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雑談に愛をこめて

ここは『ラヴァーズ』の拠点である超巨大要塞『モンストロ』。


『モンストロ』を一行で説明すると、基本「でかい、長い、四角い、黒い」である。


上の部分には戦艦に積んであるような大砲がいくつもあり、機銃がハリネズミのように大量に配備されている。だが後ろの方には巨大な塔が立っている。そこには大きく「赤黒のハートが牙をむいて愛しい人の頭を丸かじりにしている」という、『ラヴァーズ』のシンボルマークが描かれている。


その塔の、一室。モダン調の部屋で4人は非常にゆったりとくつろいでいた。


ルリは銃の情報サーチ、Drフロストは新しい機械系モンスターの設計に忙しく、黒蟻は天井からぶら下がって寝ている。


ラヴが紅茶を飲みながら(MMORPGで食事をする。これを彼が初めて体験してからもう二年も経つが、何度経験しても不思議に感じているようだ)、ふと思い出したかのように口を開いた。


「サイキッカーってジョブ知ってます?」


「知っていル」「いや知らねーよ」「なんやそれ?」


「かなりマイナーなジョブですよ。なんでも人間種族専用で魔法が一切使えない、鎧が装備できないなどの制限がある代わりに超能力っぽいことができるそうです」


「ぽいことってなんや?」


「ようはテレポートとか手を触れずに物を動かすとかテレパシーとかですよ」


「しかしかなり使い勝手が悪い不人気職業だそうダ。テレパシーはメニューの<コール>を使えばいイ、テレポートはほとんど飛べない上に『石の中にいる』事故はザラ、観念動力に至っては物理をあげて殴った方がはやいと言われているほどダ。しかも鎧が装備できないからダメージがそのまま痛みになってすぐ気絶すル。……それデ、それがどうしタ?」


「いえね、今から我々が襲撃を仕掛けるギルド『ホワイトナイツ』のリーダー、『THE委員長』のサチさんがそのジョブを極めているそうです」



法治ギルド『ホワイトナイツ』


それは主に初心者支援を行い、PK狩りやフィールドの治安維持(つまりは盗賊行為やトレインPK、横取りなどの防止)なども行う、とにかく正義を行うギルドである。ただし個人的なケンカには口出ししない、一種の自警団である。


早い話がPKギルド『ラヴァーズ』の対極の存在である。




「それが?いいカモだってか?」


「いや、たしかテレポートで2キロの距離を詰め、テレパシーで相手を混乱させ、観念動力に至ってはそれだけで城ひとつ落としたんだとか」


「はぁ!?カスなジョブじゃなかったのかよ!!」


「彼女のレベルが900を超えたころから急激に上がってきたんだってさ」


「あぁ、なるほど、隠し設定やな」


隠し設定。それはホール・テクノロジーと対をなすシステム。

すげぇ弱かったり、育てにくいジョブや種族は、あとあととてもおいしい思いができる(かも)というシステムである。


が、その道はあまりに険しく、そもそも本当にいい思いができるのか、特殊条件があるのではないか等、とにかく謎だらけなので挑戦する人が少なく、挫折する人も多い。


「それがガセの可能性ハ?」


「その落とされた城ってのが僕の知り合いがリーダーやってる盗賊ギルド『ろびん・ふっど』なんだよ」



「でも大丈夫だろ。そいつが『旅立ちの城』を出たのをわざわざ確認してからこうして攻め込んでんだろ?しかも俺たちの切り札、最終決戦兵器『モンストロ』まで出してよ」


「まぁそうなんですがね。やれやれ、これはまだ出さない予定だったのになぁ……これで一PKギルドの看板は返上かぁ、これからは超PKギルドとしていろいろなしがらみに捕らわれるのかなぁ……」


「捕らぬタヌキのなんとやら、やで?先ず勝たなあかんやろ。ていうか負けたら俺ら『なんかすごかったけどすぐ負けた残念な奴ら』としてネットで笑われんねんで?嫌やで?『PKギルドざまぁwww』とか言われんの」


「たしかニ。先ず勝たねばナ……ところで一PKギルドというのは冗談カ?」


『ワールド・オブ・ロード』のギルド戦は至ってシンプルだ。


勝利条件は『ギルドシンボル』を奪うこと。


これによってそれまで加算されていたギルドポイントが相手ギルドに全て移動する。


そうすると、ギルドランクが一気にEランクまで下がり拠点を失うことになる。


大抵コレはギルドリーダーが持っているため倒して奪うしかない(ちなみにこれもクリエイト対象でタイプも武器だったり指環だったりと多種多様である)。


が、ある一定以上ギルドポイントが貯まり、Bランク以上になると拠点がもらえるので、ここに保管するギルドが多い。


ちなみにランクが上がるごとに大きな拠点がもらえ、Sランクにもなると超巨大なダンジョンか街がまるまるもらえる。


そのうえ、そのダンジョンすらコーディネート対象なので外観やトラップの配置、配置するモンスターまで決めれる。


階層ごとの門番(いわゆる中ボス)に至っては外観とキャラ設定、どんなセリフを言うかまで決めれる、まさにマニア殺しな使用になっている。


街は外観は変えられないが、その代り施設が充実している。


その上その施設のあげた利益の10%がギルドの資金になるのだ。


もちろんその道は果てしなく遠く、険しいが。



ちなみに『ラヴァーズ』の集めたポイントはほとんど大量のPKとギルド潰しで、残りは特殊イベントの一番最初にクリアした者へのボーナスである。


それだけでSランクに到達し、この超巨大要塞(全長400キロ全高140キロ幅200キロ)『モンストロ』を手に入れたのだ。それも、たった四人でだ。



もひとつちなみに『ホワイトナイツ』もSランクギルドだ。


が、彼らの拠点は飛んでいる(・・・・・)。天空都市『旅立ちの城』という、特殊拠点だ。


商人や医療施設が初めから有り、初心者支援にもってこいの場所だ。


もちろん防衛設備も半端じゃない。有り得ない数のビーム機銃が空からくる敵を寄せ付けず、唯一の出入り口はテレポート・ゲートのみ。または団員の持つ指輪の特殊スキルだけが、この空に浮く荘厳なる都市に行けるのだ。



「それにしても長い闘いだったね」


「五回も殺り合ったギルドって初めてじゃねぇか?」


「大抵はケンカ売る(売られる)、四人で拠点襲撃、ハイ終わり、やからな」


「だいたい襲撃かけられて最終防衛ラインまで追い詰められたこと自体初めてのことだったナ」


「それをいうなら僕たちの襲撃が失敗したこと自体初めてだったよ」


ちなみに『ホワイトナイツ』との戦績は


一回戦

遭遇戦

PKをしていたところを『ホワイトナイツ』に見つかり戦闘。即勝利。


二回戦前半

襲撃戦

天空都市『旅立ちの城』に戦闘機で突撃。が半端ない弾幕にあえなく撃墜される。敗北。


二回戦後半

襲撃戦

唯一の出入口のゲートポートを襲撃。見張りを皆殺しにする。が、向こうからゲートが閉じられていた。どうやら監視装置があったらしい。 敗北。


三回戦

防衛戦

『ホワイトナイツ』本隊が襲撃をかけてくる。その数348人。見た顔(つまり潰した顔)がちらほらあるので、どうやら同盟を組んできたらしい。リーダー、サチの姿は見られず。最終防衛ラインまで102人が到達。しかし、ここでアレを用い四人でこれを迎撃。アッサリと勝利。


四回戦

決戦

『ホワイトナイツ』の本拠地、天空都市『旅立ちの城』が『ラヴァーズ』本拠地『モンストロ』の真上にくる。


……ラピュタビームを撃ち込まれた。四発も。


が、『モンストロ』はホール・テクノロジーを用い、破壊不能オブジェと化しているので全くの無傷。お返しにこちらからミサイルとレーザー、機銃、大砲、無人戦闘機(モンスター)をぶちこむ。


しかし、やはりというかなんというか、ミサイル、戦闘機、弾丸はその弾幕に屈した。レーザーは届いた模様。しかし与えたダメージは微々たるものだった。


その後、天空都市は引き返していったが、両者共に有効打が無かったので引き分け。



そして今から始まる第五回戦。

超巨大要塞『モンストロ』は今飛んでいる(・・・・・)


だがこの要塞は飛べるはすがないのだ。飛べる拠点はランクが上がって手に入る、もとから飛んでいる物ばかりだ。


まぁ隠すことでもないし、隠せるとも思わないので種明かしすると、やっぱりこれもホール・テクノロジーの賜物だ。


今や陸の要塞から空の移動要塞と化した『怪物(モンストロ)』は、天空都市を飲み込まんと前進を続けていた。


一応ホール・テクノロジーはちゃんと説明できるようになっています。

といっても大したネタではないのですが(汗

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