第二話 世界と説明と
怒りをぶちまけた俺の判断が間違ってるとは思わない。だが、少しだけ冷静になればよかったと思う。少しだけな、少しだけ。
あのあとの口論は小一時間にも及んだ。お互い一歩も譲らず、せーので謝ろうと言う約束を、二人とも破るというような、実に子供じみた喧嘩だった。
そのあと神様のスーパーパワー?的なものによって強制的に土下座&謝罪の言葉を述べさせられた。ずるい。最初からそれを使えばよかったのにとも思う。
「忘れてたけどさ、あんたの名前ってなんだ?」
「ん?私は、ディアナよ」
ディアナ……悪くない。異世界チックな名前だな。
「オーケーわかった。んで、結局なんで俺にこの世界を救ってほしいんだ?」
「魔王が誕生したからよ」
「最初っからそう言えばいいのにな、って今の俺じゃ魔王どころか、したっぱにも一秒で殺される自信あるぜ」
「それを堂々と言う辺りはふみちゃんのいいところだと思うけどね。まぁそれはいいとして、魔王でも倒せるようなすごい能力をふみちゃんに授けたはずなんだけど、話も聞かずに出ていくからね、説明もできたもんじゃないよ」
勝手に飛び出したことは悪いとは思うが、神なんだから、それくらい止めろよなと言いたいところだが、今はそのスキルとやらが気になる。
「んで、その能力とは?」
「……スキル継承の能力よ、スキルストックとか、スキル盗りとも言うわね。ひとからスキルを受け継ぐ能力よ」
「スキルを受け継ぐ……だと。なんかかっこいい。ん?でもスキル盗りってどういうことだ?スキルを受け継ぐと、ここまではいいんだが、スキル盗りってどゆこと?」
ありのままの疑問を質問する。スキルを盗るって見て盗むってことなのか?自分でいろいろ考えてみるがこれといった答えは出てこない。
「そうね。その辺のせつめいもしなきゃいけないようね。……まず、ふみちゃんは異世界に転生してることはわかってるんだよね?」
「おう。それはわかってるぞ。」
「じゃあ、自分がどのような状態で転生してるかわかってる?ほら、なんかいつもより軽いなーとか思ったりしなかった?他に、ちょーっと体つきが違ったり、声が低かったりとか」
何を言っている俺は俺だぞ。と心のなかで反論する。
「は?どういうこ……え、嘘?マジか、マジなのか?」
俺の予想が正しければ、ものすごく申し訳ない+不安なんだが。
「君がどういう解釈をしたかは知らないけど多分思ってる通りだと思うよ。ふみちゃんは、ふみちゃん以外のひとの体だけを借りていることになっているのよ」
「……なるほど。そういうことかやっと理解したよ。だから、急に死刑台に立たされて殺されたこともあったってわけね。」
なにもしてないのに殺された理由がやっとわかった。その怒りをぶつけるかのように、そこの自称女神に目力で無言の圧力をかける。
「まぁ、すぐ死ぬようなとこに送ったのは早く戻ってきて話を聞かせるためでもあったもの。だからそれは許してね。テヘッ」
「最後の言葉がなきゃ、素直に許せたんだが、ってかさっき転移門がどうとか言ってたよね?それを閉じるとかできなかったの?」
……
…………
………………
「あっ!その手が……」
「うん。こいつほんとに使えないらしい」
思わず口に出した。
ーーしばらくの間喧嘩ーー
言うまでもなくスーパーパワー?で土下座&謝罪の言葉をさせられた。くそう。いつか見返してやる。
「じゃあ、話を戻すわね。さっきのことで、自分が他のひとの体に移っていることがわかったでしょう。では、なぜそんなことをするのでしょうか?」
「んー、俺がその世界で言う魔王に容姿が似てるとか?いや、それだったら、別の人に転生してもらうよな?」
「そうだね。別にふみちゃんじゃなくても、代わりはたくさんいるもんね?」
こいつ、ふみちゃんとか呼ぶわりに、罵倒したりして、仲良くしたいのか違うのかわかんねぇな。
まぁ、個人的には、あまりお近づきになりたくはないタイプの人だがな。
「そ、そうだな。俺の代わりはいくらでもいる。じゃあ、なんで俺を選んだんだ?」
「そうね、気分?かしらね。まぁ、それはおいといてなんでふみちゃんが別の人に移って転生しているかというとね。スキル継承のためなのよ。」
「スキル継承のため……か、なんでスキル継承のためになるんだ?」
「それはスキル継承にも条件があるからよ。スキル継承をするためには、その人の魔力の流れを感じないといけないの。それで、魔力の流れを感じるのに一番手っ取り早いのが、っていうかその人自身になっちゃえば魔力の流れを感じることができるのよ」
「なるほど。直接その人になってスキルを受け継いじゃおうっていうことなのか?なんかすごい申し訳ないんだが」
俺が別の人に移ってるてことは、その俺に体をとられた人の人生を強制的に奪ってるってことになるよな。本当にこんなことをしてもいいのだろうか?
「申し訳ないって言ったけど、そこは安心して。ふみちゃんが借りる人の世界にパラレルワールドを創っているからそっちではいままで通り時間が流れるはずよ」
「……とりあえず了解した。その辺はよくわかんないけどまぁいいや、それより俺、結構スキルゲットしてるんじゃない?」
「あー、そこも説明してなかったわね。魔力の流れを感じることができるのは一週間に一度。もしくは、死ぬときってとこね。他にもあるけど基本はこんなところよそして、一回のスキル継承の時にゲットできるスキルは1つよ」
何故に一週間に一度?よくわからんな。
「つまり、六回とも一日以内に死んだ俺って、持ってるスキルは6個ってこと?」
「まぁ、普通ならね。」
「ん?普通なら?」
「あなたが持ってるスキルは現在1個。一人以外はスキルなしだったみたいね。」
「なん……だと」
スキルなしとか悲しすぎかよ。まぁそれもそうか。なんかスキルを持ってればそう簡単に死ぬことはないだろう。
「じゃ、じゃあ、そのスキルってどういうのか教えてください。」
「《ダークネスゾーン》……よ」
なんかヤバそうな名前だ。