太刀魚できません。
「いらっしゃいませ。」
扉の向こうから、ギャルソンが出てきた。
その彼がおこした風とともに。
珈琲のいい香りがしてきた。
な、なんなんだ。
この空間は。
その奥には、カフェスペースがあった。
本屋と同じく、シックな色合い。
手前には、自分で取れるように並んだパンや惣菜があった。
ガラスのケースが奥にあり、それはテイクアウトができるように、外のほうにまで、のびているようだ。
店をしめているときには、テイクアウトのショーウィンドウだけで営業し、珈琲スタンドのようになるのであろうか。
ドリンクもそろいにそろっている。
珈琲、紅茶はもちろん。
アルコールまである。
注文をとりにくるわけではなさそうなので、自分でそのつど会計をすませれば長居もできそうである。
すわり心地のよさそうなソファも見受けられる。
夜に、甘いものはどうか・・・と思いもしたが。
ふわり、とケーキの焼けるにおいまでしてきたので。
辛抱ならず、ふらふらとカフェスペースに歩みを進めた。
"クラブサンドウィッチ"も、"サンドウィッチ"も可能。
しかも、ベーグルもいろいろトッピングあります、と書いてある。
エスプレッソマシンは、手動式なのか、おしゃれな道具が煌びやかに置かれている。
ぐぬぬ、と唸りながら迷う。
スコーン、クロワッサン、おかずぱん、なんと魅惑的な。
よくよくみたら、珈琲も紅茶にもカフェイン抜きがある。
しかも、ハーブティも充実のラインナップ。
かと思いきや、ビールサーバーまである。
「いったい、ここは何屋なんだ?!」と頭を抱えて思わず吐露してしまう。
すると、ギャルソンが。
「ただの飲食店です。」とのたまった。
断言されては、閉口するしかない。
「ここにあるのが、朝ごはんになら、いいのに。」とぽつり独り言をごちる。
すると。
ギャルソンが。
「テイクアウトのみ、朝は8時まであいてます。朝は、あのショーケースにおにぎりも並びます。
パンもありますよ。パンを購入の方は珈琲のショートサイズが、100円で追加できます。
おにぎりだったら、味噌汁が100円で追加可能です。スープもありますし、もちろん、単品で購入も可能です。それからおかゆもありますよ、中華粥から、シンプルな梅粥、サムゲタンもおすすめです。」とノンブレスで話しかけてきた。
もう、こんなことを言われてしまえば。
毎日通います、と言い出したくなる。
いやいや、自分、だまされてはダメだ。
でも、もうすぐ心が折れそうです。