「もうあなたは眠っていなさい」(ッドオン!!)ザアアアアア…………
竜、人間、獣人、ドワーフ、はぐれエルフ、さらにはゴブリンまで、共存する意思のある種族を全て受け入れる寛大な世界にしてもっとも浮遊島が多い世界、桃界。
その桃界僻地。
ド田舎であるニズヘグ地方は、浮遊島は無いが実り豊かな山と閑散とした村が幾つか点在するところである。
が。
そこは突如、昼間にして夜となった。
時刻は完全に昼を指している。
だが辺りは陰に包まれ、しかし星の光はない。
一寸先は闇だが手先くらいはうっすら見える。
突然起こったその奇妙な現象に混乱した子竜が飛び立ち親を探す。
半ば本能的に光を探して飛ぶと、フッと、光の中、太陽の下に出た。
驚いて子竜が振り返ると、光と陰がくっきりと線でも引くように別れていた。
まるで闇のカーテンでも引いたかのよう。
くるりと旋回し、宙に停まった子竜が空を見上げると―――
地平線の彼方まで陰に包む、巨大な何かが浮いていた。
その数瞬後子竜は、子竜を探しに来た母竜のホールドタックルを食らってぶっ飛ぶが、それはまた別の話。
その巨大な何かはかなり離れて真横から見れば、逆さまの五角形、つまり独楽のような形をしていた。
その独楽の上面、中心にはシ○デレラ城もかくやという白い城が建っており、城下町が城を囲むように広がっている。
独楽の外周には高い城壁があり、その上を鎧を来た兵士が弩弓を手に巡回している。
城壁上には至る所に対空用高角砲が配備され、壁からは戦慄するほどのレーザー機銃の銃口が空を睨む。
そこだけでなく独楽の外面全てに同じように強力な対空設備が整っている。
それに対し、対地兵器はひとつしかない。
ひとつで十分過ぎるからだ。
独楽の下方、尖った先端に突き出た1キロの銃口と20キロの砲身を誇る超巨大レーザー砲。
かつて数多の悪辣ギルドを消滅させてきた超兵器。
強力な5重のバリア、雨の如く降り注ぐレーザー弾幕、そして悠々と充電されるソレ。
断罪の雷、悪に降り下ろされるギロチン、勝利の剣。
その銘を、『ソドムイリミネーター』といった。
そう、ここは超巨大初心者支援型空中移動城塞であり――――――
現在PKギルド『ラヴァーズ』と絶好調戦争中である武装法治ギルド、『ホワイトナイツ』の居城『旅立ちの城』である。
城下町は混乱の極致に至っており、パニック状態の群衆で溢れていた。
突然の死と見まごう激痛、動かない〈ログイン〉、リアルすぎるNPC。
帰れない恐怖、先のわからない不安。
怒号、悲鳴、泣く者、叫ぶ者、暴れる者(だいたい初心者)。
少しだけ冷静さを取り戻した者、ちょっと喜んでたりする者(中堅から上級者あたり)。
誰かが言った。
「そうだ、城行こう」
それを聞いた者たちが次々に賛同し群衆は皆城門に集まり説明を求めた。
だが城の中では――――――
『旅立ちの城』の中枢、管理室。
そこでは数人の『ホワイトナイツ』メンバーがそれぞれの前にある台の上の水晶に手をかざし、『旅立ちの城』の全てを管理していた。
さらには大人の身長よりも大きい映像水晶が宙に浮いており、それぞれ外の様子、中の様子を逐次映している。
そこに突如、パシンッという軽い音ともに少女が入ってきた、いや現れた。
膝上1センチのスカート、清涼感のあるセーラー服、生まれてこの方染めたことなどない耳までのぱっつん黒髪、左の二の腕には紫紺の布地に金糸で『委員長』の文字。
そして丸眼鏡。
『THE委員長』サチ。
「今の激痛は敵ですか!?」
「〈サーチレーダー〉を最大展開していますが敵性反応ありません! ただ付近に小規模な村が幾つかあります」
「村? ちょっと待って高度は?!」
「地上200メートルを切ってます!」
「高度を上げてください!」
「了解! 地上1000メートルまで上昇開始!」
水晶に手をかざしたいかにも魔導師といった風体の、頭まですっぽりとローブを被った男が「〈上昇〉〈高度・1000メートル〉!」と唱えると僅かに足元がふわりとする感覚。
映像水晶にも地面から離れる映像や雲を下に追い抜く映像が流れる。
ホッとするのも束の間、今度はパニックになった群衆が城門まで来ているという報告。
「説明を求めてるって、説明が欲しいのはこっちもです!!」
壁をぶん殴って怒りを露にするサチ。
白く細い腕が壁に当たり(ッドオオォォン!!)……三つ隣の部屋までぶち抜いた。
「……またやってしまいました」
カリカリと頭を掻くサチ。
そこへよく通る青年の声がかけられる。
「おやおや……仕方ない子ですね。皆さん、『旅立ちの城』外壁にバリア展開、この城はいいです。さらにパニックになりますからね。それでマニュアル通り戦闘用意。外に向けてですよ。あと主力を呼び戻してください」
壁に空いた穴からひょっこりと入ってきた青年。
こちらも若草色のローブを着て魔導書を脇に抱えている、いかにもな魔導師スタイル。
後ろに流される黄金の長髪に長く尖った耳、ハイエルフの証である。
種族がエルフなのでもちろんイケメン―――というわけではないが(現実の容姿を元にするため美化4割が限界)コイツはじゅうぶんキラキラしたイケメンである。
「ミドリムシさん……」
「ムッシュ・ミドルね、いい加減にしてくださいね委員長」
「イケメンはもげるべきです」
「時々わからなくなるんですが貴女は女の子でしたよね?」
「誇り高き百合なのでイケメンは女の子を毒牙にかける存在としか……BLは大好きですが」
「ふぅ……(ガシッ)いい加減に仕事してくださいね、い・い・ん・ちょ・お?」
「イダッ! イダダダダダダ!! 割れます! 頭割れちゃいます!!」
「言うべきことは?」
「知ってるぞ! お前の生え際が最近後退している(メキィ!)ゥオアアアアアアアガッ!!……………………」
「ん? おや? 委員長? 委員長ぉー?……おやおやだらしない、眠ってしまいましたね」
ミドルに片手で頭をわし掴まれ、完全に足が浮いている。
ぷらーんと力が抜けたサチを丁寧に下ろし(ちなみにこの間ずっと微笑だけは崩さなかった)、
「委員長が心労により倒れました。私が臨時で指揮をとります」
ピシッと号令をかけた。
「おや? 〈コール〉ですね……もしもし? あぁ皆さんご無事で……はいこちらもです……はいおかえりなさい……いえ攻撃しなくて結構です、空から見ててください。『我々はちゃんと仕事してます』アピールだけお願いします。あ、でも暴れだした人は速やかに拘束してください。……はい、……はい、よろしくお願いします。それでは」
ついつい宙に向かってお辞儀してしまうあたり、金髪になっていても日本人である。
「ふぅ……こんなことならあんな作戦立てずにフツーに『ラヴァーズ』と戦えばよかったですね。言っても仕方ないですが…………ん? また〈コール〉ですね……もしもし?――――――」
法治ギルド『ホワイトナイツ』
ギルド長『THE委員長』サチ
トリップ数分後に気絶。
それを支えるは苦労性のハイエルフ、ムッシュ・『こーめー』・ミドル。
どこぞの誰かのせいで最近生え際に集まる視線にイライラする社会人。
何はさておき、『ホワイトナイツ』、異界に推参。
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狂暴かつ本能全開な魔獣、凶悪非道な魔物、傲岸不遜唯我独尊野心いっぱい俺TUEEEEな魔族、力こそ全て、お前のものはたいてい俺のもの、それが魔界。
の、『ラヴァーズ』がいる辺境とは反対側の辺境。
誰もいなく誰も行かないことで逆に有名なショチウミマヒ荒野。
広大な岩と石以外何にもない灰色の荒野。
そこに今までなかった、もし誰か気づけば観光名所になるやもしれない物が忽然と現れた。
直径2キロの大穴である。
今までがアレなので小さく感じてしまうが、そんなことはない。
少なくともスカイ○リーよか大きいのだ。
穴は深く、深く、光も届かぬ深淵の闇が溜まっていた。
と、穴の縁に手をかけ、這い出てくるものがいた。
人だと、辛うじてわかる。
性別があるかはわからない。
岩だ、鉄だ、塊だ。
無機物体で出来た人型がズズンと穴から出てきたのた。
だが、岩と鉄で出来ていることなど些細な話だった。
そのことに比べたらオマケだった。
ソイツが首が反るほど見上げるよりもなおデカイ、天を突くほどの巨人だったことに比べたら。
少なくとも、ス○イツリーよりは確実に大きいだろう。
掌だけでも○カイツリーを握ってまだ余裕があるだろうし、もしかしたらスカイツ○ーをバットのように振り回せるかもしれない。
「…………」
その巨人、『大地の巨人』はしばらく辺りを観察し、何もなく、何も来ないとわかると、また大穴に降りていった。
法治ギルド『巨神兵団』
ダンジョン型拠点『ヨトゥンヘイム』
ギルド長『進撃』のドシン
入団条件は『巨人であること』『ビーム撃てること』『悪が嫌いなこと』。
その日、巨人、大地に立つ。
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陸亀はゆっくり、ゆっくりと進む。
急ぐ必要など無いのだから。
陸亀はのっそり、のっそりと歩く。
行く当ても無いのだから。
たとえそのおかげで、津波が起きてても。
付近の街が丸ごと倒壊しても。
津波が、倒壊した瓦礫をさらっていっても。
陸亀はゆっくり、のっそり、一歩ごとに地震を起こしながら歩く。
その様子はとてものんびりほのぼのしてい「じゃねええええ!!! 急げ! ヘリ出せヘリ! つか飛べるやつ全員飛べ!! 助けるぞ!!」
「NPCじゃねえよな?! マジもんだよな!?」
「うっせ! 異世界トリップっぽいっつったのお前だろ!! てか何でよりによって海岸?! 俺ら素材採りにりっくん(※亀の名前)で地盤しっかりした火山地帯歩いてたのに!!」
「だからそれがトリップでしょおおおおお!!!」
「あ! いたわ! 手を伸ばして!!」
「しっかりしろおおおおおおおおお!!!」
「諦めんなあああああああああああああ!!!」
海の上を数多の翼人、悪魔、魔女、ヘリ、グリフィンが飛び回り、海の中は海竜や巨大鮫、魚人や鯨が(もちろん前者は絶叫とともに拒否された)助けて回る。
さらには船も小型潜水艦もSRも陸亀から出撃し、何とかすべて(・・・)の人命を救助した。
(あのオッサン死んでたよな)
(死んでたな)
(生き返ってよかったねー)
(ねー)
「ねー、じゃねええええええええええええ!!!」
巨漢のドワーフが身の丈以上のスパナを床に叩きつけ怒鳴る。
巨漢のドワーフというと矛盾を感じるが、これは種族『ドワーフ・変異種』という、転生時にミリオン分のイチの確率でおきるラッキー種族だ。
ドワーフなら筋骨隆々低身長近接強し魔法弱し手先器用というのが、筋骨隆々高身長近接すごく強し魔法フツー手先器用となる。
ようは弱点の少ない上級種族になるということだ。
「死んだんだぞお前ら! 取り返しがついたからいいがそうじゃなかったら一生もんの罪だぞボケコラアホンダラァ!! あと街の再建設てめえらも手伝え!!」
「でも親方ぁー、あたしら〈建設〉スキル持ってませーん、あたしは〈調合〉担当ですしー」
「俺〈調度品〉っすから」
「私服屋ですよ?」
「武器屋」
「防具屋ァー」
「「「「会計担当でーっす」」」」
「てめえら…………」
やいのやいの好き勝手並べる連中に、巨漢のドワーフ、『チタニウムヘッド』のレキガンは――――――
「やれることを……」
ぐっとその巨大スパナを構え――――――
「あ、やべ」
「おっとこれは」
「やり過ぎたか……」
「武器、要る?」
「防具、あるよ?」
「「「「やれやれ、しがない会計担当にはキツい職場だ」」」」
大きく息を吸い込んで――――――
「探せやああああああああああああ!!!!! 〈トオオオルハンマアアアア!!!!!〉」
ブチキレた。
辺り一面に雷が(いろんな意味で)降り注いだ。
生産ギルド『雷屋』
移動型拠点『大陸亀』、愛称:りっくん
ギルド長『チタニウムヘッド』のレキガン。
ただいまボランティア活動中。
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人間界、すこし都市に近い田舎。
いかにもな西洋風な建物が並ぶ、異世界来たら大抵ここ!みたいな街。
の、すぐ隣に世界観が台無しになるビル街があった。
初心者支援を目的に造られたビル街、『プリンセスナイツ王国』。
も、色々台無しである。
その都庁。
一番上の階から4階下。
〈町長室〉というプレートのかかった扉、その中。
そこに一組の男女がいた。
かたやデスクに座るスーツの若い男。ただし冴えない、地味、影薄いの三点そろった昼行灯。
かたやキャリアウーマン、いかにも出来る女な、つり目、泣きボクロ、インテリ眼鏡の三点そろった秘書。
「町長、町長」
「ん? あぁはいはい、なんでしょう」
「暴動起きてますよ」
「ほっとけばいずれ落ち着きます。他のギルドとも連絡が取れましたから、焦る必要はありません。だいたい初心者の皆さんが暴れてもすぐに取り押さえれるでしょ?」
「いえ、暴れてるのはあいつらです」
「……出てきそう?」
「大丈夫そうです」
「ならそっちも放置……まったくその場のノリでギルド長なんてならなければよかったです。私も混乱して泣き叫びたい」
「そーですか」
「……なんで棒読みなんです?」
「町長ほど落ち着いた人が泣き叫ぶところを想像できないし、仮にも社会人が泣き叫んでたら映画の中のイケメン以外じゃ気持ち悪いだけですね、と」
「ふー……君が助手でよかったよ」
「秘書です。美人秘書です町長」
「お尻触っていい?」
「ぶった斬りますよ」
初心者支援ギルド『プリンセスナイツ王国』
ギルド長『サディスティック』ミカン。
ではなく、
ギルド長『ウィーク・シャドウ』のクロロホルム。
座右の銘は、特になし。
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どこかの海の上。
島が浮いていた。
島にはコンクリートでできた監獄だけが立っていた。
さらに監獄のまわりにはミサイル、砲台、滑走路があり、空軍基地には戦闘機やヘリはもちろん、拠点防衛に特化した大火力SRも多数配備されていた。
空中大監獄『メテオ』。
手に負えない凶悪プレイヤーを捕らえ、二度と出さない、いわゆるプレイヤーによる『垢バン』化施設。
街型なので『警備兵』『警備ロボ』『軍用犬』『獄卒』が徘徊する。
街型なので戦闘スキルが使えない。
身体能力は『弱体化』の『呪い』装備をつけられるから下がりに下がって壁が壊せない。
牢屋は『無料の宿屋』扱いなので、一度でも入るとログアウトしてもここから始まる。
システムの穴、『ホールテクノロジー』をふんだんに使った、脱出不能な大監獄。
今そこは脱走者でも出たかのように、蜂の巣でもつついたかのような大騒ぎになっていた。
「監獄長!! 大変です!!」
会議室に迷彩服の男が飛び込んでくる。
そこでギルドの主だった面々とあーでもないこーでもないとうだうだしていたギルド長エンマンが声をかける。
ちなみにみんな揃いの警察ルック。
「どうした! 脱走か! トリップとNPC云々はさっき聞いたぞ!!」
「いえ! そうじゃなくて! 大独房が――――――」
監獄ギルド『ザ・メテオ』
ギルド長『死角』エンマン
緊急事態発令。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(グオングオングオン……)
暗い夜の中、飛行駆逐艦がゆっくりと飛ぶ。
船底に大量の機銃を装備した、『人喰いハート』をペイントしている。
ラヴが定期的に放つ小型飛行駆逐艦『ラヴレター』。
その使命は、嫉妬団殲滅。
サーチライトで地表を舐め回し、生き残り、『嫉妬団』の残党を探す。
『SEARCH,SEARCH,SEARCH―――』
血の涙を流す天使たちもボタボタと地表に血を垂らしつつ探す。
その一団はどんどん遠ざかっていく。
何から?
それはもちろん、隠れている嫉妬団から。
(行ったか?)
(……行ったな)
(いけるよな?)
(よし、)
ボサァッ!!
突如地面が盛り上がり、そこから嫉妬団が這い出てきた。
さながらゾンビだ。
「フハハハハ!! 愚かなり『ラヴァーズ』め! 我が完璧な擬態を見破れんとは!!」
「総統! 蘇生ってきました!!」
「嫉妬団総員無事です! 一度拠点に戻り補充をするのはどうかと」
「うむ! それで『指名手配No.81、嫉妬団、それに嫉妬マスクだな』何者だ!」
突然割り込んできた声。
隊員たちが辺りに銃を向け、探し回るが、姿は見えず、闇しかない。
(総統、〈隠匿看破〉でも見つかりません! 相当なレベルかと……)
「ええい! 姿を見せろ!!」
集団の中心にいた嫉妬マスクが叫ぶ。
『姿なら見せている、上だ』
その声に裸パンツの変態達が空に銃口を向ける。
そこには黒い天馬に跨がった、闇を凝縮し固めて鎧にしたかのような、漆黒の騎士が浮いていた。
鎧には装飾の類いはなく、それゆえ実戦のみを目的とした威圧感があった。
腰には槍ではなく漆黒の大剣がひとつ。
だがそれ一本でドラゴンとも渡り合えそうな、そんな力の波動に満ちている。
黒騎士は言う。
『私は「デ「撃てええええええ!!!」』
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガズッドオーン!!!!!
数多の銃撃と、ロケットランチャーの一斉射が黒騎士を襲った!!
「やったか!?」
「バカめ! 名乗ってる暇があったら攻撃すればいいのだ!!」
「「「「「「(げらげらげらげら!!)」」」」」」
←ひどく下品な笑い。
もうもうとした爆煙、それが晴れると――――――
『ふむ、何かしたかね』
まったく無傷、小揺るぎもしなかった黒騎士がいた。
『まあいい、どうやら投降の意思は無いようだから――――――』
スッと、黒騎士が手を上げ合図する。
〈気配遮断〉〈幽体化〉を解き、嫉妬団を取り囲むように次々現れる漆黒の幽霊騎士団。
その浮かび上がるような現れ方はまるで、辺りの闇が魔物に転じたかのよう。
空中には黒騎士と同じ格好の、装備が槍である騎士たち。
随伴する歩兵は、ある者はマスケット銃を、ある者はギロチンのような斧を、ある者は首吊り縄を、ある者は槍を、ある者は棍棒を、ある者は磔刑用の十字架を持っている。
『さて、眼には死を、歯には死を、平穏乱す輩には確実な死を…………執行しろ』
不気味な沈黙を保っていた騎士団は、沈黙したまま嫉妬団の処刑を開始した。
PKKギルド『デスペナルティ』。
ギルド長『断罪者』ヒロト。
WoR最悪の『正義の味方』である。
「逃げろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「……(ドキューン!!)」
「ぐあっ!」
足を撃たれ地に倒れる嫉妬マスク。
既に仲間は皆殺られた。
残るは彼一人。
「ぬ、ぬおお……」
「…………(スッ)」
差した影に振り向けばギロチンを振り上げた鎧兵士。
「よ、よせえええええ!!」
「……〈首落とし〉(ブンッ!!)」
煌めく白刃が、彼の見た最期の光景。
嫉妬マスクは、今度こそ異界に散った
……のか?