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エージェンヌさんに愛をこめて

パリーーーーーーーーーン!!!!




白黒の仮面が砕け散る。





鮮血がトレンチコートに飛び散る。


エージェンヌの刃がコートをズタズタに斬り裂く。





防御を捨て、暴風の槍と化したエージェンヌは、





鉄球を腹にブチ込まれて血を吐いていた。



「が・・・はっ・・」


何が起こったかわからない。目の前の奇妙な、いやむしろ奇怪な光景が理解できない。



自分の刃は確かにヤツの体を貫くはずだった。


現にヤツは斬り裂く直前まで、刃がまさに触れ合う瞬間まで、そこに居た。


だが今! そこには誰もいない。あるのは私が引き裂いた白黒の服だけ。



そして、そこから冗談のように生えてきた(・・・・・)鎖付き鉄球だけ。



バラバラに散った布切れから、ムギュウッポンッと間の抜けた音とと共にバスケットボールくらいの鉄球が飛び出してきて


「ぶごぉ!!」


エージェンヌの鳩尾にブチ込まれた。



それだけで内臓がいくつか潰れ、口から血が吹き出る。


ビチャ、ビチャビチャッ



ドサリと膝から崩れ落ちる。


「くっ!<ミグ・ヒール>!!」


だがすぐに腹に手を当て、回復を行う。


中級の回復呪文だがこの程度なら短縮で発動できる。


手の平から光が溢れ、腹部に浸透していく。



腹部の痛みが引いていく。さすがに完治はしていないがこれでまだ戦える。



すると、



ぱちぱちぱちぱちぃ。



間の抜けた拍手が響く。



「いやぁ、なかなか良かったですよ。見たこと無い技だったので驚きました。それにその呪文も」



どこからか声が聞こえる。



上下左右全て白の空間。


そのはるか彼方。


そこに黒いシミがポツンとある。



真っ黒のカッターシャツに真っ白のベスト、そしてまたも真っ二つに白黒のスーツズボン。靴は片方が黒で片方が白。



黒い髪に中性的に整った顔立ち。どこかしら慈愛すら感じさせる微笑。




だが何より目立つのは、すべてを飲み込むかのような、どこまでも暗く、黒い、その瞳。





男が口を開く。



「さてさて。改めまして、自己紹介♪」



自分の胸に手をあて、優雅に微笑み、




「僕は『愛のブラック・ホール』ことラヴ・ムーン。PKギルド『ラヴァーズ』のリーダーです。以後御見知りおきを♡」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




白銀に輝く漆黒。




禍々しき神聖。



そんなでたらめなオーラがラヴから発せられる。



「ぐっう……ぅ……」



震えが止まらない。目の前にいるだけで死にたくなる。さっきまであった覚悟が粉々になる。



あきらめたい。


楽になりたい。


死ぬのは簡単だ、このまま風の刃を自分の頭上に創るだけだ。


それだけでいい。あれとは戦いたくない!!



そんな思考に自分が支配され、




(我に仕えろ!!)


そこで突然、自分が仕える方を思い出す。


部下を一人一人気遣い、こんな自分にも良くしてくれたあの方を。

まだ幼く、だが強大な力を持つがゆえに孤独なあの方を。


(・・・帰ってこいよ)


おそらくあの方は敗北を理解していらした。


だから既に民を避難させていたのだ。



最後に見た時、あの方は、いまにも泣きだしそうだった。





震えは止まった。


覚悟はとっくに出来ている。



さぁ、意地を見せる時だ。



エージェンヌの周りで風が唸りだす。



ぐるり、ぐるりぐるうり、グオォォォォォ!!!



最初こそ微風だったそれは瞬きのうちに巨大な竜巻へと変貌する。


その竜巻が、徐々にエージェンヌの腕に絡みつく。



創り上げるは一本の突撃槍。



轟々と回転するそれを高々と振り上げ、キッと前を睨み据える。



「行くぞっ!!これで最後だ!!!」



エージェンヌは特攻のための一歩を踏み出し、足が粉々に吹き飛んだ。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





カチキュボン!!



何か踏んだ、と思った時、白い壁が迫ってきた。



ゴンッ!!


いや、頭から床に倒れこんだのだ。


と同時に響く激痛。



「なっ…………が……ぁ……?」



何が起きた。



右足の膝から下がない。


ブスブスと煙を上げている。



「あぁ、素晴らしい目ですねぇ。まさに覚悟を決めた者の目です。僕はね、そんな目を見るのが大好きなんです。そうまさに愛する者、大切なもの、守りたいものがある人特有の目です!!誰かを深く愛する人の目です!!それはリアルでもこちらでも変わりません!」



華やかでにこやかな声がする。



「愛は素晴らしいです!!それがあればどんな困難も乗り越えられると信じる(・・・)ことができる!圧倒的な存在に向かって特攻する勇気が持てる!あぁ!!なんて愛は素晴らしいんでしょう!!!」


ラヴは自分を掻き抱くように震えながら力説していた。


ふいにピタッと動きを止め、


こちらを向く。


「そして、そんな愛に溢れるあなたの為に、とってもスペシャルな処刑を、用意しました♡」



パチンッ!!



ラヴが指を鳴らす。



と、





ビーーーッ!!!ビーーーッ!!!ビーーーッ!!!ビーーーッ!!!



けたたましい警報。


それとともにエージェンヌの目の前に真っ黒の壁がのびる。


いや、その隣にも、その隣にも。


エージェンヌの周りを六角形に囲むように壁がせり出してくる。


壁はどんどん高くなり、ついに光がほぼ見えなくなる。



ビーーーッ!!!ビーーーッ!!!ビーーーッ!!!ビーーーッ!!!



赤い回転灯がその壁の内側に等間隔につけられており、暗い六角柱の中をぐるぐる照らす。


「なにを……?」


エージェンヌは魔族だ。ゆえに暗闇でもよく見える。


だからこそそれが見える。


バスケットボール大の丸い突起が。


それが壁一面にずらっと上から下まで並んでいる光景が。


そして思い出す。


その突起はついさっき見たばかり(・・・・・・・・・・)であることを!!


「ぐっ!マズイ!!〈フラ(ガシュウッ!!)ぐほぁ!!」


翼に魔力を込めて飛ぼうとした、その一瞬より早く、床から拳ほどの柱が飛び出し、エージェンヌの鳩尾を抉る。


柱に持ち上げられるように弓なりになり、背中の翼がむき出しになる。


ドシュドシュ!!!


その翼目掛けて鎖付き鉄球が発射される。


サンドイッチになるように2つずつ。



グシャア!!



「!!!!っっっっっっっっぐ(カシュ)ぬおッ…………」



彼女を持ち上げていた柱が引っ込み、体が倒れる。


「く、<障壁てん(ガシュッ!!)ごぉっ……」


とすぐに別の柱がその口を閉じさせるようにアッパーのように顎を打つ。




そのまま人形のように片足で立たされたところに、


ドゴォッ


右から、


ゴシャッ


左から


ガンッ


後ろから、



ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!!!!!!!!



ずらりと並んだ鉄球が、エージェンヌをどつきまわす。


一発がエージェンヌを壁際に吹き飛ばせばそれを押し返すように鉄球が発射される。


床に倒れれば柱が無理やり殴り立たせる。



嵐のように全方向からの攻撃。



もはや彼女の姿が見えないほどの鉄球が飛び回っていた。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







バサッ、・・・バサッ、・・・バサッ・・・




純白の羽根が舞い落ちる。



鉄球のミキサーと化した塔の上、覗き込むように飛んでいる者がいる。



真っ黒のカッターシャツに真っ白のベスト、そしてまたも真っ二つに白黒のスーツズボン。靴は片方が黒で片方が白。



そしてその背中には光そのもののように美しい純白の翼。



聖天使。



それがラヴの種族である。



「~~♪~~~~♪~~~~~~♪」



適当な、行き当たりばったりな鼻歌をあげながら、<解析(アナライズ)>で減っていくHPを観察しつつその光景を鑑賞する。



(ん~♪きれいだなぁ♡やっぱりああいうガンバリ屋さんっていいね!諦めた目もいいけど不屈の目もまた綺麗だ♡あっ♪いいのがイった♡)



彼は眺める。死なないように、気絶しないように、ギリギリの強さで鉄球を操りながら。飛び散る血肉を。踊るように殴りまわされる姿を。ぐちゃぐちゃになっていくその音を。



(あぁ、でも……)



ドゴドゴドゴドゴドグシャガズベキョドムバゴォドチャグヂャベキャドズグチャ!!



限界に達し、もはやズルズルの肉塊となったソレ。



(あーあ、限界かぁ。ま、もったほうかな?)



少し不満げに頬を膨らませ、


「さて、フィニッシュといきますか」


そう言って、両腕を前に掲げる。


そしてそのままずぶぅり(・・・・)、と|何もない空間に手を突っ込んだ(・・・・・・・・・・)。


「フンフフーン♪おっ!あったあった♪」


ずるりとそこから取り出したのは、



スイカくらいの大きさの、黒く、丸い、鉄球ではない。



頭にバチバチと燃えている導火線。


ギラリと笑った『ラヴァーズ』シンボル人喰いハート。


つまりはアニメのような爆弾。



「では♪ひとつ派手に!!」


ポーーーンとそれを上に投げ、


「逝っけえええぇぇぇぇぇぇ!!!」


ハットトリックで塔の中に蹴り込む!!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「…………ゲボッ…………ゴ……ォ……」


いつの間にか嵐は過ぎていた。


自分は暗闇の中、はるか遠くにある光を見ていた。


つまりは仰向けに転がされていたということだ。



動けない。



全身の骨が砕け、肉がミンチになっている。


どうして生きているのか自分でもわからない。



ふいに風を切る音がした。


そして迫ってくる赤い心臓。

















最後の瞬間、彼女が考えたことは…………。















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










ドグォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!




大爆発が塔全体を揺らす。


噴火のように上部から火を噴きだす。


そしてそのまま、



バタン、バタン、バタン、バタン、バタン、バタン。



塔の壁が一枚ずつ、ゆっくりと倒れる。




しゅうしゅうと煙を上げているその中心には、誰の姿もなかった。



ゲホォッ!!難産だったぁ!!


てーかあれです。テストがあまりにアレだったのでパソコン没収されかけてます。



・・・・・それでも僕は書き続ける!!

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