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白ウサギ、撫でられる

 ジリアスの撫でていた手が止まる。

 フィリックもその場で動かず、ジリアスを待った。


「僕は、アルテッサを心から好きにはなれない。いくらアルテッサが優しい女の子でも、国という檻で自分を殺されながら飼われる状況では、どうしても逃げたくなるんだ」


 再び撫でられる。


「アルテッサしか目に入らなければ良かったのにね」


 少し乱暴に撫でられるそれは、アルテッサのものと比べて全然気持ち良くなかった。

 それでもフィリックはされるがまま、撫でられてやった。


「こうなったからには僕もただじゃ済まされないだろうな。失言もしちゃったし……あれはアルテッサには、ちょっとした復讐。それと、アルテッサなら許してくれそうな気がしたと思う僕の甘え」


 これからどうするつもりなんだ?

 フィリックはそう思いを込めてジリアスを見た。


「自害でもするかな」


 笑いながら。それは冗談を言うように見えて、でも冗談に聞こえなかった。


「取り敢えずこの件についての責任を取るという名目で遺言でも書いて。僕の国がそうすることでどうにかなるとは思えないしね。ほら、婚約者候補は37人もいるしね。それに正直なところ、僕の国とは言っているけど実感はないんだ」


 早口になりながら。声も小さくなる。


「あの国は僕を名前もつけず、この国に1人、献上品と称して置き去りにした。幼い頃の僕には捨てられたも同然だった。あの国には何の感情も湧かないんだ」


 アルテッサは泣くぞ。


「アルテッサは僕が死んだら泣くかな?でも、僕は怒って欲しいな。それでなるべく早く忘れて欲しい……これも僕の甘えだな……」


 孤児院の娘は?


「孤児院のあの娘は……それこそ忘れるんじゃないかな。思いを伝えたわけではないから……」


 本当に自分勝手なんだな。


「自分勝手だと思う。だけど、そうしないといずれ僕は気が触れて、アルテッサを殺すと思う。それだけはしたくない」


 本当にそれで良いのか。


「あともう一つ、勝手なんだけど。僕の分も、君がアルテッサを守ってあげてね」


 ジリアスがフィリックの頭をポンっと軽く叩いた。その仕草はアルテッサがよくやるポンっに似ていた。


「お前なんかに言われなくても、アルテッサはオレが守る」

「えっ?」


 フィリックはジリアスに聞こえるよう、そう言ってベンチからひょんと飛び降り、中庭を駆け出した。

 あとには惚けたような顔のジリアスが残された。


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