第7色
そいやっ!
リリィ「次はどこに行く?」
撫子「一度、平原に出るぞ。情報共有は向こうに行きながらでもできる。」
リリィ「そうだね、マーカスもそれでいい?」
マーカス「構わないよ。」
平原へ続く南通りを歩きつつ私たちは話す。
リリィ「私はリリィ。えと、マーカス、は自分の意思で仲間になったんだよね? このアフロに何かされてたりはしないんだよね?」
撫子「おい、リリィ。俺を何だと思ってるんだ・・。」
リリィ「変人、どう考えても。」
ゆー「ですねー。あ、私はゆーと申します。」
私たちのやり取りを見て、マーカスは笑っている。
リリィ「で、土下座はいったい何があったんだ?」
マーカス「うーん・・・、僕からはちょっと言いにくいから。アフロ君? 代わりに説明頼めるかな?」
撫子「誰がアフロだ! ってまだ名乗ってなかったか、俺は撫子。名前についてはあまり深く触れてくれるな。それでマーカス、そのままを言っていいんだな?」
(そのまま・・? 何だろう、いやな予感が・・。)
撫子「あー、お前たち二人が図書館に入った後、俺はNPCから情報を集めてたんだ。その時にこいつが通りかかって、偶然目が合った。俺の勘だが、こいつはできる・・と感じたんだが。で、仲間に勧誘しようと近づいたらいきなり土下座されて、『僕を全力で踏んでくれぇ!』だ。仲間になるなら良いぞって言って今に至る。」
沈黙が訪れる。今のマーカスの態度からは信じられない言葉だったが、一切否定する様子のない彼の存在が、それを真実だと私に実感させる。
リリィ「・・一応説明して、マーカス。ちょっと頭がついていけない。」
マーカス「えっと、すごく言いにくいけど。実は時々・・・そんな風になっちゃうんだ。原因は分からないんだけどね。」
ゆー「うわー、すごい変態だ。マゾってやつですか?」
マーカス「うん。自分でも異常なのはわかってるんだけど、どうしようもなくて。そのせいでこのゲームが始まってからどの人も逃げていっちゃって・・。撫子君の時ももうだめだって思ったんだけど、彼は何でか大丈夫だったんだ。」
(いや、あんたどうやってリアルで生活してんの? 怖すぎる・・。)
ゆー「まぁ、撫子さんも変態さんですからね。」
撫子「そうだな、っておい。誰が変態だ。俺はこいつほどひどくは無いだろ、無いよな?」
リリィ「んー、よくわかったような、わからないような。今はもう大丈夫なんだよね?」
マーカス「うん、大丈夫。」
撫子「というわけだ、俺は悪くなかっただろ、なぁ?」
リリィ「はいはい、分かったから、ごめん。」
そうこうしているうちに、平原への門の前に着いた。
リリィ「まぁ、これからは仲間ってことだから。よろしくね、マーカス。」
ゆー「私もよろしくです、マーカスさん。」
撫子「俺もまだ言ってなかったな。よろしくな、マーカス。」
マーカス「あ、ありがとう。こちらこそよろしく。」
マーカスは涙目になりながら私たちに応える。
リリィ「じゃ、検証開始か。撫子、私たちはどうしたらいい?」
撫子「んー、二組に分かれるか。俺とリリィで戦闘の検証、ゆーとマーカスは戦闘で役や技能の獲得を試してくれ。どうも何かの行動がキーになってるみたいなんだが、まだよくわからないからいろいろとやってみみたらいい。」
ゆー「はーい、頑張りますね。私の杖が唸りますよー!」
マーカス「ああ、任せてくれ。」
リリィ「あ、その前にゆー、これ。撫子も、ほい。時間ある時にでも読んでみてね。」
と言って私はゆーに「魔導入門」、撫子に「剣術入門」の本を手渡す。
リリィ「それじゃあ、頑張ってね。」
二人と別れた後、私たちは先へ進む。しばらく進むと、辺りにスライムがちらほら見え始める。
撫子「リリィ、確かここらのモンスターと戦ったことがあるんだよな?」
リリィ「うん。」
撫子「敵はどんな感じだ、簡単に言ってくれ。」
リリィ「スライムは何も考えないでいいくらいに弱いよ。」
撫子「そうか・・・、ちょっと見てろ。」
そう言った後、撫子は急にスライムの群れに走り出す。
撫子「ハッハッハァー、皆殺しにしてやるぜぇー!? 死にたい奴からかかってこい!」
(あぁ、そういえばレベルのこと気にしてたな・・・。自分から突っ込んでかかってこいって、やっぱりあいつ馬鹿だわ・・・。)
私は少し離れたところで実験を始める。
地面に生えている草を何回か採取して、見つめてみる。すると、そのうちの一つが「草」から「薬草」に変化した。
(おお、やった! 期待通り!)
その調子で草をむしっては見つめるを繰り返していると、テキストが表示された。
【技能『観察眼』がレベル2になりました】
リリィ「おーい撫子ー、ちょっとー。」
スライム相手に剣を構えて無双している撫子に声をかける。
リリィ「技能のレベルが上がったよー。」
撫子「そうか、俺はレベル3だぞ。どうだ?! 敬え、ひれ伏せ!」
リリィ「・・・。」
撫子「・・、すまん。何をしてたらレベルが上がったんだ?」
リリィ「草を見つめてた。」
撫子「・・・。ゴミじゃないとダメなのか、いやそんなはずは、でも・・。技能のレベルが上がったのか、てことは・・。」
珍しく撫子が考え事をしている。
リリィ「あと、草の中から薬草が手に入ったよ!」
撫子「おお、それはいいことだ。それは観察眼のおかげか?」
リリィ「うん、そうっぽい。」
撫子「地味だが、意外に有能な技能だな。今は情報が足りないから、取得条件や成長条件はまた後で考えるか。とりあえず、次は戦闘の検証をする。お前も手伝ってくれ。」
リリィ「よーし、まかせろ。」
マーカス君は常識人です、普段は。覚醒マーカス君もすぐにお見えになります、お楽しみに(しないほうが良いです)!
次話の戦闘面はけっこう面倒になりそうですね・・・、次回は字数が多くなってしまうかもしれません。
次回も宜しくお願いします。