表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼畜外道より愛をこめて  作者: キノコ飼育委員
準備中!☆下拵え中!☆種蒔き中!
53/77

『私法機関』会議に愛をこめて



「では『私法機関』緊急会議を開きます。司会は『ホワイトナイツ』副ギルド長ミルドが勤めさせていただきます」



大きな20人掛けの長机が4つ並んでおり、そこに難しい顔をしたプレイヤー達が座っている。


私法機関のメンバーズギルド、その代表たち。


その中にはもちろん、我らが『ホワイトナイツ』ギルド長である、『THE委員長』サチも参加してました。


しかし本来委員長がすべきこういう難しげな会議の司会進行はいつも私です。


不満に思うことが無いわけではありませんが、もう慣れました。


ちなみにかなりバラバラな所に飛ばされた私たちは、一時的に集まれる場所としてここ、グルメギルド『飽食堂』の宴会場に集まってるのでした。


全部で80のギルドから代表者があつまり、このおかしな事態を話し合うのです。


あ、ついでに部外者ですが『わろスポ』の記者もいますね。


「えー…………一応の確認なのですが、これって『小説は美味(リョメ)!』みたいな異世界トリップですよね?」


何から話せばいいのかわからないので、無難なところから始めましょう。


「“りょめ”?“読め”じゃないんですか?」


と思ったら隣のバ……委員長がおかしなツッコミを。


「え? ……ああ、おそらく地球が違うのでは? 私は世界西経46度、世界南緯131度の地球です」


「え?! このゲームってそんな離れた地球でも流行ってんですか!?」


「それを言ったら私の世界は世界南極点ですよ?」

そう、サチの隣に座る『プリンセスナイツ王国』ギルド長クロロホルムさんが言う。


……それにしてもいつから居たんでしょう。


大人だから空気読んで言いませんが。


「わっ!! いたんですかクロさん、驚かさないで下さいよ!」


空気読めよバ○委員長が!


「……いいですけどね」


「おい、話が逸れとるぞ」


「岩さん!」


「レキガンだ!!」


バカのせいで大ホール全てに響く雷が落ちる。


『雷屋』ギルド長レキガンさんは憮然としつつ言葉を紡ぐ。


「ま、トリップだなんだと詳しいことは俺にはわかんねえけどよ、今ここが現実だってのはわかるぜ」


がりがりと頭を掻いてぼやくように言う姿はまさに親父!


「まず工房の下端NPCがマジもんみたいに喋ってる。それにこのスパナ、いつもより握ってる感覚が明瞭だ。あと「うなああああああああああ!!!!」な、なんだ?!」


突然バカが発狂しました!!


「いつまでこんな現実逃避みたいなことしてんですか!! 起きちゃったことはしょうがない! 大事なのはこれからでしょう!?」


バンバンと机を叩きながら叫ぶ委員長(BAKA)に若干気圧されましたが、とりあえず聞いてみます。


「と、とは言っても委員長、一体全体これから何をすればいいんですか?」


丸眼鏡が光をキラリと反射し、その顔は自信に満ち溢れています!


おお、こういう緊急事態における委員長の頼もしさはなんなのでしょう!


委員長が笑みを湛え自信満々に口を開きます。


「そりゃ襲われてる馬車を助け乗っている王族と知り合い内政やら俺TUEEEEE!!やらしてめくるめくサーガを(ガシッ)……さて、とりあえず皆さん、こちらにトリップするときひどい激痛を感じませんでしたか?」


一瞬でもこのバカに期待した私が間違っていました。


ちなみにこの程度の豹変っぷりはこの場にいる者は慣れっこです。


「感じたぜ。うちのもん全員もだ」


最初にレキガンさんが同意し、


「私も机に突っ伏してしまいました」


「…………」


次に2メートルはある巌のような大男、『巨神兵団』ギルド長ドシンが同意するような雰囲気を出しました。


ただ……いつも彼が何を言ってるのかわからない。



「防御力に優れたドシンさんもですか……ということはシステム的なダメージではないのですね」


分かるんですか委員長。


「んなことになるたぁ……大変だったな」


レキガンさんあなたもですか。


「あれ? 無視ですか?」


「…………」


「はい、ありがとうございます」


さらに確認していくと


「あのー?」


どうやらこの場にいる者は皆私たち同様激痛を感じていた。


「ええと、皆さん全員が激痛を感じ、その後見たこともない所に飛ばされていたと」


「そうなるな」


「でも原因はわからないんですよね?」


「…………」


「たしかに」


「ちょっといいか?」


スッと片手を挙げたのは漆黒の全身鎧を着た男、『デス・ペナルティ』ギルド長ヒロトさん。


全身漆黒の鎧兜で顔もわからない。


ちなみに、個人的にあまり好きになれない人です。


正義を名乗ってはいますが結局同じ穴のムジナ、“黒ムジナ”じゃないですか。



「『メテオ』に入れていた垢バンどもが……動き出したそうだ」


「へ?」


それは……


「動き出したって……プレイヤーが入ってたと? 何人ですか?」


「収監されてた486名の凶悪犯全員だ」


「全員ですか!? それってどんな偶然ですか!?」


垢バン化施設、空中大監獄『メテオ』。


そこはもう二度とプレイヤーの宿らないアバターだけが放置されている監獄。


いえ、むしろ“墓場”ですね。


「ああ! だからエンマンさんが居ないんですね!!」


委員長は元気というか能天気というか……まあこの底抜けな明るさだけがウリですかね。


「で、そいつらをどうするかなのだが……」


そこへ少し太った裁判官スタイルな服を着た年配の男性が口を開きます。


『オフコースギルティ』のパジェロ裁判官。


大のPK嫌いな徹底したPK撲滅を掲げる人だ。


「ワシは釈放してもいいのではと思っとる」


え!!!!???


これは驚きました。


あの異常なまでにPK嫌いなパジェロ裁判官がそんなことを言うなんて!


現に周りもざわついていま「〈アナライズ〉!! ……あ、ホンモノだ。じゃあ〈スキャン〉!……健康ですね」……って!


「な・に・を失礼極まりないことをしてるんですか委員長!!」


「ぐああああ!! 割れる! 割れるってばよ!!」


「すいません、裁判官! このバカはほっといて話を進めてください!」

「ハッハッハ、いいんですよ。私も正気を疑われるのはわかっていましたから……しかし皆さん」


そういって周りに視線を向けるパジェロさん。


「いくら迷惑なプレイヤーだからってまさか本当に犯罪者な訳ではありませんからな。状況を話して出してもいいんじゃないかと……ね?」


「しかしその凶悪犯たちが、所謂ところの俺TUEEEE!!みたいなことをしない保証はないだろう?」


「ヒロトさん、私たちは神ではないのです。人が人を裁くなんておこがましいと思いませんか?」


いつになくまともなことを……こんな人でしたっけ?


ん?


「……どうしました委員長?」


「…………え? あぁいえ、何でもないです」


? ……まぁいいでしょう。


「ともかく、ワシは場合によっては『自由同盟』とも協力していかねばと思っとる……反感があるのはもっともだ。しかし、彼らもまた被害者なのだ。助けあって元の世界に帰る方法を模索せねば」


場が凄まじくざわつきます。


凶悪ギルド連合『自由同盟』。


手に負えない悪鬼たちの集まりと手を組む?


……難しいでしょうね。


遊びとはいえ人の迷惑になるようなことを楽しむような連中です。


信じるのは無理でしょう。


……特にあの『ラヴァーズ』は。



「それでワシは……失礼、少々催してしまった。会議は続けてくれ」


そう、火種だけ放り込んでパジェロさんが席を立つ。


「ウ○コですか!」


騒ぐバカに対し、


「……委員長、女の子が素でそう言うことを口にしてはいけませんよ。では失礼」


おぉ……なんという大人な対応。


そのままパジェロさんは扉を開き、


「あ、そうそう」


少し振り返って委員長に話しかけました。


「貴女と私、どこかで会いませんでしたか?」


「きゃあナンパですか!!」


「ハッハッハ、気のせいでしたかな」



最後まで大人な対応のままで外に。



……とりあえず、


「(メギィ!)ぐあああああああ!!反省してます! 反省してますってば!!」


「やかましいです! 私がどれだけ恥ずかしかったか!!」


まったく!! この(がちゃり)



ん? もう帰って――――――




キノコ は 伏線 を ばらまいた!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ