闘争の歴史―石の正体
メアリが駐車場に出ると、展示室の閉まった夜中には人が通るはずもない袋小路を軽トラックのライトが照らす。光はだんだんと大きくなり、駐車場の出入り口をふさぐようにドリフトして停止する。その荷台には爆破装置が並び、それを押さえる人員として3人ほど乗っていた。メアリが車の陰から覗いてみると、アカデミア自治警察のロゴと許可番号8984の文字が見える。ミレイが掘削用に使用許可を取っていた爆破装置のようである。果たしてミレイに対して交渉が通じるのか、メアリは不安に思う。
と、ミレイが車から降りてくる。アレクシスの展示室を一瞥するとコリンの車の方にも視線を向ける。射抜かれたような錯覚を覚え、メアリは蛇ににらまれた蛙のように動けなくなる。ミレイはまっすぐにメアリの方へ歩を進める。
「そこにいるのはわかっているんだよ。メアリ。その手に握る石を渡せば命は助けてやろう。10数える。カウントが終わると同時に擲弾を打つ。10、9、8…」
軽トラックの方から爆発音が響き、メアリは身をすくめた。しかし、いつまでたっても衝撃は訪れない。軽トラックをうかがうと、牛乳の入ったコップに雫が落ちたときのように、軽トラックを囲むような壁とその周囲の地面がすり鉢状になっているのを認めた。しかし例外的に、ミレイの足元もそのままである。
意味の分からない現象に戸惑っていると、コリンがミレイに向かって歩いていくのに気が付いた。ミレイもコリンを睨みつけている。
「ミレイ、きみがただの強盗団じゃないようで驚いたよ。君は僕とよく似た存在のようだね。アレクセイの秘密を知るのは僕だけだと思っていたんだけどな。」