表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/32

白ウサギと王子様

 フィリックはすべてを見ていた。

 見ていたけれど、アルテッサがジリアスに背を向けたとき追わなかった。

 かわりにジリアスを見上げる。


 追うべきは本来こいつの役目だ。

 睨みつける。

 と、思いがけず目が合った。

 フィリックはちょっとだけ狼狽し、誤魔化すように口をもごもごさせた。


「追わないのか、って言いたそうだね」


 いつもアルテッサに向けるような、柔らかな微笑みとは違った苦笑いを浮かべ、ジリアスはフィリックに語りかけた。


 あれ?オレの考えてたこと何でわかった?


「追ったところで、今のアルテッサには僕が何を言おうと負担にしかならないんじゃないかな」


 それでも追うべきだし、アルテッサは望んでいるだろ!


「アルテッサは追って欲しいのかもしれないね」


 まただ。

 こいつ、オレが考えていることが分かるのか?

 フィリックはアルテッサを前にした時のように声を出して喋っていない。

 不思議に思いながら後ろ足だけで立ち上がる。


「ああ、もしかして何で思ってることが分かったのか、とか考えてる?……フフッ、誰だって思うようなことを呟いてみただけなんだけど」


 それにしてもウサギに話しかけるとか可笑しくないか?


「君はアルテッサのウサギだしね。何か特別なウサギだろうから、話しかけても大丈夫かと思ったんだ」


 ぐぬぬ、 バレてる。でも、お前には喋ったりしないぞっ!


「それに、たまにアルテッサが君に話しかけてるのを見てたんだ。アルテッサとは、もう長い間一緒だけど、君とも随分長い間柄になるね」


 だからってお前なんか親しくしてやらねぇぞ!

 フィリックは前足を地面につけ、そっぽを向く。

 しかし、その場から去ることはしない。


「さてウサギくん、君も僕を裏切り者と罵るために、ご主人様と去らないでここにいるのかな」


 ジリアスがしゃがみ込み、フィリックと目線を合わせた。


「裏切り者であることは否定しないよ。本当のことだからね」


 お前の立場でよく言うよ。

 フィリックはブッと鼻を鳴らした。


「フフッ、色々と文句がありそうだね。そうだな、僕も誰かと少し話したいと思ってたところなんだ。君さえよければ付き合ってくれるかな」


 耳をぴくぴくと、動かしながら考える。

 えー?どうしよっかなーぁ。


「まぁ、聞いて楽しい話ではないし、唯の痴れ者の言い訳でしかない。きみが憤慨しても仕方ないことなんだけどね」


 言いながらジリアスは立ち上がり歩き出した。


 ジリアスが足を向けた先には、確か小さな噴水とガゼボがあったはずだ。


 おいおい、オレの返事は待たないのかよ。


 自分が喋らないことを棚に上げてフィリックは心の中で呟く。

 どんどんジリアスとの距離が開いて、慌ててフィリックは走った。


 ついてくるフィリックにジリアスが笑む。


「僕は当の昔に疲れてしまったんだよ。もう、国なんてどうでも良いと思うくらいに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ