじゃ……」←フミヤ(アラン)
「ん?その時は私が適当に選んでおいたわよ」←ディアナ
「俺に選ばせろやああぁぁぁぁ!!!」←怒りのフミヤ(アラン)