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闘争の歴史ー音声の記録

学会が終了した大学に向かって走る車が1台。

右側の運転席には男性が座り、助手席には女性が座っていた。


男性はコリン・マクラレン。人類学研究の第一人者で専門は宝飾品。大学教授である。女性はメアリ・オールストン。コリン教授が任期ありの非常勤研究員として雇ったポスドクの一人である。昨年人類学研究でアカデミアよりマスターを認められており、今回のプロジェクトでは宝飾品を保存する建造物を中心とする装置に関する研究を任されている。


彼らは大学に併設された資料館に向かっていた。


目的地が近づいたことで気持ちが高揚しているのか、コリンは饒舌である。


「僕は宝石が好きで、展示会によく参加するんだ。今向かってる展示室は宝石商のアレクシス・デンバーの終の住処を移築したものでね、彼の遺品を置いてある。その中にショーケースごと設置した緑色の石があってね。トルコ石の原石と言われているんだけど、ケースが頑丈な上に鍵が見つからないから鑑定がまだなんだよ。」


「非常に心を惹かれているようですね。しかし、それなら尚のこと調査チームにこの鍵を渡したほうがいいのではないですか?」


対するメアリは教授の独断に手を貸そうとしていることに不安そうである。


「彼らは信用できない。そのショーケースを落札した後、不埒な連中に襲われてね。つい先日、探偵から調査チームのミレイ・ワンファが強襲部隊と密会している写真が送られてきた。鑑定できていない今のうちに造型装置で合成したレプリカと入れ替え、僕の家で鑑定する。」


コリンはメアリの不安を一蹴してまた黙ってしまう。メアリは再び独断を諌める。


「しかし、それでは史料の汚染が起きてしまうのでは?」


「なに、構うものか。この時代は僕の偽装によって誤った記録がなされるとしても、僕の遺稿を整理すれば歴史は自然と正される。何より、僕が学会後の懇親会に参加していると思われているこの時間しか彼らの目を欺けない。それに、展示室はすぐそこだ。駐車場に停めたら先に入っていてくれ。」


「確かに承りました。」


コリンの意志が固いと見たメアリはあきらめて返事をした。



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