表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/27

そして僕はそれを選んだ

読んでいて下さっていた方、スミマセン。

相当開きました。平謝りです。

書けなくなってましたが、書きます。

「でも、僕は情けない性格だよ?」

「そんなの知ってるわよ。」

「だったら、僕なんかよりもっと良い人を見つけた方が絶対良い。」

「無理よ。私はフレッドが好きなんだもの。『もっと』なんてないの。良いか悪いかなんて人から言われたくないわ。そんなの私が知ってればいいだけだもの。ねぇ自覚してる? きっとあなたは強いの、心の中の大事な部分が。おかしいくらい真面目で、冗談なんか通じなくて、でも堅物って訳でも無いでしょ? どこか抜けてるの。フレッドみたいな男の人初めて見たわ。ここの人間は乗りが軽くて、旅行に来る人もそう。みんなそんな人ばかり。」

「そんな、……僕なんか。」

 今僕は何だか嬉しい事を言われた。一部違うものも混じって居たが、それでも前向きな言葉だと思いたい。けれどそのくらいでは、まだ意固地な僕を引っくり返せない。何よりシャファンを不幸にしたくない。

「『僕なんか』なんて言わないで。私はそれでもフレッドが好きなの。フレッドがヤハクといる時、楽しそうでいいなって思うの。あの笑ってる顔、素敵よ。」

 シャファンはベッドを下り、僕の側まで来た。そして更に続ける。

「言ったでしょう? 私は後悔したくないって。自分を卑下して断るつもりなら、私は絶対諦めないから。私の知ってるフレッドの素敵な所、あなた自身にしっかり教えてあげるんだから。」

 彼女の言葉には、胸を締め付けられるような思いがした。僅かの残りの時間に『後悔したくない』と行動する彼女。『諦めよう』そう考えている僕。だから僕は、こうしてずっと後悔を抱え込む。だから彼女の目は……あんなにも力強い。

 今もまた、後悔を増やそうとしているのだろうか? 諦め癖のついている僕には彼女がとても眩しい、眩し過ぎる。だからつい目を逸らしてしまうのだが……彼女はそれを許さなかった。

「ねぇ、私を見て。」

 彼女は向き合う事を強いる。

「ちゃんと答えを聞かせて。言い訳じゃないあなたの気持ちを。」

 真正面から見据える強い意思を宿した瞳。僕はまた魅せられる。そうだ、僕はこの目が好きなんだ。最初からこの印象的な目に惹かれていた。心の中まで暴かれてしまいそうな射るような瞳。それはまるで正義の女神、アストライアの善悪を量る天秤にのようだ。そして彼女自身は女神だろうか?

「もちろん好きだよ。」

 そう言わされたと言うべきだろうか? だがそれは嘘でなく、偽らざる僕の気持ちで間違いない。

「よかった。」

 そう言うなり彼女は崩れた。何とか支えて抱えると、表情が和らいでいた。気が抜けたのだろう。やっぱり僕は駄目な男だな、彼女にこんなに頑張ってもらわないと、自分の気持ち一つ言えないのだから。そう情けなく思うと同時に愛しさが増す。暗い部分に引きこもっている僕を、無理やり引っ張り出した彼女。こんなに華奢な体で、一体何処からそんな強さが出て来るのだろう?


「ごめん、それからありがとう。」

 謝罪と感謝を一度に口にして抱き寄せた。髪を撫でるとふわりと甘い香りがして、頭のどこかが痺れる。

「まだそんな事言うの? それより愛でも囁いてくれない?」

 彼女は軽口を叩くが、それとは裏腹に体には緊張が漲っている。不審に思った僕は彼女に尋ねる。

「ねぇシャファン? 何でそんなに緊張してるの?」

「……だって、今度は大丈夫って言ったじゃない。」

 何が? そう言おうとして、彼女が少し前にも同じ事を言っていたのを思い出した。

「いやっ、でも……いきなり?」

「ねぇ知ってる? 女の子は初めてを大好きな人とって、夢見てるものなの。」

 その恥らうような声に僕は返す言葉が無い。一体彼女はどこまで積極的なんだ? 俯く顔を上げさせると頬は赤く、目は涙で潤んでいた。どうやらまた彼女に無理をさせたらしい。

 分かり切っている事だが、僕は「いい男」から程遠い。女の子を上手くエスコートする事も、先手を打って喜ばせる事も到底出来そうにない。それでも彼女には笑っていて欲しい。だから、微笑ませるくらいの努力はしたい。

 僕は反省しながら決意を固め、彼女の唇にキスを落と……そうとしたのだが、出来なかった。何故か彼女に防がれたんだ。

「ねえ、フリージアって誰?」


 いやいやいや、やましい事など無い! 無い……はずなのに、緊張感はMAXだ。彼女は端末のモニターを凝視して口を開かない。表情も固い。

「………それは、会社の同僚。」

「いないって思い込んでたんだけど、ひょっとして彼女いたの?」

「いないよ、彼女とはもうずっと前に別れてる。」

「……そう、なんだ。でも、仲が良いのね?」

 余計な事を言ってしまったらしい。声の温度はどんどん冷えていく。いや、でも悪くはないはずだ。騙してる訳でも、誤魔化してる訳でもない。

「彼女は友人だよ。僕と同じ惑星の人で、同じ境遇で、同じように将来を決められて、他の道なんか無しに今の仕事をしている仲間だ。仲が良いっていうより……」

「本当に、仲が良いのね!?」

「シャファン?」

「何よ? 同じ同じって、私馬鹿みたいじゃない!?」

 僕が説明しようとしている間、彼女は俯いていた。だが突然顔を上げると……僕はまた頬を叩たかれた。彼女は泣いていた。

「嫌い! 大嫌い! 大っ嫌いなんだから!!」

 あまりの急展開に呆然としているうちに、一方的にまくし立てられた。

「フレッドのバカ!!」

 涙目で睨んだ彼女は僕から離れ、勢いよくコテージから飛び出す。そして僕は一人残される。追いかける事が出来なかったのではなく、追いかけなかった。

 これでいいと思った。もちろんハッキリ『嫌い』と言われたのはショックだった。けど、こうなったのなら、このままの方がいい。……僕はこのまま帰ってしまえば良いんだ。

僕は結局そう望んだんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ