芸術は破壊である。名を遺した者は……
後書きに実験で書いた掲示板風小説を入れてみました。
見てね!
男がいた。
男は天才だった。
男は“芸術”の天才だった。
筆を持てば万人の心を奪う絵を描いた。
ノミを持てばただの石から誰もが魅了される像を取り出した。
鉛筆と定規を持てば神すら宿る教会を設計建築した。
羽根ペンと紙を持てば宇宙戦争をも止める名曲を書き上げた。
素手ならば土をこね、世界界遺産級の名茶器を焼き上げた。
「弾幕! 弾幕を張れ!! 当たらなくてもいいから〈スキル〉で弾幕を!!」
「三四、三七、四一砲搭沈黙!!」
「八番通路に火災発生!!」
「手の空いてる奴は現場に向かえ!!」
男は造り上げるのが、創り上げるのが好きだった。
男は天才にありがちな、方向性を見失うなどという三流なこともない、完璧な芸術家だった。
まさに芸術の為に生まれてきた存在。
その手は常に何かを創り出していた。
男の心は想像力と創造性に溢れ、未知なる美への好奇心で満ちていた。
「隊長! 応答してくれ!!隊長!」
「スギタ、ロスト! ジェニファー、ロスト! 第四部隊全滅!!」
「第三、第八部隊もだクソッタレ!!」
「嘘だろ……112機のスーパーロボットが、10分持たずに全滅……!?」
ある日のことだ。
男はとある世界で教会を設計、建築していた。
無事に教会は完成し、男はひとり、己の作品に酔いしれていた。
外観の見事な神秘性を持ち歩いているスケッチブックに描き、教会内を見て回る。
一階から二階、まだ誰もいない部屋や懺悔室、厠にいたるまで見て回った。
そして最後に、男が特に手をかけた大ホールに足を運び、数列にわたって並べられた長椅子の最前席を通り越して見事なステンドグラスの前に立った。
そのステンドグラスも男の作品で、色ガラス一枚一枚を材料から選び抜いて創ったものだ。
昼の明るい陽射しによって輝く、赤子を自愛の笑みを浮かべて抱く女神が描かれたステンドグラス、その光を浴びながら男は目を閉じた。
男は己の仕事に満足していた。
男は己の芸術に満たされていた。
男は未来永劫残るであろう己の作品たちに誇りを持っていた。
「ちくしょう砲撃が当たらねえ!?」
「まさか……ッ!? |火器管制システム(FCS)にハッキング!!」
「バカないつの間に!!?」
「メインコンピューターにもハッキングあり!! クソッ! プロテクトがほとんど剥がされてる!!」
「ダミーシステムを展開……駄目だ! 通じてない!」
「電子精霊群を全部解凍しろ! スペアもだ!!」
「了か……これは?! で、電子精霊群が、攻撃されています!!解凍間に合いません!」
「このままではシステムが乗っ取られます!!」
「マニュアル操作に切り替えろ! コンピューターとの接続を全て切るんだ!!」
男は目を開き、踵を返して歩き出した。
次は何を創ろうか、そんなことを思いながら。
しかし、踏み出した歩みは一歩目で止まってしまう。
男の耳が奇妙な音をとらえたのだ。
怪訝に思った男は音のする方、ステンドグラスの方を振り向いた。
だがその瞬間にはもう、その音の発生源は、音と爆弾だけを置き去りに飛び去った後だった。
その教会は、空爆されたのだ。
理由は単純、その教会の神を信仰している国と、別の神を信仰している国が宗教戦争を始めたのだ。
こうして稀代の芸術家の生涯は閉じた。
『こちら第九工兵部隊! 警備ロボットと作業ロボットが襲ってきやがった!!』
『第二工兵部隊だ! ロボットに襲撃されて身動きが取れない!! そっちでシステムを切れないのか!?』
「やられた!! ヤロウ先にあっちを乗っ取ってやがったんだ!!」
「どこも手一杯だ!! 構わねえからスクラップにしちまえ!! ガラクタなんぞに負けたらぶっ殺すからな!!!」
『言ってろボケ!! てめぇらはさっさとあのバケモノを叩き落とせよ!! 相手は一機だろうが!!』
男がいた。
男は空爆を受けていた。
いや、その瞬間に空爆を受けていたなどということは、無論のこと本人はわかっていなかった。
だが、男は見た。
己が創り上げた芸術が、閃光とともに木端微塵になる様を。
あれほど手塩にかけて創ったステンドグラスが、あっけなく粉々になる瞬間を。
その光景は、その一瞬は、男の生涯で最も絶望的だった。
そしてそれは、同時に最も美しかった。
目も眩む閃光の中、ステンドグラスが無数の小さな欠片となりキラキラと煌めく。
白塗りの壁というキャンバスに爆風の絵画が描かれる。
それは正に、破壊、そして滅びという名の“美”だった。
こうして男はその手にドリルを持ち、新たな芸術の領域を開拓していくのだった。
「二五一砲搭沈黙!! ……ちくしょう……もうヤツに対抗できる砲台が無え……」
「弾薬庫に火災だと!?バカな!?あそこは一番分厚い装甲に……ロボットか!!」
『自爆だと?! ざっけんなよガラク』
「ッ!? 第二工兵部隊応答しろ! オイッ! オイッ!! ……クソォッ!!」
「機関部大破!! もう持ちません!!」
廃世界取り壊し用要塞車両、『玄武』指令室。
そこは絶望に包まれていた。
部下たちの悲鳴を聞きながら、ダ・ピッホは思う。
(あぁ……)
(やはり素晴らしいでR……)
(皆と建造していた時、初めて走り出した時、艱難辛苦をぶち抜いた時……積み重ねられた数多の想いがたった一時で崩壊していく有終の美……なんと素晴らしい)
そんなことをズタボロの身体のままつらつらと思う、が。
「……だがッ!!それは今じゃねえでアアアルゥゥ!!!!」
罅が走り、うち一本はなくなっている状態の三つ足でダ・ピッホは立ち上がった。
胴体部にも穴が開いているが、まだまだ気合いは十分だ。
絶望に包まれていたブリッジが息を吹き返す。
「団長!!」
「団長! 気がついたんスね!!」
「走馬灯が駆け巡ったでRがなんとかなったでR!! 状況、は最悪そうでRな」
周囲を見渡せど全員満身創痍。
既にこの艦橋自体、何度も攻撃を喰らっているのだ。
そして皆、ダ・ピッホを見る。
――――先陣を切ることを、求めている。
『ますらを建設』ギルド長、、『ますらを芸術家』ダ・ピッホはそれに応えた。
「最後の勝負を、挑むでR」
その言葉にブリッジがざわめく。
「最後の勝負って……まさか?!」
「む、無茶だ団長!アレじゃヤツの機動に追い付けない!!」
「倒せないッスよそれじゃあ!!」
返答は否定、ダ・ピッホ自身追いつけないのは分かっている。
だが、追いつけないなら、追い込めばいい。
「いや、ヤツは必ず乗ってくるでR……そうなのであろう?! えぇバケモノ!!」
静まりかえったブリッジに、スピーカーから声が這い出てきた。
『アハ』
それは笑い声だった。
『あはは』
それは女の声だった。
『ふははは』
それは男の声だった。
『おほほほ』
老婆の、
『ホッホッホ』
老人の、
『キャハハ』
少女の、
『アッハッハッハ』
少年の、
幾重にも重なる、“笑い声”。
『アハハ『ぎひヒひ『きゃはははは『ケケケケケ『カッカッカッカ『グハハハハ『ははハハハはははははハハはははアハハはははは!!!!!』
女の、男の、老婆の、老人の、少女の、少年の、上品で、下賤で、洗練された、醜く、可愛らしい、賞賛して、嘲笑するような――――だが共通して耳を塞ぎたくなるほどおぞましい。
その笑い声は、嬌声は、馬鹿笑いは、哄笑は、重なり過ぎて最早ノイズだ。
「ンだよ……これ…!?」
「気持ちワリィ……」
「つーか……チッ、強制接続されたうえでコンピューター乗っ取られてらぁ」
「オイオイ……逃がさねえってかバケモンが」
これには誰もが顔を青くしてしまう。
ダ・ピッホは砕け散った窓まで近寄ると、忌々しげにソイツを睨み付けた。
ソイツは空を旋回し、20メートルほど離れた位置に停止、鼻先をこちらに向けた状態で滞空した。
ソイツは、あえて何かと言うならば、おそらく“戦闘機”と呼べる形状だった。
ライフルの弾丸のような流線型のライン、刃のように鋭角な機翼、ジェットエンジンは胴と翼で計三つ。
機体の先端には真っ直ぐに細く突き出た針のような物体。
これだけ聞けばただの近代的な戦闘機だ。
だが、この戦闘機にはコックピットが存在しなかった。
次に一切の武装がなかった。機銃の発射口も、空対空ミサイルも存在していなかった。
最後に、戦闘機としてはとても小さく、人間大ほどの大きさしかなかった。
まさに速度の為だけの形状。
もはやこれ自体をミサイルに例えた方が良いのかもしれない。
そして極めつけは輝いていたことだろう。
青く、蒼く、光り輝いていた。
それは空の高さより青く、海の深さより蒼い、気品すら感じられる蒼さだった。
(『バンディット』……噂には聞いていたが、ここまでとは…!)
『バンディット』
それは、『ワ−ルド・オブ・ロード』の空に突如出現した所属不明戦闘機。
その正体は不明、ユニークボスとも、イベントの入り口とも、イカレたPKとも、『英雄達』の一柱とも言われている。
その目的は不明、アイテムの強奪とも、戦闘そのものとも言われている。
その拠点は不明、いつもどこかから湧き出るように離陸し、追跡者はすべて消してから去っていく。
ただわかっているのは、とてつもなく好戦的であり、どこからともなく襲来し、蹂躙の限りを尽くして去っていく、『災害』のような存在だということだけ。
その蹂躙に例外はなく、プレイヤーもNPCも区別なく攻撃する。
誰にとっても明確に敵である。
ゆえにそいつは、『敵影』と呼ばれるようになった。
そんな存在が、噂に違わずいきなり突っ込んできたのは、ほんの30分前のこと。
横ばいからの突然の奇襲、キャタピラを破壊され行動不能に。
しかしこの時点では誰も危機感など抱いていなかった。
むしろ「かかってこい!」とすら思っていた。
『バンディット』は目撃例だけは多々あり、攻撃手段はよく研究されている。
ネットでは『攻略組』による『バンディット』を狩るためのコミュニティすら存在するのだ。
暫定的な機体性能や主な攻撃手段はバレている。
その上こちらはギルドホームである『玄武』にいる。
有利な条件は揃って、いた。
だが。
迎撃に出たダ・ピッホは無残に撃墜され、遅れて出撃してきたSR部隊にカバーされながら回収された。
そのSR部隊も今や全滅、高角砲台は全て沈黙し、『玄武』は内外の区別なくボロボロにされた。
『自由同盟』の一席が、これほどの短時間で、たった一機の化け物に滅ぼされようとしていた。
(統計を遥かに超える機体性能、非常に高度な電子攻撃、さらに喋るとは……今まで能力を隠して戦ってきていたわけか。まったく、上質な素材でR)
だが、ダ・ピッホはまだ諦めてなどいなかった。
彼は天才だ。
芸術の天才だ。
素材も道具も状況も選ばぬ『天才芸術家』だ。
ゆえにその持てる才能全てを発揮し、『バンディット』を芸術にせんと頭を回転させる。
状況は最悪、目の前で悠々と余裕かます化け物は間違いなく自分たちより強い。
弱点は不明、正体も不明。そもそもプレイヤーかNPCかも……
(……!?まて、まてよ!!?)
そして彼の芸術家として磨かれた、感性……とでも言うべき何かが、この『バンディット』から人間に近い悪意のようなものを感じ取った。
猫が鼠を嬲るような、シャチがアシカで遊ぶような、とかく強者が弱者を意図して踏み躙ろうとするような悪意。
どちらかと言えば単純な思考を持つダ・ピッホにとっては、はっきりと邪悪と断じることのできる感覚。
こちらの手をひとつひとつ潰していくこの戦い方、きっと決着をつけるならもっと早い時点でできたであろうにそれをしない非効率的な戦い方。
間違いなく、相手は『人間』だ。
(このゲームをプレイしているかは別として)エルフでも獣人でも天使でも悪魔でもない、人間のプレイヤーだ。
ならば手はある。
ダ・ピッホは胸をそらし、傲然と言い放った。
「貴様に勝負を申し込む。我ら『ますらを建設』最後の一撃、最強の一撃を喰らうがいい!!」
ボロボロの身体で、しかし溢れる覇気をたたきつけながらの一喝。
『最強……?』
それに対し、スピーカーからは、大勢の人間が一斉に喋っているような、ノイズのような声で返答が。
『戯言、笑止、万死』
その返答は先の嘲りと同様、面白がっているような声だった。
『……決闘、了承』
『バンディット』は艦橋の周りを一度旋回し、かなり遠くに飛び離れ停止した。
「ッ!! コンピュータ、コントロールが戻りました!!」
さらにシステムの復旧。
仕切り直しというわけだ。
そしてあれほど離れた理由はおそらく、奴が潰さなかった、この『玄武』の主砲である超超巨大砲台こそ『最後の一撃』と考えたからだろう。
今まで仰角、旋回の関係から『脅威ではない』と無視されていたこの主砲が、『ますらを建設』の希望なのだと。
だがそれは、大きな誤りである。
(勝ったでR!!)
ダ・ピッホは『玄武』の中枢、そのさらに最深部へと駆け込んだ。
そこには、円錐形の“窪み”があった。
ダ・ピッホは迷うことなく頭のドリルを“窪み”へと嵌めた。
ぴったりと嵌まったダ・ピッホは、両腕のロケットブースターに点火した。
さらに足(破損したパーツを除く)が変形、現れた回転加速用のブースターも点火される。
「お、おおおおオオオオオオオオ!!!!」
ゆっくりと、しかし確実に回転を開始した小さなドリル。それはいつしか火花を散らしながら高速に到達する。
そしてその小さなドリルを中心に、内部で噛み合った一周り大きなサイズのギアが回転、それの回転に合わせてさらに大きなギアが―――。
歯車が機構を動かし、機構が『玄武』の巨体を鳴動させ、装甲が移動し、仕掛けを起動させる。
その仕掛けは、質量保存則を無視した、あり得ない変形。
キャタピラが『足』に、車体は『胴』に、『胴』からは『腕』が、超超巨大戦車砲は砲身が極端に短くなり『背中』にまわされ、残りの戦車砲は『間接』各部に配備される。
そして司令塔は『胴』内部に格納され、代わりに安全ヘルメット(合言葉は破壊第一!)を被る仁王を象った『頭部』が。
全ての変形が完了したとき、鋼鉄の仁王が屹立していた。
これぞ『玄武』の真の姿、ダ・ピッホのカンストステータスによる超回転をエンジンにした超巨大スーパーロボット、『ゲンブ』である。
いまやダ・ピッホは『ゲンブ』と一体化し、『思考操作120%』により意のままにこれを操ることができるのだ!
『いざ!その慢心、芸術に変えてくれるでR!!』
そう言って『ゲンブ』は、右手に超超超巨大ドリルを構えた。
『玄武』前面に備えられていた超超超巨大ドリル、その銘は『ジャガーノート』。
『破壊』の摂理を司る、『オリジンクラスアイテム』!!
このドリルに、例え斜面だけだろうと触れた存在は、例えどれだけ硬かろうと、例えどれだけ柔かろうと、例えどれだけ強固な生命だろうと、例えどれだけ希薄な幽体だろうと。
原子レベルで粉々に破壊される。
ただし回転していなければならないという条件があるうえ、『玄武』の状態では、この敵に当てるどころか掠らせることすらできないのはわかりきっていた。
ゆえに挑発した。
『バンディット』の持つ、傲慢とも言える悪意を焚き付けた。
そして案の定、『バンディット』は乗ってきた。
いや乗らざるを得ないのだ。
今の今まで圧倒していた相手に、今更弱みを見せられるわけがないのだ。
(神経質なまでにこちらの手を潰していたからな……プライドのために全てを台無しにする人間の思考でR! )
『オオオォォォォォォォオ!!!!!』
『ジャガーノート』が唸りをあげて目覚める。
同時に『バンディット』も三つのブースターに点火、突撃を開始する。
『ゼタァ!!』
右腕のドリルが槍のごとく構えられ、回転が始まる。
大気が抉られ掻き混ぜられ、嵐のごとく唸りをあげる。
『「「「ドリルゥ!!!!」」」』
その巨体が信じられない速度で走りだし、背中の超超巨大砲台も火山噴火のごとき火焔を吐いた。
『ゲンブ』内のギルド員達も、ダ・ピッホに合わせて叫ぶ。
一歩ごとに地震がおき、大地は『ジャガーノート』の『破壊』の余波だけで崩壊していく。
『「「「「「「「「「「「「ブレェェェエエエエエエエエエエエエエイク!!!!!!」」」」」」」」」」」」』
大気も、大地も、世界そのものすら揺れる。
さらに衝突の瞬間、『ジャガーノート』が巨大化した。
長さはもちろん幅まで変わり、『ゲンブ』の前面を隠す盾のようになる。
これではドリルの横をすり抜けるのは不可能。
互いに全力での突撃、既に回避も不可能な距離。
触れただけで万物を『破壊』する暴力が、不可避の速度で化物に必殺をブチ込んだ。
その勢いはすぐには止まることはなく、さらに数キロに渡って前進し、ようやく『ジャガーノート』が眠りにつく。
よくもまあそんなところまで進んだものだ。
もう胸から上しか残っていないのに。
むごたらしく破壊された『ゲンブ』は、エネルギーの供給源を絶たれた『ジャガーノート』が自然に止まるまで地面を引きずられ、さらにひどい有様になった。
(こんな…馬鹿……な)
ダ・ピッホは何が起きたかを全て認識していた。
それ故に到底信じられなかった。
激突の瞬間、不可避の一撃を、アレは回避したのだ。
まともではない機動で!!
まずあの速度からは考えられないような急停止、ドリフトでもするかのように機首を上に向け急上昇、機体がドリルの効果範囲を越えたところで再び急停止ドリフト、裏返ったまま急降下で突撃を再開。
この間、刹那。
そしてそのまま、後ろから『ゲンブ』の装甲をぶち抜いて……何をした?
いったい我々は、何をされた?
何をされたら、この巨大SRが真っ二つになるのだ?
いやそもそも、装甲自体どうやって貫いた?
自分達はいったい、何と戦い、何をされ、何故殺されようとしているのだ?
そこまで考え、ダ・ピッホは体を引っ張られた。
いや、引きずり出された。
両断された胴体の断面から引きずり出され、空中高くに放り投げられる。
咄嗟にブースターを起動しようとして、それができるはずがないことを悟る。
首一つでできることなどないのだから。
回る視界、『バンディット』の姿が映る。
機首をこちらに向けて突っ込んでくる。
太陽の輝きを反射し、宝石のごとく煌いている。
(あぁ……やはり、やはり滅びは、破壊は―――)
それは、いつか見た光景と同じように。
(――――――美しい)
それが、男が最期に見た光景。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそったれ……!」
「チクショウ、が…」
「だん、ちょう……団長ぉおおおお!!」
『ゲンブ』上半身内部。
あちこちから絶望の声が、慟哭が聞こえてくる。
ダ・ピッホの死に様は、『ゲンブ』内部のモニターにもしっかりと映し出されていた。
無駄とわかっていながらも叫ばずには、祈らずにはいられなかった。
そしてダ・ピッホが死んだ今、彼らは支柱を失って放心していた。
まだ僅かに残っていた気力をかき集めて外に飛び出した者達は、一人残らずあのスピードの前に切り裂かれ、死体の残骸をモニターに映し続けている。
と、どこからか声が聞こえてきた。
『憤怒』
少女の、
『悲哀』
少年の、
『憎悪』
老婆の、
『恐怖』
老人の、
『失意』
労るように誠実な、
『挫折』
見下すように傲慢な、
『絶望』
貴族のように上品な、
『絶望、絶望、絶望』
匪賊のように野卑な、
『喜悦、快感、最高、絶頂!』
勝利への、凱歌。
ぶるぶると、恍惚に浸るように蒼い機体が震える。
『……帰還・帰路・帰宅♪』
軽くジェットを吹かし、『ゲンブ』から離れていく。
ある程度離れてターン、機首を『ゲンブ』に向けて静止。
そう、知っているのだソイツは。
『ゲンブ』の中にまだ生き残りがいると。
そして、生かしておく意味がないと。
『後顧の憂い、後腐れなく、殺処分』
いつの間にか、機翼を埋め尽くすように小さな何かが出現していた。
それは、小さな砲台だった。
今ではもう時代遅れとされる、古き良き大艦巨砲主義時代の戦艦に搭載されてそうな三連装砲、のミニチュア。
そんなものがびっしりと機翼の上側にも下側にもあり、その小さな砲口を彼らに向けている。
さらに背部では5センチ四方のハッチが30ほどパカパカと開き、内部にある計25個の小さな穴を晒しだす。
その穴すべてから、鉛筆のような小ささのミサイル(横にICBMと書かれている)が発射された。
計750発のミニチュアミサイルは、高速で天空高くへ消えていく。
同時に機翼下のミニチュア砲台も一斉に火を吹いた。
発射された小さな小さなオモチャの弾。
それが一瞬でホンモノの大きさに戻った。
まるで砲弾の壁が弾けて飛んでくるかのごとし。
オモチャの巨砲から発射された、ホンモノの砲弾の嵐。
それが乱射される。
砲弾の雨がしこたま降り注ぐ。
そしてさらに、上空彼方より先程飛んでいった電柱のような大型ミサイル750発が帰ってきた。
地上にあるもの全てを区別なく破壊せんと爆風の嵐が吹き荒ぶ。
しかし砲撃という暴力は止むことなく、むしろ激しさが増した。
砲撃する。
砲撃する。
砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。砲撃する。
無慈悲な、ただただ無慈悲な攻撃は、まるで作業のように続けられる。
そう、ただの処分作業なのだ、コイツにとっては。
周囲一帯根こそぎに耕さんとした砲撃は、たっぷり一分間行われた。
『……』
ようやく砲撃が止み、その時には既に機翼にあった砲台は全て消えていた。
そしてもうもうと巻き上がる爆炎と土煙を眼下に、『バンディット』はその場に留まっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方その頃、『モンストロ』管制室。
そこには、白い白い、光が凝縮したかのような球体があった。
もしこの場に誰かがいて、この球体に触れようとしたら、きっと驚くだろう。
何故ならば、触れられないから。
触れようとしても反対側に突き抜けるのだ。
きっと横から見れば腕が伸びたかのようなおかしな光景になるだろう。
この球体の正体は、ラヴの〈時空〉の種族スキルを使った、触ることすら拒絶する結界だ。
その結界内部、ラヴは今、仰向けに寝転がってされるがままのフロストの上に跨がっていた。
てらてらと濡れた真っ赤な舌をでろりと伸ばし、ビクビクと脈動するソレに這わせる。
「しぃぃぃぃる……ハァァ……あつぅい……あは♪ 脈打ってるぅ……」
ラヴは、自らのソレを手にし、
「いれるね……んっ…」
ゆっくりと刺し込んでいく。
「ふふ、ぐちゃぐちゃだ……動くよ」
そう言ってラヴはゆっくりと前後に動かす。
ゆっくりと、深く、大きく。
ねばつくような水音が結合部から聞こえてくる。
そして動きが徐々に速く、激しくなっていく。
「あぁ!もう我慢できない! 出すよ!! 空っぽになるまで全部、中に出すよ!!」
一際大きく突きこむと、ラヴは引き金を引いた。
発射された徹甲弾がフロストのぐちゃぐちゃになった身体の中を掻き荒らす。
続けて何度も引き金が引かれる。
宣言通り、弾倉が空っぽになるまで腹の中に撃ち出し続けるのだろう。
やがて弾倉が空っぽになると、ラヴはフロストの身体をえぐっていたマチェットを抜く。
恍惚とした表情でぶるりと震え、ラヴは磔にしたフロストを抱きしめた。
「あぁ……愛しい、愛しいよぉ 。すっごく満たされる……」
再び唇を割ってでろりと舌が伸びる。
ぐにぐにと蠢きながらフロストの首筋を這い回る。
「懐かしいな……君が特別だと初めて知った日も、こうやって一緒に過ごしたよね…」
首の皮の一部をそぎ落とし、露わにされた筋繊維の一本一本を、れろり、れろりと舐めあげる。
そうしているうちに、ふと思い出したようにラヴは呟いた。
「……そうだ、“懐かしい”と言えば、今日懐かしい子に会ったよ。元気そうで安心した……」
「ある意味では彼女も特別だ……うん、特別っちゃあ特別な存在だ。だってほら、食べ損ねたんだよね。喰らおうとした日に逃げられたんだ」
「完璧に調理して、あとは喰らうだけってところで、ね」
「くふふっ……まったく特別な兄妹だよ……つくづく、ね」
「あぁごめんよ、二人っきりなのに他の人の話なんて野暮だった」
上機嫌に話していたラヴだったが、フロストが返事をしないと慌てたように話題を変えた。
だがフロストはそれよりどうしても気になっていることがあった。
(ボスは何故、全裸なのだろう? …………内臓のほとんどがミンチの状態でよくこんな下らんことを気にできるな、俺。慣れとは恐ろしいと言ったところか……まずい、痛みが無くなってきた)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『バンディット』は、未だ舞い上がる黒煙を観察していた。
そしてポツリと。
『非常に、不愉快』
もうもうと巻き上がる黒煙、それが晴れたとき、『バンディット』はノイズをあげた。
そこには思念によって空間をねじ曲げて造られた壁。
その壁に護られた『ゲンブ』内部で、生き残りたちが呻くように、戦慄とともにその名を口にする。
「ば、バカだ……!」
「『常識ブレイカー』」
「『首折り刑事』……!」
「『委員長と書いてバカと読む』」
「……『ドーブツ委員長』」
「『鉄拳委員長』……!」
そう、その少女こそ―――――――!!
「それ以上の蛮行は!法治ギルド『ホワイトナイツ』ギルド長にして『THE委員長』であるこのサチが許しません!!」
威風堂々、雄々しく空中に立ち塞がる少女がいた。
「バカバカうるさぁああああい!!バカって言う方がバカなんですよこのバカ!!」
001.名無しの攻略組さん
ここは『バンディット』をぶっ●すために情報を共有するスレです。
次スレは>950が立ててください。
・
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・
・
・
601.名無しの攻略組さん
ちくせうまた刀折られた
602.名無しの攻略組さん
また撃墜されたお
603.名無しの攻略組さん
鎧もプライドも木っ端微塵だぜ!……しにたい
604.名無しの攻略組さん
極大魔法山ほどぶつけたのにおちねえ。何なんだアレ...。
605.名無しの攻略組さん
>604
あれ?新人さん?あいつ魔法吸収するよ?
606.名無しの攻略組さん
>605
mjdk!?それなんてチート!?
607.名無しの攻略組さん
>606
今どき吸収だの反射だのはフツーだお?
608.名無しの攻略組さん
>607
魔法使いにとっちゃ吸収だの反射だのするやつはみんなファッキンチーター野郎だ!
609.名無しの攻略組さん
>608
負け犬乙www
対策もできんのかチミは。近接職鍛えろや
610.名無しの攻略組さん
それよりヤバイのは防御力だよ。斬っても突いても殴っても効果があるように感じない。
611.名無しの攻略組さん
実はアレは運営の放つ嫌がらせである可能性が微レ存……?
612.名無しの攻略組さん
『バンディット』の正体一覧
・『英雄達』のひとり
・SR
・殲車
・運営からの愛
・バグ
・イベントボス
・実は幻覚である
・シュタインズゲートの選択
・アレを倒したら異世界トリップ
613.名無しの攻略組さん
>612
トリップで
614.名無しの攻略組さん
>612
トリップで
615.名無しの攻略組さん
>612
トリップで
616.名無しの攻略組さん
>613-615
廃人どもがwww
617.名無しの攻略組さん
つか火力こそチートだろ。
搭載してんの『ミニチュアウエポン』シリーズだよな?
618.名無しの攻略組さん
え?ミニコン(難聴)だって?なんぞそれ
619.名無しの攻略組さん
>618
ググれ
620.名無しの攻略組さん
>618
産廃兵器
621.名無しの攻略組さん
>618
浪漫はあるがどうやっても産廃兵器
622.名無しの攻略組さん
>618
コスパ最悪の産廃。
623.名無しの攻略組さん
つか戦闘機のくせに必殺が体当たりってなんなんだよチクショー
624.名無しの攻略組さん
? 戦闘機で体当りっておかしいか?あんな速いんだから最後は格闘するんじゃねえの?
625.名無しの攻略組さん
>624
お前どこ世界出身?絶対科学系じゃねえよな、魔導ネット使ってログインしてるクチだよな?
626.名無しの攻略組さん
>624
お前戦闘機どころか飛行機すらこのゲームで初めて見た人だろ
ドラゴンじゃなくて戦車に感動しただろ?
627.名無しの攻略組さん
そうだけど?
628.名無しの攻略組さん
音速でぶつかったら戦闘機は壊れるの!あれは脆いんだよハゲ!
629.名無しの攻略組さん
スーパーロボットとは違うのだよ!スパロボとは!!
630.名無しの攻略組さん
てかそんな田舎でもWoRはあるんだな。そっちのほうがすげぇよ。
631.名無しの攻略組さん
田舎言うなし!!え、てかおかしくね?
自分のスピードで壊れるような兵器に乗るっておかしくね?
632.名無しの攻略組さん
>630
スレ違だここ行け
つ『世界界のフシギ~科学編~』
633.名無しの攻略組さん
話を戻そう。
とにかくヤツの出現条件さえわかれば罠張って殺れんのに
634.名無しの攻略組さん
NPCで確定?
635.名無しの攻略組さん
間違いないって。じゃなきゃミニウエなんて産廃使いこなせねえって。
627.名無しの攻略組さん
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後書きのターン!
……ダ・ピッホ、殺すには本当に惜しいキャラでした。救いはない。
でもしょうがないね、漢気溢れる男はゲスい敵に殺されるもんですから。
あと今回のラヴくんの愛を腐った眼でしか見れない人、手をついて謝ってください!
┌(┌^o^)┐<腐イマセン!
と!!




