3/5
鮟鱇の罠にかかったように、ふらふらと。
「時間があったら、どうぞ?」
そんな彼の呼び込みに、頭をすこし傾げて、重厚な扉を開く。
背後ごしに、「ようこそ、深海魚へ。いらっしゃいませ。」と声をかけられた。
ドアを開けてみて、白熱灯の明かりに"ホッ"とした。
自分には、明るい蛍光灯で、目を焼かれるイメージがある。
この、デスクワークをたっぷりとこなしてきた視力には、ありがたい配慮だ、と思いつつ。
しかし、本屋での利用は、致命的なのではないか?と心配になった。
実際に表紙で、購入するジャケ買いという言葉があるくらいなのだ。
だから、色味が鮮やかなものは外にでて、驚くほど違ったりするから、返品されたりしているのでは、などと余計なことを考えてしまう。
全くの初めてな場所なので、ぐるっとあたりを見渡してみる。
入って左に、レジがあった。
カウンターは、シックな色味で。
店員は、そとにいた店員とは違い、背が高く、黒縁眼鏡で無愛想なのか、
ぼそっと「いらっしゃいませ。」と声をかけられた。
この店の第一印象は、"この店員で大丈夫だろうか?"と思うほどの接客能力のなさ。
サービス業ながら、憂います。