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『Colorful Life』  作者: 天野太ユキ
序章
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初めまして、天野コウタと申します。小説を書くどころか、ネットに創作物を投稿すること自体が初めてなのです。

生まれたての小鹿状態ですが、どうぞよろしくお願いします。

「あー、ゲームしたいなあ」


 私は自分の部屋でそうつぶやく。季節は夏、高校生の私にとってちょうど夏休みが始まった時期にあたる。


 女子にしては珍しいかもしれないが、私はゲームが好きだ。ただ、ゲームをするのが好きという意味ではない、私はゲームをしたことなんて無いから。というのも私の両親はゲームが大嫌いで、私は昔からゲームに興味があったが両親は私がゲームをすることを決して許さなかったのだ。


 小学生の頃にこっそりゲーム機を買ったのが見つかってそれを没収されて以来、私はゲームを触ることさえ、ましてプレイなんかできていない。普段は二人とも優しいがことゲームとなると厳しかった。正確には今も厳しいのだが。


 それでさっきのつぶやきだ。


 私は定期的にどうしてもゲームがしたくなる。そんな時に、私はいつもパソコンでゲームの情報を見ることにしている。古いパソコンで、とてもパソコンのゲームができるようなものではないが、唯一の私とゲームを繋ぐ宝物だ。プレイ動画や新しいゲームの宣伝を見ると私の心はいつも慰められた、いつもは。


「あ゛あ゛あ゛あ゛ー、ゲームしたいー」


 この通り、今日の発作――私はこれをゲームしたいしたい病と名付けているのだが、はいつもより一段と酷かった。動画を見ていても耐えられない、むしろ逆効果だ。


 学校が再開するのは9月で、今は7月下旬だ。残りの約40日の休みを私は耐えられる気がしなかった。小学校と中学校では、部活で長期の休みも暇になることはなかったのだが、高校で部活に入らなかったせいで、今年の夏は超が付くほどに暇なのだ。


(私だってもう高校生だ、自分のことぐらい自分で決めたいよ。反抗だ、レジスタンスさ、ゲーム機を買ってやる)


 ゲームしたさにおかしなテンションになっている私は、人生で二度目のゲームを買う決意をする。しかし、そこで大きな問題に気づいてしまう。


(ゲームする時間が無いじゃんか、2人が起きてる間は絶対無理だよね……。だったら夜中は、うーん。寝ないといけないよね)


 一瞬だけ私の心に灯った火はすぐに消えてしまった。そんなことを考えながら、新作ゲームのページを見ていると、一つの宣伝が目に留まった。


《新作VRMMORPG『Colorful Life』ついに始動! リアルの忙しい社会人でも本格的にプレイできる! 詳しくはコチラ!》


 クリックした先のページを読んでみる。


 『Colorful Life』とは、ゲームは好きだがどうしても時間の取れない社会人向けのゲーム。年齢制限はナシ。午前1時から4時までの3時間がゲーム内での30日分になり、それ以外の時間はログイン不可能。30日間も仮想空間にいるため現実との意識の乖離が激しく、注意が必要。7月31日の夜から始まる30日間がβテストで初めての一般公開、8月1日から本格始動となる。


 今時VRはそれほど珍しくないが、240倍という時間の流れがかなり異彩を放っていた。専用のヘッドギアの値段は高価だが、買えないほどではない。ただ、初回の販売数があまり多くないのが問題だ。朝から並んで買ったとして、帰ってきて親に見つかるのが目に見える。買うならこんなゲームを買いたいものだと思いつつも、諦めるしかないようだ。


「おーい、梨里りさと、晩御飯だよ。降りてきな」


 母の恵奈けいなが私を呼ぶ声が聞こえる。いつのまにか夢中になっていて、晩御飯の時間になっていた。部屋を出て居間の自分の席に着く。今日の晩御飯はハンバーグのようだ。


「そういえば梨里、僕たちは7月の27日デートで帰ってくるのは夕方になるけど、何か欲しいものはあるかい?」


 父の龍広たつひろが尋ねる。


「んー、別にないかなー」

「そうかい。昼ごはんは自分で作って食べといてね」

「分かった」


 実の両親がイチャつくところは見ていて複雑な気分になる。夫婦仲が良いのは素晴らしいことなのだが、歳と娘の気持ちを考えてほしい。自分も将来そんな相手と巡り合えたらいいなと思いつつも、子供の前でイチャつく親にはなりたくないと思う。


 晩御飯が終わって私は部屋に戻った。することもないのでゲーム購入作戦を再開する。開いたままだったページを見ると、専用のヘッドギアの発売日が7月の27日と書いてある。その月日に聞き覚えがあった。さっき聞いた両親の不在日だ。


 私の家は比較的都会にあるのでギアの買える店はいくつかあるだろう。クラスメイトに見つかりたくないなら遠くの店で買えばいい。朝早くに店に並ぶことすら、夕方までに帰ってこないといけない私にとってはちょうど良い。条件は完璧だ、ここまで完璧だと何かの罠のような気さえする。


(ゲームを買って、帰ってきたら、2人が、ニッコリ、こんにちは)


 考えただけで寒気がした。しかし大丈夫だろう。両親がデートに行くのは今日が初めてじゃない、逆に今までもよくあったことだ。


 最初はあまり本気にしていなかった購入計画も、ここまでくるとだいぶ現実味を帯びてきていた。心臓が高鳴っているのが自分でもわかる。初めてのゲーム、しかもオンラインゲーム。そこに一体どんな世界が広がっているのだろう、どんなプレーヤーと出会えるのだろう、想像するのを止められない。


(一段落したし、今日はもうお風呂に入って寝てしまおう)


まるで遠足の前日のような気分で、日が経つのが久し振りに楽しみだった。

主人公sの苗字は矢頭やず、かっこいいからこの苗字に決めた、後悔はしていない。

主人公=梨里、父=龍広、母=恵奈


2016/09/19改稿

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