第一話 俺と女神と
目の前は、真っ白でなにも見えない。長いような短いような時間が流れている。
右も左も、上も下もわからない。
……ああ、俺…死んだ…のか?
「……ーぃ」
「…ぉーい」
「おーーい」
「おいっ!起きろーー!!!」
「はうあっ!?」
「やっと起きたのね!何回声かけたと思ってるの!!」
親……じゃないよな?なんか声違うし……
そう言えば、今は俺は異世界にいるんだったな。そして確か……
ーー死んだ気がする!!ーー
「なぁ?また、俺死んだのか?」
とりあえず声の主に質問する。
我ながら、何を言ってるんだこいつはって感じである。現代でそれを言ったら頭おかしい認定されるだろう。
「うんっ!見事な死に様立ったよ」
「くっそ、その言い方ムカつくな」
このムカッとする感覚で思い出した……
俺、異世界を救うために呼ばれたんだった。ん?、ちょっと待てよ。じゃあおかしくないか?俺、さっきも死んだよな?、勇者としては不遇じゃね?
「なぁ、俺って、この世界を救うために呼ばれたんだよな?」
多少の怒りとともに吐き出す。
「うん?そうだけど」
「そうだけどじゃねーよ!世界を救うために呼ばれた俺が、なんであんなにあっさりやられてるんだよ!」
「君が弱いからじゃないかな?」
「っぐぅ、そ、それは否定できないけど、俺を送り込む場所が明らかにおかしいだろーが!!あるときは、広い草原に一人きり、またあるときは牢屋のなか、そしてさっきは、ジャングルにこれまた一人……って、世界は俺を嫌っているのか?」
「いやぁ、それは、君が話を聞かないで勝手に転移門に入ったから、適当な場所に飛ばしただけだよ。話も聞かずに勝手に行った君の方が悪いと思うな」
確かに俺も悪かったと思う。だが、この適当さにはキレそうだ、なんだこの適当さは、だがなんとかその気持ちを押さえて……
「んじゃあ、話を聞くから次はいいところに飛ばせよな」
「えー、誠意が足りないよ、ふーみちゃん」
ふみちゃんって言うな!!!(心の声)
「あー、えと、私に話を聞かせてください」
少し間を置いて……
「お願いしますは?」
プツンッ
堪忍袋の緒がキレたとでも言うのだろうか、キレやすい体質ではないはずなのだが、しかし立場上では、相手の方が上だ。しかもキレると面倒臭いことになるだろう。
ここで素直に従がわなければなにも始まらないと……意を決して盛大に顔をひきつらせながら、
「お、お願いします!!」
言い切った。これ以上ない屈辱を味わった気分だ。
「ふむ、いいでしょう。じゃあまず、ふみちゃんがここに呼ばれた理由は、わかるかな?」
ふみちゃんって言うのヤメロ(心の声)
「……えーと、確かこの世界に来る前は事故で死んだような……」
「うん、正解。んで私がここ、君たちが言う、いわゆる異世界につれてきて来たわけんだけど、転生できるって言ったらふみちゃんが、話も聞かずに転移門に飛び込んでいったんだよね?」
また、ふみちゃんって……もうふみちゃんでいいや。(心のry)
「……はい、その節は大変ご迷惑をお掛けしました」
「まぁ、過ぎたことはいいとして、ふみちゃんをここに連れてきたのはこの世界たちを救ってもらうためよ」
なんかさらっとすごいことを言われた気がする。世界たちってなんかおかしいだろ。やはり頭おかしいのか?
「……世界たち?世界たちって……もしかして俺って数百個も世界を救わないといけないわけなの?」
「いやいや、そんな数、ふみちゃんには無理だろうしね、たったの5つよ」
どうやら俺は複数の世界を相手にしないといけないらしい。めんどくさいの極みである。5つでも多いと俺は思う。
「5つでも結構多いと思うんだが……気にしたら負けですよね?」
「うんうん、わかってるじゃない。」
「じゃあその5つの世界とやらとかについて説明をお願いします」
「そうね……まずは目的からね。君にやってもらいたいことはただ1つ……」
ゴクリ
「私たちの世界を救ってもらうことよ!!」
「だからその理由を説明しろやあああぁぁぁ!!!!」
俺の怒りは絶対に正しい