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鬼畜外道より愛をこめて  作者: キノコ飼育委員
準備中!☆下拵え中!☆種蒔き中!
52/77

朝の挨拶に愛をこめて

顔が落ちている。


可愛い顔


怒った顔


醜い顔


ひどい顔


楽しい顔


溶けた顔


凛々しい顔


崩れた顔


死んでる顔


頭悪そうな顔


強そうな顔






……鏡を見る。



白い、何も、目鼻すら描かれていない顔が映る。


『無』表情。



個性などない。



個ではなく全。



ゆえに『主人公』



……いや、もう違う。


今は違う。


聞こえる。


愛の言葉が。


悲鳴のような、愛の叫びが。


私に色を、性格を、キャラを、仮面を、俺を刻み込む。



意識が浮上する。







ぱちり。






薄暗い部屋に居る。


和室に敷かれた布団の中だ。


「朝……か」


障子から淡い光が染み込んでくる。


(起きますか……ね)


起きようと力を込め、身体に絡み付くものに気づく。


腕がぐるりと首に絡み付いている。


首だけ動かして後ろを見ると、ラヴが眠っていた。


(ククッ……可愛い寝顔ですね)


くかーと眠る彼の顔は穏やかで、昨晩のアレ(・・)が嘘のようだ。


(さて、起こしま(ギリッ)……あ、あれ?)


いつの間にか腕が締まり始めている。


「つ、月光? 起きてる? 起きてるよな?」


問いかけるが全く反応なし。


どうやらマジに寝ているようだ。


「ちょ、オイ?オ(ギリギリ)い……(ギリッ!!)」



ゴキン!!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




ここはどこぞの厨房。


そこには二つの人影。


「姉ちゃん姉ちゃん、腹減ったよう」


「ん? おぉ弟よ、私も腹が減った。だが少し悩んでいてな」


「何に悩んでるのさ」


「うむ、何を作ろうかとな」


「えー、なんでもいいじゃん」


「そうは言ってもな、せっかくの異世界一日目の朝だ。特別なものがいいだろう?」


「じゃあ満漢全席は?」


「朝からは勘弁して欲しいな」


「フルコース」


「ちょっとな」


「んー、じゃ俺が作ればいいじゃん」


「お前の料理はいつも濃すぎる」


「姉ちゃんのが薄すぎなんだ」


「「…………」」


「ケーキ喰うか」


「そうしようか姉ちゃん」



「それにしても、兄さんはこちらに来てないみたいだな」


「〈ログイン〉状態じゃないしね」


「元気で暮らしてくれればいいが」


「美味しいもの食べてね」


「うむ……そうそう、大口の予約が入ったぞ」


「え? どこから?」


「私法機関からだ」


「……姉ちゃんゴメン」


「どうした弟よ」


「自由同盟からの予約、受けちゃった……」


「…………いつ?」


「…………今日の昼」


「完全に被ってるな」


「完全に被ってるね」


「……ま、なんとかなるさ」


「とりあえずご飯食べよっか」




『偏食』スタッフ


『悪食』チラノス


二人合わせて『暴食姉弟』。



グルメギルド『飽食堂』、ただいま仕込み中。


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