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鬼畜外道より愛をこめて  作者: キノコ飼育委員
LO☆VE!!
43/77

魔王 が 目覚めた 日 に 愛 を こめて

……今回死ぬほど難産でした。


しかもほぼ会話のみというグダつきっぷり。


やっぱ下手な真似するもんじゃないですね。


厨二とご都合たっぷりですが、楽しんでいただけたら幸いです。

ここは深い闇。

何も見えない闇。

ただお互いの姿だけははっきりと見える闇。


そう、ここはラヴの手の中。




「な……なにを言って」


キャハハ!! すごい動揺してる!


また問答無用で酷いことされるとでも思ってたのかな?


「あぁ、“プライド”って言うより“体面”かな?“名誉”かな?」


「ッだから、何を言っている!?」


「君のことさ」


指パッチン!


古風で王道過ぎて廃れた仕草だけど、雰囲気は大事だよね。


パッ


『仲間は売らぬ!』


パッ


『将軍を放せ!』


パッ


『グルルルウゥ……!』


パッ


『儂の息子達を殺したやつはどこだ』


パッ


『エージェンヌ様をどうした?』


パッ


『我が弟子達は最後まで呪文を唱えたか』


いくつもの映像が闇の中に映る。


ちなみに舞台裏ではステルス黒蟻がスクリーンをがんばって設置中。


完璧なタイミングだ!!


「さて? 全部君の仲間達の台詞であり、君が選ばなかった仲間達の台詞だ」


「……これがどうした」


「人ってね、本当に大切なものは選べないんだよ」


「例えばさ、僕が今から君の指を全部切り落とすとしよう」


「君に一本だけ残す指を選ばせてあげるって言われて、キミ選べる?」


「無理だろう?」


「人は一つ切り捨てることが出来ても、一つだけ残すことは出来ないものだからさ」


「それが出来るのは“その一つがよっぽど価値がある”か、“どれが残っても大差無い”かだ」


「君は、後者だろ?」


ひとつひとつ確認するように囁いてみる。


「そんなことはない!私はエージェンヌに生き延びて欲しかった!だから!」

「はい嘘。君はエージェンヌに生きて欲しかった訳じゃない」


「違う!私はエージェンヌを愛していた!」


あ……。


「……一回しか言わないからよく聞いてね」


グイと胸倉掴んで僕と目を合わさせる。


「僕の、前で、嘘の、愛を、騙るな」



殺すぞ?



スッと眼を細め間近で見てくるラヴに、青ざめた魔王は否定も忘れてただコクコクと首を縦に振った。


ん〜ちょっと怒っちゃった、反省反省。


ジャックにも常に冷静な紳士さんたれって言われてるしね!!


それにしても、白昼堂々百合発言には心からの喝采をおくるけどさ、


「いの一番に特攻させたくせによくそんな台詞が吐けるね?」


「そ、それは……エージェンヌが私の制止を振り切って」


ハハッ! なにそれウケルぅ!!


じゃあ嗤いながら聞いてやろう!!


「じゃあ何故城から出てきてでも止めなかったの? 君が本当に仲間を大切に思っていたなら、さっきみたいに転移させてしまえばよかったでしょう?」


「私にも立場がある!特別扱いはできん!」


「立場で愛を語るなよ!!」

「ッ!」


「だから君の愛は偽りだって言ってるんだ。もし君が本当に彼女を愛していたなら何を置いても彼女を優先していたはずだ。例え彼女の意思を無視してでも、後で自分が死ぬとわかっているなら尚更ね」


「……よ」


「ん?」


「誰もが貴様のように割り切れると思うなよ!!!」


「……(ニヤリ)」


いい具合に感情的に(あつく)なってきたね。


もう少しかな?


「王はな! 己の気持ちだけでなく他者の心情や立場も慮らなければならんのだ!! 自分だけを優先するような王ではいかんのだ!!! 何が可笑しい!!」


キャハッ! 本音が漏れてるよ!!


「いぃやぁ? やっぱり君は、愛した人よりも王としての立場対面義務信条を優先するんだと思ってね」


「!!」


「それにぃ、君って君の仲間たちとは決定的に違う点があるんだよね」


「……なんだ」


ん~すごい目で睨んできてる。殺されそうで怖いな。


「本当にお互いを仲間と認識しているギルドをね? 襲撃して、分断して、片方皆殺しにして、残った片方に会いに行くと、必ず言われる台詞があるんだ」


「そして君が言わなかった台詞があるんだ」


「……何だと言うんだ」


そりゃあ勿論、


「“仲間をどうした”……だよ」


「何……?」


「君に見せた映像ね、他の城との戦闘シーンコレクションもあるんだ!! 仲間をどうしたって聞いてくる仲間想いな皆さんに見せるためにね」


「下種め!!」


「ん~、僕が下種かどうかはまたあとで話し合おう。それで? 君の反応はどうだった?」


再び指パッチンッ!!


パッと再び暗闇に映像が浮かぶ。

そこでは魔王が玉座にゆっくりとふんぞり返り、えらそうな口調で『ラヴァーズ』の面々に宣戦布告するところだった。


「ん~かぁっこいい台詞だね!! 最後まで仲間のことには一言も触れなかったけど!!」


「それは誤解だ! 心中では彼らのことを案じていた!!」


“いかにも”な、“悲痛そう”な表情。


残念、瑠璃架の方がこういう表情造るのがうまい。


おかげで観察眼が鍛えられたよ。


「ん~、勘だけどそれは本当であり、嘘でもある」


「どういう意味だ!!」


ビッと指先を魔王の鼻先に突き付ける。


「心の中で、上っ面だけ謝罪して、悲劇のヒロイン気取っただろ」


「ッ!! そんな、ことは……」


「あ、ついでだ。君が仲間を、それこそエージェンヌちゃん含めてどうでもいいと考えてると思った根拠を話そう」


「ま、まだあるのか」


「うん、君さ一回心折れただろ?」


「き、気の迷いだ!!」


顔を真っ赤にして怒鳴る魔王ちゃんカワイイ!!


「キャハハ!! 豪快に迷ったね! でもさ、その後すぐに復活したね、死んだはずの仲間を見て」


「普通さぁ、仲間が殺されたら一念発起しない? 絶対に復讐してやるとか思わない?」


「でも君が僕に特攻したのは、君の悲劇の物語の美しい最後をひっくり返したから」


「折れた心に灯がともったのはみじめな姿を部下に(・・・)見られたから」


「必死に叫んでたのは、死ぬ間際の彼らに、カッコいい自分を見せて汚名返上するため」


「違う?」


「…………」


あらら、俯いてダンマリか。


「あ、そうそう。これは『嘆きと怨嗟の亡霊』みたいに心を読んだわけじゃないから、否定してもいいよ?」


「……チガウ」


「そう。じゃ、続きを話すね」


「さて、君が仲間よりも己の体面を気にするなら、生き返らせる部下にエージェンヌちゃんを選んだのも納得できる」


「だって、君の醜態を見てないからね」

「……チガウ、なラ何故エージェンヌを大切ニしてナイト言えル」


「んっとね、君をエージェンヌちゃんの蘇生室に連れて行った時、あそこは真っ暗で、明かりは一つしかなかった」


「エージェンヌちゃんを照らしていた、ね」


「真っ先に気付いてもおかしくなかったのに、君は無反応」


「事前に今から会わせるね、とまで言ったのに、君の目は何も映してなかった」


「何故かな?」


「それハ、絶望と恐怖デ目の前ガ真っ暗ニ……」


「へぇ〜、じゃあ何で僕に話し掛けれるの? 反抗できるの?」


「……ソレハ」


「取り戻したからだろ? 自分の芯を」


「芯……?」


「そう。人ってね、それぞれ芯があるんだ」


「もしくは譲れないもの。それさえあればどんな地獄にも正気でいられる」


「それは家族の写真だったり、恋人の形見だったり、己の容姿だったり、器用な指先だったりしたよ(・・・)」


「キミの場合は、“誰かが覚えている最高の自分”」


「それを取り戻したから、君は僕に逆らい反抗し抵抗できる」


「ま、そう意味では君はエージェンヌちゃんを“愛して”るかな?」


「随分と身勝手で汚い愛だね!!」


にっこり嘲笑ってやった!



「……………………」


うん、完全に沈黙撃沈!


そして、いい目になった。


「さて、ここまでで何か言いたいこと、あるかい?」



「……ひとつ、いいか?」


「何かな?」


「先の映像、どうしてテイル夫妻だけなかった?」


「え? だって彼らも仲間のことは聞いてこなかったから、ややこしいと思って」



「……クックックッ…………なんだ、お前の言う通り完全に憶測の域を出てないではないか……」


「ええ。でも合ってるでしょう?」


そう聞くと、魔王ちゃんは力尽きたようにヘラリと笑う。

だけど目は、その身に宿すヘドロのような魔力のように、濁り切っていた。



「クックックッ……ハハハハハ……そうとも。私は別に、奴等を好きでもなければ嫌いでもない」


「強いて言うなら奴等は芳醇甘美な美酒だ」


「我が虚栄心を満たすための、な」


「……すこし、昔話に付き合ってくれぬか」


「いいですとも!!」


「ありが……なぜ鎧を着込んでおるのだ?」


「しまった! 異世界人にはわからないネタだった!」


そう言って蒼い鎧を脱ぐラヴ。


「まぁいい……私は、幼い時に既に己が王の器でないことを理解していた」


「ただ今は亡き父と母が賢王だったのだ」


「城の者はもともとその父と母に仕えていたのだ」


「有能な奴等だったよ」


「私は何もしなくてよかった」


「要するにお飾りだ」


「絢爛豪華な玉座に座って頷いていればよかった」


「だから、まぁ、なんだ」


「酷く空虚な気になった」


「己が必要とされず、ただ“王”としての記号さえあればいいと思った」


「そして、このままでは歴史に、ただ名前が記号として記録されるだけだと理解した」


「それはとても、恐ろしかった」

「誰にも記憶されずただ記録として消えゆくのは嫌だった」


「だから私は、自分に王らしさを、上に立つ者としての姿を求めた」


「例え偽りの自分でも、な」


「我ながらうまくやったよ」


「慈悲と思慮と魔力を兼ね備えた魔王を演じることができた」


「いつからか、彼らも私こそを主として認めてくれたよ」


「ちなみにベルルーシカはこの時拾った」


「ヤツの私に向ける目は実に私を満たしてくれたよ」


「だがな、それでも胸の空虚は埋まらなかった」


「年に一度、諸国の魔王が集まり、魔皇のもとへ参じる日が来る度に酷くなった」


「私は凄まじい惨めさを得たのだ」

「集う魔王達の器に嫉妬し、田舎魔王と侮る輩に激怒し、己の虚飾を恥じ、頭を垂れねばならぬ立場に失望した」


「そう、私はいつの間にか、より偉大な自分を求めることに固執していた」


「だから、魂をかけて預言の災厄を封印せよとの命が下った時、私はチャンスだと考えた」

「百年も昔の預言を、この身で阻止したとなれば我が名は永遠だとな」


「…………後は貴様の知る通りだ」


「……」


「フ……何か言いたいことがあるか? これが私だ。醜い己の野心のために国を滅ぼした阿呆だ」


「……」


「………………? オイ、何か言ったらどうなんだ」いつの間に被ったのか、白黒の仮面を着けて向こうを向いたままのラヴの肩を叩く。


「……〜♪ ん?」


スポッ(〜♪魔法少女〜ブラッデイブラック!!〜〜♪!!)

大音量のアニソンが流れ出すイヤホンを耳から外してラヴが振り返った。


「あ、終わった?」


「……(ブチッ)」



この後再び魔王がセルフ狂乱(バーサク)状態に移行。



〜三十分後〜



「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、この、化け物がぁ……」


「やれやれ全く、ハッスルし過ぎだよ。体に悪いよ?」


くるくるとナイフと仮面を手で弄ぶラヴ。


またしても全身ズタズタで転がされる魔王。


ちなみにこっそり潜んでいる黒蟻も攻撃していたり。


「で? つまり君は今まで愛されるために努力してきたってこと?」


「……広義の意味ではそうなる、のか?」


「僕に聞かれても……にしても君って、結構かわいそうな子だね」


その言葉にまたしても殺意みなぎる瞳を向ける魔王。


「貴様ァ、私を見下すか!!」


「いやそうじゃなくてさ……何て言うか君は、今まで愛さなきゃ愛して貰えなかったんだろ?」


「え……?」


「ねぇ、君は、僕が好き?」


「とち狂ったことを抜かすな、私の国を滅ぼしたこと、恨みこそすれ好きになど……!」


「そうかい? 僕はキミが大好きだぜ?」


「なッ!?」


「ねぇ、友達になろうよ」

「オイ、さっきからなんの話をしている! 脈絡が滅茶苦茶だぞ!!」


ズタズタの身体を起こして立ち上がり、怒鳴り散らす魔王に対してラヴは、慈しむような優しい微笑みを浮かべた。


「だから、キミを僕が愛してあげるって言ってるのさ」


そっと魔王へ近づきその頬に手を添える。


「例えキミが僕のことを憎んでようと、殺そうとしようと、ね」


さらにスッとラヴは魔王を軽く抱き締め、耳元でくすぐるように囁いた。


「受け入れて、隅から隅まで愛してあげる。骨抜きにしてあげる。駄目にしてあげる。甘えさせてあげる。ぐちゃぐちゃにして、滅茶苦茶にしてあげる」


「う……ぁ……」


魔王はパクパクと口を開閉させ、耳から流し込まれる毒に、ラヴの甘い香りに脳を焼かれながら必死に思考を纏めようとする。


心臓の鼓動が重なりひとつになってしまったかのよいな、心地いい一体感がさらに思考に霞を掛ける。


「国は滅び君は死んだ、じゃあ新しいキミを創りなよ」


「どんなキミに成りたい?」


「優しいキミ?」


「冷たいキミ?」


「強いキミ?」


「弱いキミ?」


「誠実なキミ?」


「嘘つきなキミ?」


「貞淑なキミ?」


「淫乱なキミ?」


「もちろん全部でも構わないよ?」


「全部叶えてあげるから」


「それに、求めるだけ求めて裏切ったって構わない。それも受け入れよう」


魔王の顎のラインをツツッと指が這う。


「もちろん、君はこの誘いを蹴ってもいい」


言って、魔王からスッと離れるラヴ。


「あ……」


一瞬、求めるように魔王の手が宙をさ迷う。


その様に、闇の中のラヴはまた、微笑む。


「どんな選択をするのも君の自由だ」


「自由……」


「そう、自由だ。そして君がどんなキミを選んでも、僕はキミを受け入れるよ」


「愛するよ」


「……貴様の仲間達の次にか?」


「そうとも」


一拍の間も無く答えるラヴ。


その様子にまた、魔王は薄く笑う。


「ならば我は選ぼう。少々恥ずかしいが心赴くままに生きよう」


「恥ずかしい? 最高じゃないか! 良質な人生は恥の数で決まるのさ!!」



「フ……ならば目指そう。幼き時より憧れた、物語のような強く悪しき覇者たる魔王を!! 心赴くままに奪い、壊し、暴虐の限り尽くす魔王にな!!」


「その為には何が要る?」


「力だ!」


「それを僕に求めてくれるかい? ……愛しい友よ」


「求めよう、新しき我が友よ!」


「じゃあ誓いのハグだ!!」


「そ、それは拒否すんきゃぁ!!」



ムギュウとラヴに抱き締められた魔王は、憑き物が落ちたような顔で、闇色の救いに取り憑かれ、優しい地獄に堕ちていった。



ドスリ。

はい、というわけで、悪堕ちルートでした。


いやぁ難しかった。


また手直しするかも。


ちなみに、本当に魔王ちゃんが仲間をそういう風にしか見てなかったのか……それはまたいずれ。


あと、また伏線ひとつ入れましたよ。どこでしょう。


答えはまたかなり後で。


感想、ご意見お待ちしております。


……ちなみに、悪堕ちルートではなければ、魔力装置ルートになってました。


命拾いしたね!!

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