第二話~文芸部~
彼を見つけることができたのは偶然であり、必然でもあった。
そう言い出せばカッコいいんすけど、向こうから自分の容姿の物珍しさから声をかけられただけッすけどね。
高校に入学してから、もう三ヶ月が経ったッす。
自分は現在、文芸部に籍を置いてるッす。理由なんてのは、この高校の文芸部が特異点だからッすけどね。
特異点
つまり、世界に愛された世界の中心人物たる者、また、それに準じる者たちが何の因果か、集まってしまう。この世界だけではなく、他の世界でもたまに発生していたそういった場所のことを自分が勝手にそう呼んでいるだけッすけどね。
そんな特異点に自然に介入できたことは運が良かったとしか言えないッすね。
この特異点の中心点。もっとも世界に愛されていると思われる彼、海馬正義 先輩にたまたま声をかけられたからッすからね。
決して二枚目って顔立ちじゃないッすけど、妙に憎めない顔をした笑顔の似合う好青年って感じの文芸部所属の高校二年生の海馬先輩。黙って笑ってればモテそうな感じの彼ッすけど、実際に幼馴染の美少女や三年の美人さんから好意を寄せられているッす。まぁ、本人が気が付いてないってのが残念ッすけど。
ただ、海馬先輩に連れられて文芸部の部室に連れて行かれた時は、海馬先輩に好意を寄せる二人に睨まれて、こんな平和な世界でありながら命の危険を感じたッすよ。
自分に声をかけた理由が、自分の容姿が気になったからってのは、まぁわからなくもないッすけどね。
白に近い空色の髪をリボンで一つにまとめただけの簡単な髪型に、ひざ下5㎝のスカート、牛乳瓶の底のような丸眼鏡をかけた。野暮ったい格好のくせに珍しい髪色の少女という、逆に目立つ容姿をした少女。
自分だって、そんなのが居たら声はかけなくても目で追ってしまうかもしれないッすからね。
まぁ、だからって興味本位で声をかけるってのは自分みたいな狙ってる奴以外には失礼ッすけどね。はっはっはっ。
まぁ、特に自分から動くことなく、こうして特異点に接触できたのは行幸ッすね。
それに本は大好きッすからね。
ブリジット・マーベェラムが聖女として勇者パーティーの一員として冒険に出る前は辛い修行の合間の休憩時間にする読書だけが楽しみだったッすからね。
この世界の諺にある、三つ子の魂百までのように、どれだけ転生を繰り返しても読書だけは辞められなかったッす。
各々の世界で流行っている本は異なるから、いろんなジャンルを読む機会があったし、まったく異なる世界観なのに前の世界と流行っている本が同一な世界という興味深い世界もあったッすからね。
文芸部だけら小説やエッセイを書く必要もあるッすけど、今まで転生を繰り返したことでネタには困らないッすから割と楽しく書いてるッす。
さて。
自分の感だと、たんなるほのぼのとした世界にしてはこの文芸部の特異点は強力だと感じているッす。
だからその内何かが起きるのは間違いないッす。
そこに上手く介入できれば文句はないッすけど、はてさて、どうなることッすかね。