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捕虜などいない
ヤコブ・マクラーレンはパイロットであった。
不運にも冬の不安定な気圧の中で仮想敵国に不時着し、気がつくと拘束されていた。
しかし、その国は民間防衛に失敗しており、抑止力として機能する軍事システムの構築に手こずっていた。ヤコブは強気に出た。
「はんっ!防諜技術が未熟で軍事関連法案も整備されていないお前らに何ができる?不時着した俺にこのような待遇をしていていいのか?機体の位置情報システムと俺の帰還報告がないことを祖国が問題にすれば現在進行しているエネルギー及び燃料の包括協定はとうなる?さっさとここから開放しろ!」
しかし、相手は怯むどころか淡々と作業を進めていく。
「おい!何をする!その注射針はなんだ!自白剤など打たれても俺は機密情報など持っていないぞ!」
数日後、次のようなニュースが記事になった。
『ノースシーランドにおける暴風雪により立ち往生のなった車から発見された少年は救命活動により一命を取りとめたものの、身元は不明。孤児院が身元を預かり、知事により命名される。』