お姉ちゃんやけど愛さえあったら関係ないやんな!byレツ
新年明けましておめでとうございます!
更新詐欺してスイマセン!
携帯にすら触れない日々が続いていました。
三〜四月まで超不定期更新が続きますがどうか気長にお待ちください!
『過剰のブラッディブラック』。
このラヴの台詞に、その場に居合わせたほとんどのPKが首を傾げた。
何故なら、そんなあだ名は聞いたことが無かったからだ。
“ソロPK最強”?
耳にしたことも見たこともない。
逆に、別の呼び名ならよく知っていた。
『過剰のブラッディブラック』。
何事にもちゃんと反応し、きっちりネタ拾いしてくれるツッコミ体質なPK。
『ラヴァーズ』の中で唯一まともかつ対等に話を聞いてくれる人。
パーティーに誘うとたまに応じてくれ、経験値稼ぎに貢献してくれる気前のいい人。
マニアックな『頭領』というジョブを鍛え、本体の劣化体を最大たったの五人までしか召喚出来ない〈影分身〉を好む浪漫の人。
極めつけは、『『ラヴァーズ』に所属してる割には普通だよね?』だ。
『激怒博士』フロスト
『歩く戦争』ルリ
『異常識人』ラヴ
この三人に比べ、話は通じるし、むやみやたらに殺しに来ない。
“斬り裂き魔”を自称し、血飛沫を浴びて恍惚とする様は、確かに常軌を逸して見える。
しかしそこだけなのだ。
そこさえ覗けば黒蟻よりイカれた行動や奇抜な言動の目立つ連中はこの『PK王国』にはいくらでもいた。
それゆえか、よく黒蟻は『俺の方が『ラヴァーズ』にふさわしい!』とかいうPKに襲われる。
誰が流したのか、『ブラッディブラックを殺れば『ラヴァーズ』に入れる』といった噂までまことしやかに囁かれている。
さらに『ブラッディブラックはカンストにしては弱い』『不意を討てないよう真っ向勝負を仕掛けたら逃げられた』といった噂もこれを後押ししていた。
つまり、ほとんどのPKにとって『黒蟻は『ラヴァーズ』最弱』で、『カンストばかりのまにキュアに囲まれて勝てるわけがない』と考えていた。
そして、そんな黒蟻のことを貶めるような発言を聞くたびに、黒蟻の親友であるラヴはとても、とても悲しい気持ちに包まれるのだ。
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『ッッッキャアアァァァァァァァァァ!!!!!?』
『魔法人形テンペスト』から苦痛の絶叫が響き渡る。
千切れ飛んでいった巨大な足は、側にあった建物を豪快に破壊した。
『足がッ!? 私の足がァア!!?』
まるで本当に足が千切れたかのように悲鳴をあげる『魔法少女ハリケーンシルバー』。
いや、事実彼女にとってはそうなのだ。
四腕四脚という複雑な構造を自在に動かすため、『精神感応』式のコックピットを搭載しているのだ。
つまり、機体ダメージがパイロットであるシルバーにフィードバックする。
しかし防御に秀でたスーパー型SR、そのなかでもさらに特化した格闘タイプである『テンペスト』の装甲を抜けられる相手に彼女は会ったことがなかった。
ましてや足一本を易々と捻じ切る相手など想像したこともなかったのだ。
『〜〜〜ッ! 〈ド根性ォ〉!!!』
しばらく呻いていたシルバーは『パイロット』の〈スキル〉、〈ド根性〉を発動した。
すると、膝から無惨にネジ切られた箇所、そこに美しい光の粒子が集まり、足を形取る。
パンっ!と粒子の塊が弾ければ、そこには銀に輝く新しい足が!
『仕返し!』
シルバーはそのまま足元にいた人影に振り下ろす!
轟音。
地響きと土埃を巻き上げて踏みつけた『魔導人形テンペスト』だったが、シルバーは手応えを感じなかった。
『逃がした……どこにッ!』
シルバーはコックピット内にあるレーダーを睨み付け、カメラで辺りを探し回る。
しかし意外とすぐに黒蟻は見つかった。
『テンペスト』のすぐ側、『ラヴァーズ』が打ち上げに使った酒場、その屋根の上にいた。
しかしその姿は―――――――ボロボロだった。
手甲から生えた紅い大鎌は半ばからへし折れ、身体の至るところにある裂傷から剥き身の骨が突き出し出血もしている。
さらに足は奇妙な方向に折れ曲がり、仮面にも罅が走っていた。
しかし黒蟻は、苦痛に呻くでなく、瀕死であることに恐怖することもなく。
ただ静かに佇んでいる。
そしてゆっくりと深く息を吸う。
「…………すぅううーー」
『おっと』
司会席のラヴがサッと耳を塞ぐ。
その様子に炉綺が不思議そうに首を傾げて聞いた。
『何やっ「キィィィイイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」』
魂を引き裂くような怪音が、空気が爆裂するような塊音が地下空間全てに響き渡る!!
物理的な衝撃波を伴う咆哮は黒蟻の喉からさらに断続的に放たれ続ける。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
しかしその奇声咆哮は強制的に止められた。
黒蟻は真後ろから飛来した弾丸を避けるためにその場に伏せたからだ。
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「まったく、なんて声出すかなー♪」
PK王国の奥、公式的にPKバトルロワイヤルを行える施設である『城』『闘技場』『要塞』『時計塔』のうち、『時計塔』の最上階に彼女は潜伏していた。
魔女のような三角帽子に目元を残してスカーフで覆面したブロンドの女。
格好はとても魔法少女っぽい。
腰にはサブマシンガンを接近された時ように下げている。
肩の上には小さなカメレオンがノッソリと掴まっている。
そんな彼女は今、長大なダークグリーンのスナイパーライフルを伏せ撃ちの状態で構えている。
覗いていたスコープから視線を反らし、肩に乗ったカメレオンの喉をうりうりする『魔法少女スナイパーグリーン』。
「おかしーなー♪あんな無駄なアクションする子じゃなかったと思うんだけどなー♪」
ひとしきりペットをうりうりした『スナイパーグリーン』は、再びスコープを覗き、翔んできた刀にそのスコープごと脳天を貫かれた。
痙攣する肩の上、カメレオンが悲鳴をあげるように口をあんぐりと開ける。
そしてそのまま、『スナイパーグリーン』の頭から生えてきた赤黒い刀に引き裂かれた。
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『ッだぁあー耳がキンキンしやがる! ブラッディブラックいきなりの大絶叫!と思ったら弾丸が飛んできてそれかわして刀ぶん投げてっていったい何がしたいんだコンチキショウ!?』
耳を押さえながらの炉綺の実況通り、黒蟻は真後ろからの弾丸を避けた後、腕から生えてきた赤黒く脈打つ刀をどこぞに目掛けて投擲していた。
明らかに音速超えた音と衝撃波を撒き散らし、飛んでいった刀は遥か彼方の時計台に、以外と静かに命中した。
さて、実況の疑問を受けて解説役であるラヴも口を開く。
『あれは“ソナー”だね!』
『“ソナー”? ソナーってアレだよな? サブマリンとかが周りの地形把握に使う超音波だよな?』
『そ! PK王国中に響き渡らせた絶叫の反響を彼女は受信、『魔法少女スナイパー・グリーン』を見つけてぶっ殺したんだと思うよ!』
見れば『魔法少女バルカン・ブラウン』ことレツは、先程から焦った様子で〈コール〉していた。
『あぁん?でもよ、あの弾丸、ブラッディブラックの後ろから来たよな?なんでブラックはあんな見当外れな(・・・)位置に刀をぶん投げたんだ?あっちは『時計塔』しかねえじゃん?』
そう、先程の狙撃、黒蟻の真後ろには『要塞』しか無かったが、黒蟻は彼女から見て前方斜め右に刀を投げた。
その質問にラヴは『待ってました!』と言わんばかりに答えた。
『そ・れ・は! あの狙撃はなんと! 跳弾なのです!!』
『跳弾ン!?』
『そう! それが『常に真後ろから飛んでくる弾丸』の正体さ!!』
『えっげつねぇ……ん? ブラッディブラックの様子が……?』
刀をぶん投げた体勢のまま固まっていた黒蟻は、ビクリと痙攣したかと思うと走り出した!
―――野次馬に向かって。
『おぉーッとブラッディブラック、敵前逃亡か感心しねえぞ? でも親切なお兄さんお姉さんが逃がしゃしねえぜ?』
『そんなことしませんよ!』
野次のような実況を無視したまま黒蟻は走る。
走りながら突き出した右腕、その拳の先から赤黒い針が飛び出し、野次馬たちに刺さろうと伸びる!
しかし――――――
「ハッ! おせぇ!」
「止まって見えるよね!」
「マトリッ○ス!!」
針の伸びる速さはカンストプレイヤーでなくともかわせる程度、さらに今のボロボロの黒蟻の速さも普段より格段に、比べようがないほどに遅く、野次馬たちは余裕の態度。
鼻で笑いながら身体を少し傾けるだけで避けていく。
また一人剣士風の野次馬が頭を僅かにずらすだけで針をかわし、クンッと折れた針に貫かれた。
「かっ?」
間抜けな声とともに死ぬ男。
同時に野次馬の群れ深くまで伸びて差し込まれた針が瞬時に枯れ木のように枝分かれする!
“まばたき”より速く分裂した赤黒い枯れ木は正確に野次馬十五、六人の脳を破壊した。
枯れ木に引っ掛かったまま百舌鳥の早贄のようになった野次馬PK達、その身体が、枯れる(・・・)。
いや、凄まじい勢いで萎びていく!
それを行っているのは赤黒い枯れ木、いや、野次馬PK達の血を吸い瑞々しさを取り戻したその姿は血管に酷似していた。
どくり、どくり、と血が、命が黒蟻の中に吸われていく。
黒蟻は反対に吸うごとに回復していく。
飛び出した骨を肉がアメーバのように包み身体の中に引っ張り戻す。
奇妙な方に向いていた足がベキベキと異音を放ちながら、まるで力業で正しい位置に戻る。
裂傷や罅はすでに完治していた。
そしてさらに変化が起きる。
「ぎ、い、ぃあ、ア、アア、あ、アがっぎが!! がっがっガッ!?」
メキメキと、彼女の筋肉が膨張と圧縮を繰り返し、その姿が変貌する。
全身の筋肉が隆起し、体積が一回りは大きくなり、両足が前後にバックリと裂ける。
バックリと裂けて半分になった足に血肉が補充され鋭角な突起が飛び出し、虫の足を形取る。
後ろ足はゴキゴキと後ろ向きに。
さらに二本に別れた足、その中間の肉を割るようにもう一本虫の足がミチミチと生えた。
計六本の足に追加で生えた鋭利な爪が地面を掴む。
手先は指先が手の平と同化し丸い球体に、さらに紅く煌めく刀が四本花弁のように生え、具合を確かめるように一、二度ミキサーのごとく回転する。
ついでに刀の花弁の中心に赤い小さな半球体が現れる。
背中から透き通るように薄い、美しい昆虫の羽が広がる。
またも筋肉の裂ける音がし、ズルリと蠍の尾が追加で生える。
頭のヘルメットはいつの間にかより蟻に近く、よりグロテスクに進化していた。
最後に全身から黒い液体が滲み出て、そのまま全身を滑らかにコーティング。
漆黒の肌に幾何学模様の刺青が、毒々しい紫色に光る。
その姿は、歪な蠍の化け物。
『キュァアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!』
一匹の生物兵器が、産声を挙げた。
『ウッキャァアーー!?なんじゃありゃあ!? え?進化? バイオに進化したのか気持ち悪りィ!! Bボタンどこだよおい!』
『“進化”っていうより“変態”かな?』
『変態だァ!? アレが変態ならウチの近所の春先はジュラシックパークだってぇの!!』
『いや変態って君みたいなののことじゃなくてさ「お前さんにだけゃ言われたくねえな」もう! 虫とかが幼虫→サナギ→成虫になるみたいに、ブラックはああやって身体を変化させられるの!だから変態は春先のほうのじゃないよ!』
その実況を聞きながら、黒蟻の変貌ぶりを他所に『まにキュア』表メンバーズの残りは一旦集合していた。
「……ダメ。やっぱり繋がらない」
レツが悲しげにバルカンを持ち直す。
「そうかい……ま、いいや。じゃあさっさとあの化け物を片付けて助けに行こうか」
『魔法少女ビット・ブルー』がさっさと思考を切り替えて提案してくる。
「にしてもさぁ〜、アリちゃんって『種族』、なに?」
『魔法少女クリムゾン・リボルバー』がギャルく聞けば、
「『キマイラ』じゃなかったかな?ネットで見たよ」
『……噂で…聞いた…「鎧蟲人・女皇」?』
「……ウチ姉ちゃんから『改造キメラ』って言われた」
三者三様の答えが出た。
無理もない。
トッププレイヤーにとって自分の“種族”が何かというのは非常に重要な情報なのだ。
“種族”がバレれば対策を取られやすいのだ。
例えば『フレイムゴブリン』などという名前からして炎系な相手には耐性のある防具に氷の武器を用意できるように。
もちろんそのプレイヤーもバレた時のために対策は打つが、バレないのが一番だ。
ゆえに場合によっては仲間内でも教えないほど。
そして、三人の言った話は全て『ラヴァーズ』が流したウソっぱちなのだ。
ちなみに自慢や『有名になりすぎたのでトレードマークにする』、『もともと弱点が少ない』『公式チート(神族、殲車、真龍)である』『私はあと二段階の変身を残してる』などの理由からむしろアピールしてくるプレイヤーももちろんいる。
しばらく考えていた彼女たちだったが、『魔法少女クリムゾン・リボルバー』が能天気に思考を放棄した。
「まぁいいじゃん! 何れにせよ、鉛弾喰らって死なない生きものはいないし!」
いつも通り色々と軽い発言に彼女達は苦笑する。
「で、でもあれだけの再生力、絶対“核”があると思うから気を付けてね」
そこにレツが思い出したように付け加える。
『核』、それは、強力な再生力を持つモンスターや、実体の無い感じのモンスター、スライム等が有する、定番の弱点だ。
様々な能力や特化したステータスを与える代わりに破壊されたらもれなく一撃死というギャンブル的なブースト器官だ。
プレイヤーのレベルが上がるごとに『キャラ』ステータスとは別に『核』ステータスを割り振り、『硬度』『付与能力』『大きさ』『ブースト値』を成長させることができる。
ただし『付与能力』の容量や『ブースト値』は『大きさ』に比例するため、強力な“核”はその分攻撃が命中しやすい。
さらに『大きさ』は最小でもピンポン玉くらいまでしか縮められない。
弱点をカバーするために小さくしひたすら硬くするか、それともハイリスクハイリターンを狙って大きく多機能にするか。
それはプレイヤー次第だ。
ちなみによく似た設定で『コア』という『装備』がある。
『改造屋』でプレイヤーの体内に仕込む『装備』だ。
こちらは交換や金によるカスタマイズ可能。
主目的は不死系モンスターや機械系モンスターのプレイヤーなどが『胴体スカスカだからブーストできる何か詰めよう』といった感じでつける。
破壊されても『装備』だから死なないが、爆発するので、まぁまず助からない。
さて、そんな彼女達を怪物は睨み付け、
『キュアアア!!』
突撃を開始した!
猛突進する生物兵器は、肩からズリュリと黒針を生やす。
黒針にパリッと電気が走ったかと思うと、生物兵器を光の幕、バリアが覆った。
大通りを踏み砕きながら装甲車のごとき勢いで突っ込んでくる生物兵器、対しレツは―――
「それは悪手やなぁお姉ちゃん?」
慌てず騒がず、ガシャリと己の凶悪な半身、『マジカル☆ステッキ』(注・三連バルカン)を向けた。
Made in Frostの小さなロゴの入ったその兵器が銃身を回転させ始める。
だが瞬く間に生物兵器が距離を詰めてくる。
すぐに怪物の牙は少女に届き、その小さな体を引き裂くだろう。
――――――『魔法少女バルカンブラウン』が一人ならば。
『ギィブリュアッ!!?』
怪物は、シールドごと巨大な鉄拳にぶっ飛ばされた。
鉄拳はそのまま何十メートルも飛び、怪物を大きく交代させる。
推進力のブースターが切られると、今度は逆噴射、元の場所へと戻っていく。
そう、その鉄拳は――――――!
『ロケットパンチ! ロケットパンチだ!!』
『ロォケットパァーンチ!!! いいぜスゴいぜ浪漫だぜ!!! これぞ魔法少女だイッカスゥ!! おっと、今の強烈な一撃で黒蟻選手シールドに皹が!対し『まにキュア』は〜、決める気だな』
はしゃぐ実況席を後目に状況はクライマックスにあった。
稼がれた時間により余裕を持って必殺が放たれる!
「〈ビィイッグマグナァーム〉!!!」
「〈乾坤一擲〉!!」
巨大な弾丸がシールドを粉々にし、その影からマッハで飛来した槍が怪物の腹を貫く。
怪物が耳障りな苦悶の絶叫をあげ、そこへ―――
「マジカル☆マーセカ! 〈虐殺の行軍歌〉!!!」
〈スキル〉の発動と同時、『ステッキ』の銃身から黒い炎が立ち昇り、時たま歪んだドクロが這い廻る。
『貫通』『破砕』『連射速度UP』『発砲する銃口の数だけ威力上昇』の効果を与える『重機関銃士』最高峰の〈スキル〉だ。
三連ガトリングガン、その凶悪なアギトが開き、唸りをあげて弾丸の嵐を吐き出した!
鈍く光を反射する薬きょうがすさまじい速度でレツの下に散らばり、眩しいほどにマズルフラッシュが瞬く。
殺到する嵐に怪物は、再度シールドを、今度は四重に張り直す。
―――そう、愚かにも“防御”を選択してしまう。
『ギッッッギィィイイィィイイイ!!!』
抵抗は一瞬。
分間3,000発という凄まじい超連射がシールドを削り取る。
シールド一枚につき一秒もかからず突破され、すぐに腕も、足も、肩も、腹も、尾も、頭も、全身くまなく鉛玉が命中する。
手足が吹っ飛び腹はえぐれ尾は千切れ頭は半分程になった。
嵐は怪物を拐い数メートルと吹き飛ばしていった。
嵐が晴れたとき、怪物はぴくりとも動かなく、いや―――
『……キシィアァ…』
ビクリ、ビクリと痙攣し、少しずつ身体を再生させていく。
見ればえぐれた胸の中心に、白く、ぼんやり光る球体があった。
『キィシ(バリンッ!)イッ!……』
まぁ再生を許すほど、彼女たちは間抜けではない。
駆け足で近づいたレツが核を踏み砕いた。
途端、一瞬だけビクリと震えて動かなくなる怪物。
「あぁ〜……ええなぁ。ええなぁ、ええなぁ、ええなぁ、ええなぁ、ええなぁ、ええなぁ、ホンマにエエ気分やなぁ……」
ジャリジャリと、靴底から伝わるガラスを踏むような感触を楽しみながら、
「姉ちゃんに勝つのは最高の気分やなぁ……クヒッ♪」
『魔法少女バルカンブラウン』は、無邪気に笑うのだった。