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鬼畜外道より愛をこめて  作者: キノコ飼育委員
準備中!☆下拵え中!☆種蒔き中!
72/77

もしかしなくてもオラオラです!

新年、明けましておめでとうございます。


本年度もよろしくお願い致します。


さて、新年一発目ということで色々甘いところがあるかもしれませんが、正月ということで許してください。


では、お年玉代わりの最新話をどうぞ。

おはこんばんちわ!サチです!


現在よくわからない状況でよくわからない戦闘機を相手によくわからない連中を助けてます。


こんなわけがわからない状態になった過程は、ざっくりまとめると―――


『飽食堂』での一件のあと、私たちは一時解散し、後日再び合流することにしました。


……という連絡を、先に帰ってもらった方々のギルドに連絡した、のですが。


……『帰ってません』と言われました。


そこからはもう嵐のように慌ただしくなりました。


普通に考えて帰ってないはずがないのです。


帰還するための〈スキル〉は拠点に直結していますから迷子になったり事件に巻き込まれたりすることはありえません。


しかしそれでも実際に行方不明なんだから大変です。


〈コール〉をかけても不通。


まず食事をとっていたトリニティさんも巻き込んで『飽食堂』をひっくり返す勢いで調査しました。

『暴食姉弟』のお二人に許可を頂き捜査を開始、すべての部屋、階段、壁の中にいる可能性まで含めて徹底的に捜索しましたが見つからず。


監視カメラの映像によれば階段に向かうところまでは映っていましたが、そこから彼らの行方がわからなくなっていました。


ちなみに、この時ちらちら映っていた映像から『自由同盟』の連中がいたことがわかりました。


それを確認したところ、


『はい、いらしてましたが?』

『それが何か?』


んーと、別に何も?しかし一応知らせといて欲し……いえ、知ったらややこしいことになったでしょうからお店側からすれば嫌でしょうね。


ほら、この厨二野郎みたいに騒ぐでしょうから。

騒ぎかけたので即行で黙らせました。


さらにあの場に最初にいた『オフコースギルティ』パジェロさんはパチモンだったことがわかりました。

しかしこの偽者……あの時言っていたことは本心だったのでしょうか……?



さて、皆さんにが消えたその階段をてっっっってい的に調べあげたところ……。


『これ仕掛け階段だろ? しかもかなり大掛かりな。大方隠してある地下に繋がるもんじゃないかい?』


とお花つみから帰ったトリニティさんがアッサリ見抜きました。

さすが『英雄達』の一柱、常識が通じねえ。


確認すれば『暴食姉弟』さんはこれをあっさりと認め、隠していた地下階層を見せてくれました。


『自衛のためですよ。ここのようなホテルは客に化けた敵を招きやすいのです』

『ですので、当ホテルが戦場になった場合、まずホテルを要塞化、内外の敵を速やかに移動させ、他のお客様にご迷惑がかからないように対応・・させてもらうのです』

『ちなみにあなた方の戦闘行為はかなりギリギリでした。もしあの時、無関係なお客様が一人でもいらっしゃったなら、我々は皆様を根こそぎ地下特別厨房にご案内しておりました』


と、目深に被ったコック帽ごしに睨まれました。


……天井ぶち抜いてホントすいませんでした!


『しかし今回この仕掛けを我々は起動していません。この操作室の設定を見ればお分かり頂けると思いますが、そもそもすべての仕掛けで移動させられるのは地下だけです』

『ただ、ご覧のように階段のカメラが破壊されておりまして……そうなったと同時に私が向かったのですがその時には既に……。上の方が騒がしくなったので姉とともに対応に出向きました。そこから警報とはリンクしておりましたが監視カメラは見ておりません。NPCのボーイに見張らせてはいましたがね』


不味いです、迷宮入りしそうです。


一応監視カメラの映像を証拠として渡してもらい、もうどうしようというところで、トリニティさんが『すくなくともこのホテルには死体も含めていないから、一旦解散して「自由同盟」からも話を聞いてきたらどうだい?』と言われたのでそうすることにしました。


ていうか、十中八九『自由同盟』が犯人な気もしますが……だって直前に襲撃がありましたし。

ヒロトさん辺りなんかはすでにそうだということで決定しているようです。

私は……ちゃんとした証拠が欲しいところです。

もしくは面とむかって話してから決めつけたい。


ともかく何の手がかりもない状況でしたからそれ以外にやりようがないですし。


しかし同じようなことがまた起きたらまずいので、行方不明になった方々がまとめていたギルドに、『旅立ちの城』に集まりましょうと提案したところ、一部を除いて承諾していただけました。


その一部にはトリニティさんも含まれています。

お誘いはしたんですがすげなく、しかしはっきりと断られてしまいました……残念ですね。


で。


『旅立ちの城』に帰還し、周囲一帯を調べるように監視用のペットを放ったり遠見系の魔法を駆使したりして街見つけたり城見つけたり森見つけたりしていたところ……?


遠くの方にモンスターに襲われている馬車の一団を発見しました!


その一団には武装した人たちもいましたが、明らかに劣勢も劣勢、そのうち死ぬみたいな感じでした

敵は『レッド・ワイバーン』と『クリムゾン・ワイバーン』の大規模な群れです。


とりあえず馬車内にテレポ、『どもー「ホワイトナイツ」ですーお困りですかー?あ、怪しくないですよー。あイライラしないで、ホントイライラしないで落ち着いて。あのー、我々初心者支援をモットーに活動してるギルドでしてー、あなた方のレベルと今戦ってらっしゃるモンスターのレベル帯が釣り合ってないっぽいからもしかしてMPK被害か不慮の遭遇かしたのかなーと。もしそうなら余計なお世話かもしれませんがお手伝いしましょうかー?』とついうっかりいつもの活動を……。


それで助けてみればどうも『ドワーフ』のお姫さまで?どうか私たちの国を助けてくださいと。


……『王道』だとか『テンプレ』だとか、そんなちゃちな話じゃ断じてねえ!もっと胸熱な、異世界トリップの片鱗を味わいました!


んでよくよく話を聞けば……。


巨大な山のような怪物が、親戚の山国を滅ぼし自分たちの国に向かって侵攻している。

阻止しようとした騎士団は軒並み壊滅。

周囲に警告と避難をしに行く途中。

そこに運悪く、というか見たこともないようなワイバーンの群れに遭遇し、全滅の危機。

それをあっさり覆した謎の美少女(私ですよわ・た・し!)。

これはもう天の助け、藁にも縋る思いで救援を頼みます。

謝礼は致しますのでどうか避難だけでも手伝ってください


と伏して頼まれました。


快諾しましたとも!!


<コール>で全ギルド員につなぎ『美人で美少女なお姫様助けて英雄になりたいバカは全員戦闘用意!!植物のように穏やかな人生送りたい奴はすっこんでろ!!』と伝達したところ全員から『参加するけど経緯kwsk』という<メッセージ>がミドリムシさんに行きました。


……何故私じゃないんでしょう?


とりあえず私が先行して(制止は振り切った)怪物とやらの居場所を探しに。

随分と巨大らしく、侵攻予測進路を辿ればすぐ見つかるはずなので発見次第連絡、監視しつつ場合によっては『秘策』によって包囲殲滅!


というのが当初の予定。


で到着したらなんか、無惨なことになってました。


見たこともない戦闘機が、明らか虐殺行為を働こうとしていたのでつい割って入りましたが……これどういった状況なんでしょう?


片方は胸から上しか残ってない巨大ロボ、建設現場とかにいそうな人々の死体。

片方は戦闘機ですか?ただどうやらバカみたいな火力をお持ちのようで。


「とりあえずどちらも動かないでください! 無駄な戦闘および抵抗は止めろ! 両手を挙げてその場に跪け! 命乞いをしろ!! 小僧から石をゲフンゲフン」


ちょっと間違えました。


『……消去』


真後ろからノイズのような声。


……え?あそこからどんな加速で飛べば後ろにというか

「私の後ろに立つんじゃねえ!」


カウンターテレポート!後ろを取られたら上を取り返す!倍返しだ!


「食らえゥオレのハンドクラッシャー!!」


位置的にコクピットありそうな場所を殴る!!


カッタい物同士がぶつかり合う音とともに戦闘機(?)は吹っ飛びました。


しかし驚きですね、私の一瞬の意識の隙間を縫って攻撃に移るとは……。


ていうか


「硬ぁ!?何あれすごい硬い!?私の拳でブッ壊れない戦闘機なんて初めて見ました!」


殴った手が痛いとかリアル除けば久しぶりですよ!


「おいバカ野郎!なに正面から戦おうとしてやがる!」

「てめーネットとか見ねえのかよ!!そいつは『バンディット』だぞ!」


と何だか下からピープーとやかましいですね!


「私攻略サイトとか絶対見ない派なんですよ!お前の常識が世の中の常識だと思ったら大間違いだゴルァ!!」


見ればロボの断面から作業員みたいな方々が叫んでます。


っと、さっきカッ飛んでいっちゃった戦闘機がこっちに突撃してきます!!


正面から来るかその意気やよし!ならこっちもサイコ・パゥワー(よくわからない力。私含めて誰にも見えないけど私は何となくどの辺にあるのかはわかる)を全身に纏って必殺のぉ!!


「サイコ・クラッシャー!!」


〈サイコキネシス〉によるドリル頭突き!地上にいたSRごと岩盤までぶち抜いた頭の固さを見せてやる!!


そうと知らぬ戦闘機はバカ正直に突っ込んでくる!


ゲハハハこれで貴様もお仕舞いよアやばいしぬしぬコレハ死ぬる!!


緊急回避てれぽぉ!!


「アブひぃ(意味不明)!!」


テレビのようにパッと切り替わる視界、その先には私のいたところをすんごいスピードで通過する戦闘機。


何でしょう、今あそこにいたら間違いなく死んでいた気がします!

アレ?もしかしてアイツ強かったりしますか……?

ひとりで来たの、間違いだったり……?


「よせ!!そいつの突撃はウチの団長のドリルより強力なんだ!!」

「『ますらを芸術家』ダ・ピッホ団長のだぞクソッタレ!!」


OH……かの突貫厨ダ・ピッホに勝ったってマジですか。


「って!? あなた達『ますらを建設』ですか!」


「なんだと思ってたんだこのバカ野郎!!」


誰がバカだお茶目と言え!


しかしこれで王国に迫っていた怪物の正体がわかりました。

あのドリルのくっついた巨大戦車ですね。

……まさかこの巨大ロボざんがいがそれなんですか?


「ヘイ! もしかしてあなた達コイツに潰されたってことですか?!」


「そうだよボケ!!」

「そこにいる『バンディット』にな!!」


『バンディット』ですか………………あ、記憶の底にちょっとだけ引っかかってるような無いような……?


あ、『バンディット』が彼らの方に向きました。


『廃品・処分・優先』


ノイズのような声、と思ったら腹からキャノーン?!

水面から浮かび上がるように砲台が機体表面から浮いてきました!


「サイコ・テレポからのバリアー!!」


サイコ・パぅワーで壁を作り砲弾を跳ね返します!


ていうかやっぱりあれ『ミニチュアウエポン』?!マジですか?!


あの携帯式砲台、ただし弾はすべて超特殊砲弾でコストがべらぼうに高い産廃!?

『リアルマネーが関わらない課金兵器』とまで言われるアレですか!?


『庇う?馬鹿?……バカ?』


っげ?!翼の下にびっしりフジツボみたいに!!


またアレはヤバい!!

一回目を防げたのは、実はかなり無茶してました。


簡単に言うと、バリア割れるたびに張りなおしてアイテムで強化して回復してと目まぐるしく動いてました。

つまり、アイテム切れますた\(^o^)/


「ええい!墜ちろカトンボ!」


サイコ・パぅワーをあんチクショウの周りに投網のように拡げて、あれ?拡げて、ん?……拡げ……て


「だああ!お前はグレたメタルか!!」


囲もうとする度にすり抜けるように動き回る!

キャノンも仕舞って嘲笑うように!


てかコイツ私のサイコパワーが見えるのですか!?


『無駄、無駄、無駄……ッ!?』


つ・か・ま・え・た(はぁと


高速での短距離転移(テレポート)、それで回り込んで〈サイコキネシス〉で抱き“絞め”るように、


「かったるいのは嫌いなんですよ……」


また何か出たら困るのでぴっちりと!ラバースーツみたいにギチギチに絞める!!


動けなくなったその無防備な背中にぃ!全力全壊、両手にサイコ・パワーをこめて!!


「この場でぶっ壊れてもらいます!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」


殴って殴って殴って殴って殴って殴ってぇ!!

吹き飛ばないように空中に固定してボコりまくる!!!


そうだ!サイキッカーは!!レベルを上げて物理で殴り殺すものだ!!


拳を叩き込むごとにコイツの装甲がギシギシ言い始める!


しゃオラァへっこましたァ!!


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ丈ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ才ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオウ!!!!」


トドメにホールド解除してぇええ!!!


「<アソパンチ>!!!」


私の拳が金色に光り、コイツの身体に叩き込まれて真下にカッ飛ばします。


コイツは地面に盛大な土砂煙を巻き上げて激突沈黙ゥ!!


ふぅ…………何ですか、今の。


私は今、何を殴ったんですか?


最初は間違いなく、金属に近い、硬いモノを殴っていました。


アイツの装甲もべっっっこべこにしてやりました。


ひしゃげにひしゃげさせてやりました。


……でもすぐ感触に違和感が出た。


まるで泥でも殴っているような――――――



ッ!



土砂煙の海から、ゆっくりとヤツが浮かび上がってきました。

ご丁寧に完全に元通りの姿で。

しかも、こっちを睨みつけてるような気が……


「やれやれ……私にびんびんってヤツですか」


なんとも、嫌な予感がひしひしと、死亡フラグのかほりがプンプンしてきます。

映画とかによくある、「あ、コイツここで(ボスの強さを魅せるために)死ぬな」みたいな空気です。


……ふざけてる場合ではなさそうですね。


『秘策』を使いますか……?

いえ、最初に見せられたあの加速力、私の力から逃げ切るデタラメな高機動、下手に囲んでは不味い。

最悪同士討ちになる。


なら逃げる?


不規則な機動ならこちらも負けない。

『ミニチュアキャノン』とて当たらなければ何とやら、逃げ切るのは可能。


一瞬だけ下にいる『ますらを建設』の連中を見る。

私が逃げれば、彼らは『バンディット』に殺されるでしょう(まぁ私にピキッてるみたいですから私を追いかけてくるかもですが)。


私は、人間の価値はその人の持つ『罪の数と軽重』で決まると考えています。


そして罪とは功では打ち消せないもの。

生涯その人の身体にまとわりつくもの。


彼らは既にこの世界の国を、ゲームと同じように破壊しました。

死んだ人や、家や家族を亡くした人もいるでしょう。

現実から見れば死刑が妥当です。


手間を省くことも考えれば―――――なんてね。


そんなこと、考えれるわけがありません

甘くてちょろい一般人なので。

それに『バンディット』自体が、この世界からすれば十分な脅威。


はっきり言って死にたくないけど、いや、ここで命をかけて戦うのは蛮勇か?


……ところで、先ほどから無視してましたが何ですかこのやかましいベルの音は?


音はさっきから微動だにしない『バンディット』から聞こえます。


と、チン……と目覚まし時計を止めるような音と同時にベルが止みました。


『タイムリミット……帰還……』


は?


『バンディット』が私や彼らに背を向けて去ろうとしています。


え、終わり?


私が動揺した一瞬で、あっという間に『バンディット』の姿が遠ざかり、夕闇の中へ見えなくなりました。


……。


…………。


せーのっ


「恥ずかしいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!」


うぁああああ恥ずかしくて死ねる!!何を覚悟を決めるみたいな流れ作ってんだ私は!!


ちょっと空中でゴロゴロゴロゴロジタバタジタバタジタバタジタバタ!!!!


ハァ、はぁ、ハァ、はぁ……ちょっと落ち着きましょう私。ビークール。


ひ、『秘策』使ってたらあんなの余裕で勝ってたし!


……さ、さて、<メニュー>を開いて、『秘策』を使いますか!


<ギルド長権限による召集>をな!!


ギルド長だけが使えるシステム権限!

『ダンジョン』及び敵対ギルド拠点以外におけるギルドメンバーの召喚機能!

本来はお友達を気軽に呼べるシステムだったのかもしれませんが、今回のように兵隊かき集めるのにも向いてます!

てかもっぱら平野での抗争で死に戻りした味方を素早く前線に呼ぶために使われてます!


空中に転移用の巨大魔法陣が出現し(ちなみに出現エフェクトはいじれます)、そこに完全武装のギルメンが次々と現れます!!


そう!『ホワイトナイツ』の代名詞的存在!!


真っ白に光放つ雄々しい身体、鋭く捻じれた立派な一角、叡智と慈愛を宿す穏やかな瞳は今、戦いの予兆に炎を宿しています。

魔法陣から力強く駆け出し、大きく翼を広げて空を駆ける。

そう、それはペガサス!


そしてそのハンドルを握るは、白ランを模した全身鎧を纏い、紅い裏地の白いマントを翻した――――


「ばるんばるんばるんばるん!!」

「ぱらりらぱらりらぱらりらぱらりらー!!」

「ぶるるるーぶるるるーん!!」


……走り屋ども。

手に握るは釘バット、角材、鉄パイプ、木刀のいずれか。

ペガサスの馬具は、なんかバイクっぽい。手綱じゃなくてハンドル乗っけてますし。


「「「「俺たち『穂輪慰徒南慰津(ホワイトナイツ)兵我鎖守(ペガサス)隊』!!夜露死苦ゥ!!!」」」」

「「「「ヘッドの御呼びとあらば即カチコミ!!どことだって戦争するぜ!!」」」」


ちなみにマントには紅糸で『穂輪慰徒南慰津』『哀羅武あいらぶ威寅薙誉宇いいんちよう』と刺繍されてます。


おっと、なんか騒ぎ出しましたね。


「うぉおお!!すげえ!怪物が真っ二つだ!マジすげぇ!!」

「これヘッドがマジひとりでやったんですか!?」

「え、違」

「やべぇええ!!ヘッドマジやべぇええ!!」

「さっすがヘッドマジ最強っすね!!」

「だ、だから違」

「ひょおおおお前ら走れぇえ!!」

「うぉおおばるんばるんばるんばるんばるるるる!!」


あぁぁぁまた暴走を……何故ぐるぐる走るし。


……その、あの、彼らはそのー、ホラ、ね?

昔シメたら何か懐かれまして……ね?

いえあの、悪い方々ではないんですが……結構気も合いますし、ただ頭がアレというか……とにかく!


「えー、『ますらを建設』の皆さん! あなた達は包囲されてます! 抵抗してもしなくてもとりあえず監獄(メテオ)にブチ込んでやる! 10分だ! 10分以内に投降しろ!」


下の作業員、『自由同盟』の一席である『ますらを建設』に勧告を行います。


……こう言うのはアレですが、ラッキーでしたね。

『バンディット』との戦闘で彼らは満身創痍。

対しこちらは完全無傷で数も優勢。

これなら絶対逃がしません。


「い・い・ん・ちょ・お?」


ッ?! 後ろに殺気!!?


これはマズイって「ぎぃやああああああ!!!!割れます!せっかく死線を潜り抜けたのに味方に殺される!!!痛い痛いイタいいたいってばよぉおおお!!!」


「制止も<コール>も無視しやがりましたね委員長?まだゲーム感覚で突撃されてるんですか委員長?あなたもし死んだらどうするつもりだったんですか委員長?答えてくださいよ委員長?」


「よきにはからえってマジこれヤバいいい!!」


っだぁ!!何とかテレポして振り向けば、そこにはやっぱり黒い笑みのミドルさん。


「うぇーいとうぇーいと、落ち着いてください。クールにいきましょう、ね?」


黒い笑顔に押されてじりじりと(空中を)後退していると、


「心配……した…」


誰かの腕の中に閉じ込められました。


「ッッッ!!???」


反射的に頭を後ろに振って顎に食らわせます!!

即座にテレポート! ミドルさんの横に移動します!

ぞわっとした!! 背筋どころか全身ぞわっとした!!


「なんで……逃げる?……姫」


だというのにこいつはさらに距離を詰めて私の手を恭しく握ってくる!


ぐぁああ鳥肌が!!


「私に!」


えぐり込むボディ!


「姫プレイの!!」


右目に親指突っ込むストレート!!


「趣味は!!!」


カチ上げるアッパー!!

浮いた体をサイコ・パワーで引っ掴んで戻しぃ――――


「ねぇ!!!!」


頭突きハンマー!!


幸せそうな顔をしたまま、華麗に吹っ飛んだ野郎は、飛ばされた先にいた白いドラゴンに口でキャッチされました。


白銀(ミスリル)色の、間接まで隙間なく防御した鎧の騎士。

だというのに武装はやたら長い抜身の直刀。

顔? イケメンですよイケメン。

黒い短髪で、暗い瞳のヤンデル系なイケメン。


『徹刀徹尾』レイ。


ペガサス隊の実働隊長で、何故かドラゴンに乗っています。


こいつは私のリアルでの友人です。


なんていうか、彼が校内でいじめを受けていた(イケメンなのに?!)のを、『アメリカ式平和的な・・・・解決』をした結果懐かれてしまいました。


「姫……最高……」


「ええい! 私に触りたければTSして出直しやがれ!」


「「「「さすがヘッド! 優男にゃなびかねぇ!!」」」」


「ヘッドって呼ぶな!!」


あぁもう、どっと疲れました。


こうなるからあまり動かしたくないんですよこいつら。


おっと、下で動きがありました。


彼らの中から一人、頭から血を流した男が出てきました。


「頼みが……頼みがある!!」


「何ですかー!!」


距離の関係から叫びあいながらの話し合いです。


すると彼は、いえ彼らは血を吐くように叫び、悔し涙を流しだしました。


「頼む委員長!『バンディット』を、あのクソッタレを殺してくれ!」

「俺たちじゃあ……団長の仇をとれねえんだ!」

「俺たちはテロリストだ!だからこんなこと言う資格はないことはわかってる!!」

「だけどよぉ!それでも、それでもあのクソッタレだけは、俺たちを、団長を笑いやがったアイツだけは!!」


……男泣きです。


やはりダ・ピッホは死亡していましたか……。


「……わかりました。アイツは危険な存在です、私としても放ってはおけません。次の機会があれば必ずぶっ壊して捕まえましょう」


「すまねえ……恩に着る」

「俺たちは投降する。ブタ箱に入れるも殺すも好きにしてくれ……」


そう言って彼らはその場に崩れ落ちました。


げっそりと老け込んで、疲れ切った表情を浮かべて。


彼らが降伏を受け入れた次の瞬間、私の頭の中に聞きなれたファンファーレが鳴り、機械音声が響きました。


<『ますらを建設』が『ホワイトナイツ』に降伏、これにより『ますらを建設』の全ての共有資金、共有アイテム、ギルドポイント、ギルドシンボルは『ホワイトナイツ』に移ります。また『ますらを建設』はランクをFまで落とします>

<『ますらを建設』のギルド長、副ギルド長、ギルドシンボルが設定されていません。暫定的にこちらで設定します>


「システムメッセージ……この世界でも鳴るんですか……」


システムは生きているのに、ログアウトはできない?


いえそもそもこのシステムって何なんですか?


それに……『バンディット』……あんなものがどうしてこの世界に?


……考えてもしょうがないです。


我々がどうしてこの世界に来たのかすらわからないんですから。


……駄目ですね、考えるのは嫌いです。

こういうのはミドルさんがうだうだ理由を付けるものです。


彼に丸投げするとしましょう。


「しかし……気がかりなことばかり増えます」


「どうかしましたか委員長?」


「……ミドリさん、『バンディット』って、ご存知ですか?詳しく情報が欲しいんです」


「ミドルです。『バンディット』といえばここ一年で出るようになったナニカですね。なんでもすさまじく強い戦闘機で、目についたものを片端から破壊するのだとか。……まさかこの惨状は」


流石ミドリさん、話が早い。


「正解です。彼らは『バンディット』に遭遇し、壊滅させられたようです。下でしょっ引かれてるのがその僅かな生き残りです」


「『バンディット』がこの世界に……急ぎこのことを他のギルドの方々に連絡しないと!」


「ええ、それはお願いします。私はやらなくてはならないことがあります」


「え、それは?」


決まってんじゃないですか。


「ドワーフのお姫様のシャリィちゃん(14歳、ロリッ子だ!!)にご褒美もらうんですよ!!」





―――この後、魔導書のカドで頭をカチ割られたのは言うまでもない。

委員長出すとシリアスが死ぬ……野郎むちゃくちゃだ!


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