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王女様、気になる

 右肩に真夏の空のようなコバルトブルーの布地をあて、左肩に秋の夕日を思わせるアプリコット色の布地をあてる。


「どちらが似合うかしら」

「んー、そうだね……君ならどちらでも似合うよ」

「両方じゃダメ。どっちか選んでくれなくちゃ」

「じゃあ……こっちかな」


 アルテッサは口を尖らせる。

 ジリアスが指差したのは夕日の布地。

 今日は、今度開かれる舞踏会で着る衣装の、生地を選んでいた。

 陽光降り注ぐ広い部屋には、所狭しと様々な布地が拡げられ、侍女やデザイナーに引っ切り無しに布を勧められる。

 色のファッションショーだ。

 観客は婚約者のジリアスと、白ウサギのフィリック。


 一応、部屋の真ん中に置かれたテーブルで、ポリポリと草っぽい何かを固めたウサギ用の餌に噛り付いているフィリックにも見せて意見を促した。

 フィリックは顔を上げて右を向く。

 しゃべりはしない。

 フィリックが精霊であることもしゃべれることも、アルテッサの家族以外は知らない秘密だ。


 ふむ、フィリックは夏色のコバルトブルーか……。

 よし! フィリックの意見は無視しよう。


「こちらの布を使って仕立てて」


 デザイナーにジリアスの選んだ布を渡す。

 と、非難するようにフィリックは鼻をブフッ、と鳴らした。


「王女殿下。では、これに合わせるリボンも選んでもらえますか?」


 フィリックのいるテーブルに並べられたリボンまで案内される。

 レース、ベルベット、サテン、フリル……様々なスタイル。

 花、蔦、ストライプ、水玉……様々な柄。

 シルク、コットン、リネン、ファー……様々な素材。


「流行のものは?」

「こちらなどでしょうか」


 デザイナーが数本手に取り、見せてくれる。

 どれにしようか。


 ジリアスをちらっと見ると、彼は一本のリボンをじっと見ていた。


「それが気になる?」


 アルテッサはジリアスのそばまで行き、リボンを手に取った。

 花柄のレースだった。

 ……クッキーもそうだったけど、ジリアスの意中の相手は花柄が似合う女性なのだろうか。


 あなたはたくさんのリボンの中から何故その1本を選んだの?

 あなたはどこでそのリボンを見つけたの?


 ジリアスのお相手は未だに分からないままだった。

 晩餐会でもお茶会でも、ジリアスが見惚れる令嬢はいなかった。

 ただ、たまにジリアスは王宮の外にお忍びで出かけているようだった。

 あのお茶会の伯爵夫人から、クッキーが届いた時も出かけたようだ。


 自室に戻ってからそのことをフィリック相手にしゃべると、ウサギは


「あのさぁ。思ったんだけど、ホントにあいつに浮気相手っているの? 案外女装趣味に目覚めちゃって可愛いもの、気にしてるだけなんじゃないの? 出かけるのも趣味仲間に会ってるとか」


 と言ってきた。

 持っていたクッションを投げてやった。


 出かけた先が気になる。


「じゃあ、あとつけてみれば?」


 そうか! 尾行かっ!

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