第一話 ブリジット・エイリアス
やぁ、どうもお久しぶりッす!自分は聖女ブリジット・マーベェラムの転生体ことブリジット・エイリアス、15歳ッす!
えっ、キャラが違うって?
ちっちっちっ、あったりまえッすよ!
いったい自分が何回転生してると思ってるんすか?
あんだけ転生繰り返せば、どんな聖人君子でも、どんな野望を持っていても摩耗するってもんすよ。
聖杯の恩恵で未だに未知の光景や世界に愛された世界の中心人物たちと関わりを持つことはできるんすが、最初の人生のときのようにいちいち一喜一憂していたら疲れるッすからね。
ほどよく力を抜いて、あらゆることを軽く受け流せる人格が一番この転生ライフに適してるってことで、何回か前の人生のころからこんな感じで生きてるッす。
一人称も、何度か男としての人生をまっとうしてるッすからね、いちいち性別変わるたびに一人称変えるのも面倒なんで「自分」で統一してるッす。
まぁ、性格や一人称を変えた最大の理由は世界の中心人物から恋愛感情を向けられたくないってのが一番の理由ッすね。
自分は容姿だけは一級品ッすからね。いや、自惚れではなく、残念な事実なんすよ。
最初の人生では、聖女として民衆の信仰心を集めるための一種のアイドルのような存在だったッすからね。美男美女を掛け合わせて生まれたのが聖女ブリジット・マーベェラムなんッすよ。その影響からか、転生を繰り返しても転生先の両親の特徴にブリジット・マーベェラムの特徴を組み合わせた容姿で生まれてくるッす。
だから女ならブリジット・マーベェラムに似た美人に生まれるッすし、男でも女顔とはいかなくても中世的で線の細いイケメン顔に生まれるッす。
だから今世では牛乳瓶の底のような伊達メガネをかけて顔を隠してるッすよ。
最初の人生、聖女ブリジット・マーベェラムは勇者ライトからの好意を知っていながらも知らないふりをしていたッす。正直それが原因で旅の最後のほうは気まずい関係になっていたッす。
最初のころの転生ライフでは容姿もそうッすが、ブリジット・マーベェラム譲りの生真面目な性格が災いして、世界の中心人物から好意を寄せられることは多かったッす。
正直、自分には恋愛感情というものが欠落しているようで、今までの転生ライフの中で誰かを好きになった経験はないんすよ。
そんな自分が観察対象から好意を向けられても正直疲れるわ、気まずいわで、利点が少ないッすからね。
むしろ、何回か前の人生で学生をしていたときに同じ学園に通っていた世界の中心人物と有力貴族の息女との身分を越えた大恋愛を観察していた時のほうが、よっぽどドキドキしたッすからね。
やっぱり、恋愛は自分でするより、他人がしているのを見る方が何倍も良いッすよ。それも幾つもの障害を乗り越える姿がそそるッすね。
さて、自己紹介で長くなったッすが、自分も明日から高校生ッす。
まだ世界の中心人物には出会えていないッすが、この世界「地球」は最初の人生でライトが話していた彼の出身世界にそっくりな世界ッすから、なかなか楽しんでいるッす。
さて、高校でこそ、世界の中心人物に会えるといいんッすけどね。
明日の入学式が楽しみッすよ。